顧客からのクレームは、ネットショップへの信頼を損ねることもあれば、逆に顧客との関係をより良く築くチャンスになることもあります。クレームは、顧客の率直な意見を聞ける貴重な機会です。クレームの中には企業の改善点が潜んでおり、うまく解決できれば顧客に好印象を残し、ブランドのファンになってもらえることさえあります。
また、クレームが発生した原因を根本から解消することにより、似たクレームの再発を未然に防ぐこともできます。なにかと敬遠されがちなクレーム対応ですが、実は、価値あるフィードバックループ(フィードバックと改善をくり返すこと)のひとつなのです。
とはいえ、クレームの数自体を減らす努力も大切です。クレーム対応ばかりに労力や時間をとられていては、ビジネスを成長させる他の大事な業務に集中することができません。
この記事では、クレームを未然に防ぐ方法と万が一発生したときのクレーム対応の最善策をご紹介します。
なぜクレーム対応が重要なのか

クレーム対応が重要である理由として、顧客の不満にうまく対処することで売り上げにつながる可能性があることが挙げられます。
カスタマーサービスとは、常に正しいことをするのではなく、常に正しいことをしようとする努力と誠意を示すことです。
クレームを起こしたミスや問題をうまく解消することで顧客満足度が高まり、顧客のロイヤリティも向上できるというデータもあります。
米国で行われた苦情処理調査から、クレームの対応と顧客の再購入率には相関関係があるという「グッドマンの法則」が導き出されています。この調査では「苦情を感じていたが申し立てなかった消費者」のリピート購入率は9%、「苦情を申し立てて迅速に解決された消費者」のリピート購入率は82%という結果が出ており、クレームを迅速に解決できればその顧客はブランドのファンや上顧客になる可能性が示されています。

顧客からのポジティブなレビューや口コミ、高評価を受けて売り上げにつなげるには、不満を持つ顧客に対して優れたクレーム対応を行い、それにより顧客満足度を高めることが重要なのです。
よくあるクレームとその対処法

EC事業において多く発生するクレームの原因として、以下の4つが挙げられます。
裏を返すと、こういったクレームは先回りして発生を未然に防げるということです。以下に、それぞれのクレームの芽を摘み取る方法と、万が一クレームが発生した場合の対処法を案内します。
1. 配送関連のトラブル
よくあるトラブルの一つは、「注文は確定しているのか?」「配送状況はどうなっているのか?」といった問い合わせがクレームに発展するケースです。こういった配送関連のトラブルを減らすには、注文状況や配送状況を「見える化」することが大切です。
注文した商品の配送状況が分からないと顧客は不満や不安を感じます。それがクリスマス等のホリデーシーズンや誕生日プレゼントの注文などであればなおさらです。こうした類のクレームを防ぐ方法を以下に紹介します。
🔍対策
購入した商品を追跡できるように追跡番号を送ると、荷物の発送後に顧客自身で配送状況を確認できます。
発送予定日や配送にかかる日数、時間帯の目安を提示することも大切です。この情報はチェックアウトの段階で配送ポリシーや標準的な配送リードタイムを明記することで顧客に伝えることができます。
また、配送状況の詳細情報を顧客に提供するため、ECサイトに注文状況ぺージを導入することも検討しましょう。
配達遅延が見込まれる場合に、ウェブサイトやメールでお知らせする等、タイムリーに情報を提供できる仕組みも用意しておきましょう。また、配送中の紛失や破損といった不測の事態に備えて、緊急時の対応策もあらかじめ用意しておく必要があります。
🎯それでもトラブルが発生した場合
配達遅延や紛失等が発生した場合は、すぐに対応方法(返金もしくは再送)を提案します。顧客が再送を希望した場合は、速達など一番速い配達手段を利用しましょう。
また、このような状況下では顧客の気持ちにしっかりと寄り添うことが大切です。下記を意識して対応にあたりましょう。
- 顧客の怒りを受け止め、お詫びする。
(例)「お怒りなのはごもっともです。ご不便をおかけし大変申し訳ありません。」 - 顧客に感謝の気持ちを示す。
(例)「ご利用いただき感謝申し上げます。解決に向けて全力を尽くします。」
2. 商品の欠品
在庫切れなどの問題もクレームにつながります。顧客がブラックフライデーやサイバーマンデーなどで商品を購入しようとしたものの、クレジットカード情報の入力中に商品が売り切れてしまうなどの状況は、クレームになるだけでなく機会ロスにもなってしまいます。
こうした状況に陥らないためにも商品の需要を予測し、万が一在庫切れが起きた場合の対処法も備えておくことが大切です。
🔍対策
まずは利用している在庫管理システムがしっかりと機能しているかを確認しましょう。効果的に在庫管理を行い、適切な在庫量を維持することが、クレーム回避の第一歩です。
在庫管理がうまく機能していることが確認できたら、各年の売り上げの傾向を整理して需要予測をしましょう。年単位で販売量の変動を追跡・記録することが大切です。この情報はShopifyの売上レポートからも抽出できます。
データを収集したら、次のような点に注目します。
- 売り上げが最も高い月はいつか?
- 売り上げが過去最低だった月はいつか?
- 繁忙期・閑散期等はいつか?
- 繁忙期は祝日やイベント(母の日、バレンタインデー、クリスマス等)と関連しているか?
- 繁忙期は実施したプロモーションによるものだったか?
- 新製品のリリースは顧客の購買意欲を刺激したか?
これらの質問からショップの繁忙期を把握しておくことで、在庫を多めに用意して商品欠品のクレームを減らすことができます。
次に、商品ごとの売れ行きに注目します。どの商品がどれくらいの速さで売れたのか、ベストセラー商品は何かを検証し、安定した人気のある定番品や流行りの商品などは、品切れにならないよう在庫を補充しておきましょう。また、積極的にマーケティングを行う商品や新製品などは、売り出し時に通常よりも多めに仕入れておくとよいでしょう。
売り上げの傾向に応じた在庫調整を行っていても、時には欠品が避けられないこともあります。ウェブサイトにFAQページを追加し、商品が在庫切れとなった場合の対処法をあらかじめ明記しておきましょう。
在庫切れの商品を補充したときに、顧客に再入荷通知を送ることも有効な手段です。Shopify App Storeの「Back in Stock」には再入荷の自動通知機能があり、顧客にEメールやSNSで通知を送り、購入を促すことができます。
〈具体例〉
小柄女性のためのアパレルブランドショップCOHINA(コヒナ)では、完売した商品の横に、顧客が再入荷通知をLINEで受け取ることができるボタンを用意しています。さらに再入荷した商品が顧客に届くまでの日数も明記されています。
また、顧客が気軽にチャットで質問できるライブサポートも用意することで、在庫に関する疑問や不安を取り除き、クレームを未然に防いでいます。

必要な在庫量を決める際、特に注目度の高い商品については、受注販売や予約販売で必要な在庫量を把握・調整する方法もあります。
世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の国際大会では、優勝したチャイニーズ・タイペイ代表チームの記念Tシャツが即完売したため、期間限定で受注生産による再販を行いました。
このように、顧客の不便さや落胆を減らすことでクレームを防ぎ顧客満足度を上げることができます。
🎯それでもトラブルが発生した場合
在庫切れの場合、顧客が一番に懸念することはその商品が再入荷しないのではないかということです。在庫切れで苦情を受けた場合は、その商品が再入荷されるのか、されるとしたらいつ、どのように再入荷されるのかなどできるだけ詳しい情報を伝えましょう。
入荷に時間がかかりそうだったり、再入荷しないことが確定したりしている場合はその旨を連絡するとともに、類似品を代替案としてお勧めしましょう。
3. 商品の写真や説明が不正確
届いた商品の色がサイト上の写真と違うなど、顧客がイメージした商品と実物のギャップが大きいとクレームにつながります。こうしたイメージのギャップを埋めるためには、商品の写真や説明が実物と一致していることが極めて重要です。
🔍対策
顧客は分かりやすく正確な商品説明を求めています。すべての取扱商品について、説明は商品の特徴を的確に表現できているか、寸法・重さ・素材・手触りなどの詳細が正しく明記されているかチェックします。情報不足と感じる説明や誤解を招く表現などは、迅速に改善・修正しましょう。
オンラインショッピングでは、商品写真が鮮明であることも重要です。実際の色が分かるように、物撮りのコツを知り、ライティングにも配慮した品質の高い商品写真を載せましょう。
商品写真と実物の差を少なくするには、画像編集ソフトを使って色合いを調節する方法もあります。
〈具体例〉
スニーカーのグローバルブランドニューバランスは、顧客のために商品ページで詳しい情報を提供しています。「商品説明」では商品のデザインコンセプトや背景などを伝え、「商品詳細」には商品の特徴や素材を記載しています。
商品写真はさまざまな角度や環境下で撮影されたもので、顧客に色味を正確に伝える工夫をしています。

また、動画によるスタイリング紹介で商品の詳細な使用感やサイズ感、素材の質感もチェックできるようになっています。動いたときのシルエットなど360°のスタイリングをチェックできるので、オンラインストアでありながら商品を実物のように感じることができます。
リソースに余裕があれば、ライブチャットのカスタマーサポートを追加して、購入を躊躇している顧客の懸念事項(サイズ・フィット感、色、素材など)をその場で解消できる仕組みを導入しましょう。Shopify Inboxではチャット機能を活用して顧客の問い合わせに即座に対応することができます。
その他にも、SNS投稿をサイトに掲載できるアプリを利用してUGC(ユーザー発信のコンテンツ)を他の顧客に共有し、購入を検討している顧客が商品の使用イメージを膨らませやすくするのも効果的です。
🎯それでもトラブルが発生した場合
「商品がネット上のイメージと違う」といったクレームがあった場合、一秒でもはやく解決策を提示することが必要です。顧客が具体的に何を求めていたのかをすばやく把握し、顧客の手間のかからない返品・交換方法を提案してください。
クレーム対応のやり取りの中で、商品写真・説明を分かりやすくするためにはどうすればよいか、顧客からフィードバックをもらうことも忘れないでください。顧客の意見をいかに大切にしているかを示すことができるだけでなく、今後のサイト運営における改善点を知ることもできます。
4. ウェブサイトの使い勝手が悪い
顧客は、オンラインで簡単かつスムーズに買い物することを望んでいます。ショップを閲覧中に顧客が不便な思いをしないよう、ユーザーにとっての使い勝手を意識してサイトを構築しましょう。
🔍対策
ウェブサイトは、顧客が求めるものを見つけやすいレイアウト・設計でなければいけません。インターネットを使い慣れていない買い物客でも操作しやすいか、情報は見つけやすいか、ウェブアクセシビリティは確保できているかなどを確認しながら、サイトを点検してみましょう。
Shopifyのツールを活用してできる改善もいくつかあります。
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チェックアウトプロセスの簡素化
Shopifyのチェックアウト用アプリとShop Pay(ショップペイ)を使って、チェックアウトプロセスの顧客体験を高めましょう。Shop Payは、配送の日時指定などを行わない場合は2ステップだけで購入でき、他チェックアウト方法に比べ素早く決済ができます。 -
サイトスピードの高速化
コンテンツの表示が遅いとサイト訪問者が離れてしまう可能性が高くなります。Shopifyのウェブパフォーマンスのダッシュボードを活用してショップの読み込み速度をチェックしましょう。また、インターネットの速度が遅い顧客に対してもスムーズにサイトが表示できるよう、画像サイズの最適化などを行いましょう。 -
モバイル対応(レスポンシブデザイン対応)
モバイル端末から買い物をする顧客が増えているため、モバイル対応のサイトを持つことも重要です。Shopifyではすべてのテーマストアでモバイルフレンドリーバージョンが提供されています。積極的に活用してモバイルコマースのサイトを構築してください。
〈具体例〉
革製品を製造販売する「土屋鞄製造所」のサイトは、洗練された無駄のないデザインで統一され、各商品がすっきりと表示されています。
「永久サポート」と呼ばれるアフターサポートのページでは、修理や補色サービスなどについて多くの写真と丁寧な文章でだれにでも分かりやすく説明しています。多数の画像や動画が使用されていますが、読み込み速度も問題なく、スムーズに利用できます。
自宅でのお手入れ方法も手順ごとの写真と詳しい説明で構成されており、顧客に有益な情報を提供し顧客体験を高めようとする姿勢が見られます。

サイトの構築後は、友人やチームメンバーにユーザビリティの確認をお願いしましょう。すべてのリンクをクリックしてもらい、リンク切れや間違いがないか確かめるほか、サイト構成や情報の分かりやすさ、誤字脱字はないかを確認してもらい、フィードバックをもらいましょう。
もし、Shopifyで構築したウェブサイトの基本的な機能に問題があったり、リンクをクリックしてエラーメッセージが表示されたりする場合は、いつでもShopifyのヘルプセンターにご連絡ください。
🎯それでもトラブルが発生した場合
ウェブサイトに関する緊急のトラブルが起きたときに備えて、すぐに対応できる専任者を決めておきましょう。対応が早ければ早いほど、販売に結びつく可能性が高くなります。
ここで発生するトラブルから得られるフィードバックは、長期的なユーザビリティ向上にとって極めて重要です。1人の顧客が何かしらの問題を訴えた場合、他にも似たような問題を経験している顧客がいるということで、原因を突き止めて解決することでサイトの利便性を向上させることができます。
クレームを顧客体験の向上に役立てる方法

顧客からのクレームは避けられないものですが、建設的なアイデアや提案を得るための貴重な機会でもあります。トラブルが解決したら、顧客にフォローアップメールを送ってフィードバックをもらい、オンラインストアとカスタマーサポートの質を向上させましょう。
フィードバックを求めるメールでは、機械的にアンケートをお願いするのではなく、顧客個人の意見を求めると効果的です。可能であれば、顧客と直接やり取りした担当者がメールを送付するようにしましょう。
フィードバックが集まり始めたら、共通する特徴がないか観察してみましょう。こうした分析はオンラインストアの改善に直接つながるだけでなく、似たようなトラブルを未然に防ぐためのチェックリストとなります。
再発しそうなトラブルに対して早い段階で原因の追及を行い、根本的な解決策を導き出すことは、同類のクレームを未然に防ぐことにつながります。その結果、貴重な時間とエネルギーを節約するだけでなく、顧客体験全体を向上させることができます。
また、トラブルを未然に防ぐことでリソースを他のトラブル対応やマーケティングなどに使うことができ、売り上げにつながる施策を考える余裕が生まれます。
まとめ
ネットショップに多いクレームと対処法を紹介しました。クレームは未然に防ぐことが最善ですが、万が一発生しても迅速に、適切に対応することで顧客満足度を高めることができます。結果として顧客のリピート購入や売上増加につながる可能性が十分にありますので、誠意を込めて対応していきましょう。
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よくある質問
クレーム対応はなぜ重要?
優れたクレーム対応をすることで、売り上げにつながる可能性があるからです。「グッドマンの法則」では、クレームの適切な解決はリピート率に貢献することがデータで証明されています。
ネットショップでよくあるクレームのパターンは?
- 配送関連のトラブル
- 商品の欠品
- 商品の写真や説明が不正確
- ウェブサイトの使い勝手が悪い
ネットショップでお客様アンケートをとるメリットは?
顧客アンケートをとるメリットは、再発しそうなトラブルの原因を追及し根本的な解決策を導き出すことで、似たようなクレームを未然に防げる点です。
文:Harumi Miyabayashi イラスト:Eugenia Mello