在宅ビジネスや起業を考えたとき、ネットショップの開業を検討する人も多いでしょう。Shopify(ショッピファイ)などのネットショップ作成サービスを利用すれば、専門知識のない初心者でも自分のショップを簡単に立ち上げることができます。
この記事では、ネットショップを開業するまでの手順や費用、注意点などを解説します。
ネットショップ開業までの8ステップ

1. 事業計画をたてる
販売する商品やコンセプトなどの事業計画をたてます。どのような顧客に向けて、どのような商品でどのような価値を提供し、どのような印象を与えたいのかを整理することから始めましょう。
販売する商品を決める際は、自分で商品を作るのか、あるいは商品を仕入れるのかを考える必要があります。自分で作る場合は、ハンドメイド商品のほかに、POD(プリントオンデマンド)やホワイトラベル製品、オンライン講座などのデジタルコンテンツの販売も可能です。
オンライン上には商品やサービスが数多く存在しているため、何を販売するにしてもコンセプトがしっかりと定まっていないとブランディングがしにくくなり、競合他社との差別化もできません。ビジネスプランを作り、コンセプトや目標、扱う商品の価格帯やターゲット層などの詳細を決めましょう。
さらに、事業計画を基にデザインなどを言語化してブランドアイデンティティも定めておくと、ネットショップの方向性がぶれづらくなります。
ショップ名もドメインの選定やリピーターの獲得、SNSでの認知度などに影響を及ぼすため、事業計画で決めたコンセプトやターゲットに合った名称を考えましょう。
2. 商品の仕入れ先を見つける
仕入れ価格や品質はネットショップの利益に直結するため、サプライヤーは慎重に選ぶ必要があります。ネットショップの主な仕入れ方法には、卸売業者から仕入れる方法のほか、製造元と直接契約を結ぶ方法、ドロップシッピングサービスを使用する方法などがあります。
近年では、NETSEA(ネッシー)、スーパーデリバリー、卸の達人など初心者でも扱いやすい仕入れ専用のプラットフォームも増えています。いずれのプラットフォームも取り扱っているジャンルが異なるため、販売する商品に応じて使い分けるとよいでしょう。
3. 必要な届出や許可を調べる
ネットショップを正式な事業として運営するには、法的な手続きや許可取得が必要です。まず個人事業主として開業する場合は、税務署に開業届を提出します。必要に応じて、節税効果が大きくなる青色申告承認申請書の提出も検討しましょう。一方、株式会社などの法人の場合は、法務局での登記が求められます。
また、取り扱う商品ジャンルによっては、販売前に所定の許認可が必要です。以下に、代表的な商品ごとの届出や許可をまとめました。
申請は、所轄の保健所や警察署など所定の行政機関を通じて行います。商品の仕入れ先を決めたあとは商品の取り扱いに必要な法的手続きを調べて、販売を始める前に取得する準備を整えておくことが大切です。
4. プラットフォームを決める
ネットショップを出店する販売プラットフォームを選定します。プラットフォームは大きく自社ECサイトとECモールにわかれます。
Amazon(アマゾン)や楽天市場といったECモールは集客しやすいのが利点ですが、他店との差別化やブランディングがしにくいといった課題があります。自社ECサイトは自由度が高くオリジナリティのあるネットショップを開業できるのが魅力ですが、集客を自分で行う必要があります。
自社ECサイトを立ち上げる場合は、Shopifyのようなプラットフォームを使うのがおすすめです。多くのサービスは専門知識がなくても直感的に使えるようになっており、商品ページや多彩な決済方法、在庫管理や受注管理といったネットショップに欠かせない機能を簡単に利用できます。
サービスを選ぶ際は、以下のような点に着目するとよいでしょう。
- 操作のしやすさ
- 業種ごとに用意されたテーマの充実度
- コンテンツ制作を補助するAI機能の有無
- 事業拡大に対応できる柔軟性
- 無料体験の可否
上記に加えて、ストア分析やマーケティングなどの機能も含まれているプラットフォームを選ぶと、集客もしやすくなります。
5. ウェブサイトを作成する
基本設定・商品ページ・その他のページのポイントを押さえたウェブサイトを作成することで、売れるECサイトになります。
ネットショップの基本情報を設定する
ネットショップ作成サービスの案内に従い、必要な情報を入力・設定します。まずは以下の項目から始めます。
- 独自ドメインの設定:店舗名と一致するドメインを取得して、プラットフォームの設定画面で登録します。
- デザインテンプレートの選択:あらかじめ用意されたテンプレートの中から、ショップのイメージに適したレイアウトを選びます。
- ナビゲーションの設計:訪問者が必要な情報にすぐたどり着けるよう、主要ページへのリンクをメニューにまとめます。ページ数が多い場合は、サイドバーやフッターに補足のリンクを配置したり、検索機能を加えたりすると見やすくなります。
- ロゴの配置:ロゴはサイト全体に配置し、ブラウザのタブなどに表示される「ファビコン」と呼ばれる小さなアイコンも設定します。
- デザインの調整:ブランドアイデンティティに沿った配色を選び、ボタンなどの操作部分が目立つようにコントラストにも気を配ります。使用する書体は2~3種類までに抑えると、見やすくなります。
商品ページを作成する
ネットショップ作成サービスの商品ページの作成機能を使って、販売するアイテムに関する情報や画像、各種データを登録します。
- 商品名は訪問者や検索エンジンにとってわかりやすく、内容が一目で伝わるように設定します。
- 商品説明は、商品がどのように役立つかを具体的に伝えつつ、SEOも意識した内容にするとよいでしょう。
- 商品画像は、商品の細部や使用イメージなどが伝わるものを複数用意します。見栄えの良さや統一感も意識しながら、高解像度のものを用意して画像最適化も行いましょう。
- 商品価格は、仕入れコストや市場の相場などを踏まえて決定し、必要に応じて調整します。
- そのほかに、商品の色やサイズなどのバリエーション、使用されている素材など訪問者が知りたい情報が明確に伝わるようにしましょう。
そのほかのページも作成する
ネットショップの信頼性を高めるためのページも整えておく必要があります。ネットショップを公開する前に、以下のページを準備しましょう。
- トップページ:初めて訪れた方が、どんな商品を扱っているのかを一目で理解できるように構成されたページ
- Aboutページ:運営者の想いやブランドストーリーを伝えるページ
- お問い合わせページ:訪問者がショップの運営者に連絡できるように、メールアドレスを記載したり、問い合わせフォームやチャット機能を設置したりするページ
- ポリシーページ:個人情報の取り扱いや配送ポリシー、返品ポリシーに関するページ
- FAQページ:多くの顧客からの問い合わせのある内容をまとめたページ
- 特定商取引法に基づく表記:特定商取引法で記載が義務づけられている情報をまとめたページ
6. 決済や配送の方法を決める
決済手段と配送方法の設定も欠かせません。顧客が希望する支払い方法が用意されていなければ、カゴ落ちしてしまう可能性があります。クレジットカードや電子マネー、分割払いなど、ニーズに応じた多様な決済手段を導入することが重要です。
決済サービスを選ぶ際は使用できる決済方法のほかに、複数通貨への対応可否や取引手数料、セキュリティ機能などについても確認する必要があります。
配送方法は、ビジネスモデルに応じて定めます。商品のサイズや重量、梱包資材、配送エリアなどを踏まえて、送料の一律設定や無料配送の条件を決定します。
7. ネットショップを公開して改善する
ネットショップを一般公開するには、これまで非公開設定になっていた状態を解除して、閲覧できるように切り替える必要があります。
すべての準備が完璧に整っていなくても、まずは公開に踏み切ることが大切です。本格的なオープンでなくても、試験的に公開することで実際の訪問者から改善に役立つ反応が得られます。
公開後は訪問者の動向や購入行動をもとに、デザインの細部を調整したり、表示内容を見直したりする作業を進めます。集客や販促の方法も、実際のデータを反映しながら改善していきましょう。
とくに重要なのが、アクセス解析を活用した改善です。検索エンジン、SNS、広告など、流入元を把握することで訴求内容やマーケティング戦略に反映できます。訪問者によく見られているページや滞在時間が長いコンテンツを分析したり、売れ筋商品とそうでない商品を見比べたりする手法も、ネットショップの改善に役立ちます。
8. ネットショップを宣伝する
ネットショップを公開したあとは、集客するために宣伝に注力します。自分たちのブランドの個性や顧客の関心に合わせた手法を選ぶようにしましょう。以下は宣伝・集客に有効な方法の一例です。
- SNSマーケティング:ターゲット層が最も多く集まるプラットフォームで、視聴者にとって有益なコンテンツや印象に残るコンテンツを提供します。
- SEO対策:ラッコキーワードなどの調査ツールを使って検索キーワードを調べ、検索エンジンで上位表示されるように対策してオーガニックトラフィックを増やします。
- メールマーケティング:店舗を訪れた人や購入者に向けてウェルカムメッセージやカゴ落ちメール、購入後のフォローアップなど、段階に応じたメール配信を行うことで、リピーターの獲得につながります。
- Googleショッピング:Google Merchant Center(グーグルマーチャントセンター)やGoogle広告を活用することで、商品情報をGoogle上に掲載して、YouTube(ユーチューブ)など幅広いサービスを通じて購入を検討しているユーザーにリーチできます。Shopifyなどの外部サービスを使用している場合は、アカウントを連携することで、商品データの自動同期も可能です。データはあとから編集できるため、運用中の調整もスムーズに行えます。
ネットショップを開業するのに必要な費用は?

- ネットショップ作成サービスの初期費用:0〜100万円
- パソコン:3〜20万円
- ネット回線:3,000円〜
- プリンター:1万円〜
- カメラ:3〜10万円
- ドメイン取得:1円~1万円
- レンタルサーバー:10円~1万円
- 照明機材:2,000円〜
- 梱包資材:20~60円(1商品あたり)
- 営業許可申請:1~3万円
- 広告費:0~数万円
ネットショップを開業する際の注意点

販売禁止商品を扱わない
ネットショップを運営するにあたっては、取り扱う商品の内容に十分な注意が必要です。法律で規制されている医薬品や違法薬物、模倣品や無許可の著作物などは販売が禁止されています。また、成人向け商品などもサービスの利用規約によって出品が制限される場合があります。
取り扱いたい商品がある場合は、販売に資格や許認可が必要かどうかも含めて、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
特定商取引法に基づく表記をする
ネットショップを運営する際は、特定商取引法で義務づけられた情報を明記する必要があります。特定商取引法とは、購入者との間で誤解やトラブルが起きないようにするために規定されたルールです。記載すべき項目には、事業者の氏名や所在地、電話番号、支払い方法、返品条件などが含まれます。記載を怠ると、行政からの指導や罰則が科される可能性があるため、必ず確認して対応しましょう。
なお、個人で開業する場合で住所や電話番号の公開に不安がある場合は、購入希望者からの要請があった際に速やかに提供する体制を整え、その旨を記載していれば、記載を省略することも可能です。
顧客からのクレームに対応する
ネットショップでは、以下のようなクレームが寄せられる場合があります。
- 初期不良といった商品の品質に関するクレーム
- 配送の遅延や誤発送といった物流上のトラブル
- 電話やメールでのカスタマーサービスに対する不満
- キャンペーン内容やポイントの適用条件に対する誤解によって生じたクレーム
- ネットショップに掲載している画像と実物の色味やサイズが異なるなどのクレーム
こうした状況に対応するには、まずは誠実な姿勢を持って謝罪して、顧客の声に耳を傾けることが重要です。そのうえで、慎重に事実確認を行って伝えるべき情報を正確に説明します。
その際、対応履歴を残しておくことで再発防止にもつながるでしょう。一方、不当な要求に対しては毅然とした対応を心がけることも大切です。
セキュリティ対策を怠らない
ネットショップを安全に運営するためには、万全なセキュリティ対策が不可欠です。ECサイトは顧客の個人情報やクレジットカード情報を扱う性質上、サイバー攻撃の標的になりやすい傾向にあります。情報漏洩や不正アクセスが発生すると、信頼を損なうだけでなく、顧客離れや賠償金の発生、サイト閉鎖のリスクにもつながります。
まとめ
ネットショップの開業には、事業計画の策定から公開後の運営や集客までさまざまな作業が必要になります。取り扱う商品や販売方法に応じて、届出や許可の取得も欠かせません。また、顧客が安心して購入できるネットショップにするためには、各種ポリシーの作成やクレーム対応、セキュリティ対策にも十分な配慮が求められます。
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よくある質問
ネットショップ開業で失敗しないためのコツは?
- 補助金などを活用して初期費用を減らす
- 顧客目線でネットショップを設計する
- 安心して購入できる環境を整える
- 売り上げと支出を正確に把握する
- 品切れを防ぐ管理体制を整える
- 集客に力を入れる
ネットショップ開業時に活用できる補助金は?
- 小規模事業者持続化補助金
- 事業再構築補助金
- ものづくり補助金
- ECサイト活用補助金などの自治体独自の補助金
ネットショップを開業する際に必要なものは?
- パソコン
- スマートフォン
- インターネット回線
- プリンター
- カメラ
- 照明機器
- 梱包資材
- 売上金の振込口座
- 開業・運用資金
文:Yukihiro Kawata