ネットでセレクトショップを開業するには、ステップを踏んで計画的に準備することが大切です。ビジネスプランやブランド戦略など、最初は決めることが多いですが、コンセプトを一貫することで、ブレない運営が可能になります。
この記事では、セレクトショップを始める方法を9つのステップに分けて解説します。また、セレクトショップが成功する秘訣や事例も紹介しているので、ネットショップの開業に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
セレクトショップとは?
セレクトショップは、店のコンセプトに合う商品を複数のブランドから仕入れて販売する小売店です。取り扱う商品はアパレルや雑貨、本など幅広く、仕入れ先も国内国外を問いません。ブランドイメージやターゲットとなる顧客層を明確に設定できていれば、イメージに合う商品を選んで仕入れるだけなので、初心者の方でも始めやすいビジネスモデルです。
セレクトショップの開業方法には、ネットと実店舗の2つの方法があります。どちらを選ぶかは、ビジネス規模で決めると良いでしょう。リスクを抑えたい場合は、ネットショップのほうが家賃や人件費を削減できるのでおすすめです。
ネットでセレクトショップを開業するための手順:9つのステップ
1. ビジネスコンセプトとショップ名を決める
セレクトショップの世界観やイメージがブレないように、ビジネスコンセプトを明確にしてブランディングする必要があります。
- ブランドは何を象徴しているか
- ブランドが提供する価値はなにか
- どのようにブランドアイデンティティを表現するか(ロゴ・カラー・フォントなど)
- ブランドストーリーをどのように語り、どのようなブランドボイス(言葉やトーン)で顧客に伝えるか
また、ブランドコンセプトに合わせたショップ名を決めることもポイントになります。ショップ名、ロゴ、カラースキームなどがブランドイメージやストーリーと一貫していないと、世界観の統一性がなくなり、顧客獲得が難しくなります。ショップ名が決まらずに悩んでいる場合は、ShopifyのAIビジネス名ジェネレーターを使用すれば、ビジネスに合ったショップ名を無料で見つけることができます。
このように、ビジネスコンセプトがショップの独自性やターゲット市場を決める重要な軸になるので、しっかりと決めておきましょう。
2. ビジネスプランを決める
事業のアイデアが実現可能なものになるように、ビジネスプランで具体的な計画を立てます。ビジネスの方針や商品の特徴、収益化の方法や必要な予算、仕入れから販売までの物流の流れなどの計画を立てましょう。具体的な計画を立てることで、セレクトショップ運営の成功率が高まり、スムーズな経営も可能になります。
また、事業の問題点や課題を見つけて解決策を模索したりトラブルを未然に防いだりするのにもビジネスプランの作成は重要です。今後の経営の指針となるため、慎重に作成しましょう。
3. 商品を決める
セレクトショップのコンセプトやターゲット顧客に合う商品を決めましょう。
商品を選ぶ際のポイントをいくつか紹介します。
- ニーズが高まっている商品
- ほかにないニッチな商品
- 自身が好きな商品
- 自身が詳しい商品
- セレクトショップオリジナル商品
最近注目されている商品や分野、これから流行しそうな商品を先取りして仕入れておくと、自然と売れやすくなります。
また、競合他社の少ないニッチな商品を取り扱うのも差別化につながります。たとえば、地元の職人が手作りした食器や、知る人ぞ知るアーティストの作品などは、特別感や個性がありターゲット層の顧客に刺さりやすいでしょう。
セレクトショップは「自分の世界観を表現する場」でもあるので、自分が好きな商品や深い知識のあるジャンルの商品を取り扱うのも一つの方法です。知識や情熱がある分、顧客に商品の良さを伝えやすくなります。
セレクトショップのプライベートブランドを販売することも可能です。オリジナルTシャツやアクセサリー、ホワイトラベルで作った自社ブランド商品や、市場が求めている商品を開発し販売することは、ほかのセレクトショップとの差別化につながるためおすすめです。ただし、オリジナル商品だけに偏ると「ブランドショップ」になってしまうため、セレクトショップとして運営する場合は他社の商品もバランスよく取り扱いましょう。
4. 仕入れ先を決める
セレクトショップで取り扱う商品を仕入れる方法は、主に5つあります。
同じような商品でも、仕入れ先によって価格が大きく異なることがあります。少しでも安い価格で取り引きすることは、利益のために重要です。
また、取り扱う商品によって、仕入れ方法も変わります。たとえば、海外の雑貨を販売したい場合は、海外の卸売業者や現地買い付けが必要です。ドロップシッピングも有効な手段で、アリババのようなサービスを利用すれば、在庫を持たずに商品の販売から発送までを自動で完結できます。
セレクトショップのオリジナル商品を販売する場合は、プリントオンデマンドの活用もおすすめです。自身がデザインしたTシャツや雑貨などの注文が入った際に、自動的に製造・発送してくれるサービスなので、在庫リスクを抱えることなくオリジナル商品を展開できます。
5. 商品の価格を設定する
商品の価格設定は、ターゲット顧客層やキャッシュフロー、利益率、消費税、さまざまなコストや予算など、ビジネス全体に大きく関わります。
価格戦略を策定し、市場に合った適切な価格を設定しましょう。利益率を上げるためには販売価格を高くするのが一番ですが、ターゲット顧客が購入しにくい価格では、購買意欲を失わせてしまいます。そのため、市場と顧客層に合った価格設定にすることも重要です。
6. ネットショップを作成する
ビジネスプランや販売する商品、ブランド戦略などが決まったら、ネットショップを作成します。
ブランドイメージを正確に表すには、自由にアレンジできるECプラットフォームが良いでしょう。ネットショップを開業できるサービスは多く存在しますが、カスタマイズが難しいものや、用意されたテンプレートが少ないオンラインマーケットプレイスなどもあります。セレクトショップは店舗の世界観やコンセプト、センスが感じられないとターゲットを引きつけるのが難しいという側面があるため、カスタマイズ性の高いプラットフォームを使用するのがおすすめです。
Shopifyは、簡単にネットショップを開設できるeコマース構築プラットフォームで、240種類以上のテーマのなかから、ブランドイメージに合ったデザインを見つけられます。また、カスタマイズも可能なので、テンプレートにはない設定やページの追加も自由にでき、より自分らしいセレクトショップを開業できます。
7. 配送方法や決済方法を決める
セレクトショップ運営において、配送は顧客満足度に直結する大切な過程です。注文を受けてから発送するまで、スムーズで最適な注文フルフィルメントを提供できるようにしましょう。
顧客は1日でも早い商品の到着を望んでいるので、発送予定日をできるだけ早くできるよう3PL(サードパーティロジスティクス)を利用するのもおすすめです。
さらに、商品パッケージや同梱物も重要です。オリジナリティのある梱包やメッセージカードを同封することで、顧客に魅力的な開封体験を提供できます。これにより、Instagram(インスタグラム)などのSNSに口コミを投稿してくれる可能性が高まり、UGCとして潜在顧客の購買意欲を刺激する効果も期待できます。
また、決済方法も選択肢が多いほど顧客は利用しやすく、カゴ落ちのリスクを防げます。ただし、ECサイトによって導入できる決済方法が異なるため、契約前に確認しましょう。一般的には、クレジットカード決済やキャリア決済、PayPal、Shop Payなど、主流のオンライン決済を用意しておけば安心です。オンライン決済に不安を感じる顧客のために、代金引換や銀行振込などの決済方法も取り入れておくと、幅広い顧客層をカバーできます。
8. 集客する
ブランド認知度向上のために、これから紹介するマーケティングを利用して、顧客を集めましょう。
Instagramマーケティング
Instagramマーケティングでは、投稿で商品を宣伝したり、ブランド認知度を高めたりできます。商品と引き換えにブランドを宣伝してくれるInstagramインフルエンサーの活用も主流になっています。投稿など無料でできるマーケティングのほかに、Instagram広告やMeta認証バッジ、ショッピング機能(決済手数料が発生)など、有料機能を使ってマーケティングとソーシャルコマースを行うこともできます。
SEOマーケティング
SEOマーケティングを行うことで、Googleなどの検索エンジンの検索結果でセレクトショップを上位表示させることができます。商品を検索しているユーザーは購買意欲が高いため、上位表示できると効率的にアプローチすることが可能になります。上位表示を目指す方法は、自分でSEO対策する方法とGoogle広告に出稿する方法があります。
Meta広告
Meta広告(Facebook広告)は、Facebookのニュースフィードやリール、Instagramのストーリーズなどに表示される広告です。この広告の大きな強みは、Facebookに登録されているユーザーの年齢・性別・居住地・興味関心などの詳細なデータをもとに、広告を配信できることです。これにより、商品に興味を持つ可能性の高いユーザーに絞ってアプローチできるため、高い費用対効果が期待できます。また、リターゲティング機能を使えば、一度サイトを訪れたものの購入に至らなかったユーザーに対して再度広告を表示し、購買意欲を刺激することも可能です。
インフルエンサーマーケティング
ユーチューバー、インスタグラマー、ブロガーなどのインフルエンサーや、有名人に商品を紹介してもらうことで、彼らの何万人、何十万人というフォロワーに商品を効果的にアピールできます。
フォロワーは、そのインフルエンサーを信頼しているため、「この人が紹介するものなら良いものに違いない」という信頼感や説得力が自然と生まれます。これにより、商品の認知度だけでなくブランド全体の信頼性やイメージ向上にもつながるのが大きな特徴です。また、インフルエンサーを選ぶときはフォロワー数だけでなく、投稿やフォロワー層がブランドとの世界観と合っているかどうか確認すると失敗を防げるでしょう。
広報
プレスリリースを出すなどの広報活動を行うことで、SNSやメディアに取り上げられるチャンスが生まれます。これにより、多くの人にセレクトショップを知ってもらえ、興味を持った顧客の商品購入につなげることができます。費用がかからないPRサイトもあるので、コストを抑えながら幅広くブランドを宣伝できます。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングでは、SNSやブログ、メルマガなどを利用して、顧客に有益な情報を発信します。
たとえば、ブログでは、ユーザーが検索しそうな悩みや質問をテーマに記事を作成し、その解決方法としてセレクトショップの商品ページへ誘導する流れを作ります。SNSではチュートリアル動画などを投稿し、顧客の商品への理解を深めるなどします。このように、さまざまなコンテンツを利用してマーケティングすることで、自然にブランドの認知度を高め、信頼を獲得し、集客につなげられます。
9. 許認可の申請と開業届を提出する
ネットショップでセレクトショップを開業する際、販売する商品によっては許認可の申請が必要になります。ここでは、一例を紹介します。
- ビンテージ品の販売:中古品を販売する場合は「古物商許可」が必要
- 化粧品販売:仕入れた化粧品を販売する場合「化粧品製造販売業許可」、自分で製造・販売する場合「化粧品製造業許可」と「化粧品製造販売業許可」が必要
- 食品販売:食肉販売・魚介類販売・魚介類競り売りの場合「食品衛生法に基づく営業許可」が必要。ただし、食肉販売と魚介類販売は容器包装された状態で販売するなら届出のみで許可は不要
- 酒類の販売:ワインやウイスキーなどのアルコールを販売する場合「通信販売酒類小売業免許」が必要
また、セレクトショップの事業を始めたら、開業届の提出も必要です。開業届は事業を始めたことを税務署に報告するための書類なので、開業から1か月以内に最寄りの税務署に提出しましょう。
セレクトショップを成功させる3つのポイント
コンセプトを一貫する
ビジネスプランやブランド戦略から考えたセレクトショップのコンセプトがブレないように、一貫性を維持することが大切です。コンセプトと販売商品にブレが生じると、既存顧客が離れる可能性があります。また、商品ラインナップに一貫性がないと、新規顧客の獲得も難しくなるでしょう。コンセプトに沿った商品やブランディングを行うことで、コンセプトに共感するターゲット顧客にアプローチしてリピーターを獲得し、安定した経営ができるようになります。
差別化を意識する
セレクトショップは基本的に既存製品を仕入れて販売するため、少なからず競合するショップが出てきます。しかし、セレクトショップのオリジナル商品やコラボ商品を販売したり、入手困難な商品を仕入れられるように努力したりすることで、競合他社との差別化を図れるようになります。また、季節やトレンドに合わせて商品ラインナップを柔軟に変更していくことも、差別化のポイントです。
仕入れ価格を意識する
セレクトショップを運営するにあたり、利益率も重視しなければいけません。しかし、販売価格を高くするには限界があるため、仕入れ価格を安くすることが重要です。たとえば、大量購入する、直接仕入れる、オフシーズンに仕入れておく、などがあります。これらの方法を利用して、できるだけ仕入れ価格を抑えると、利益率を上げられるでしょう。
セレクトショップの成功例5選
ユナイテッドアローズ

ユナイテッドアローズは、日本国内外で展開するセレクトショップの業界最大手で、レディース・メンズ服や雑貨など多岐にわたる商品を取り扱っています。実店舗も46店舗あり、海外進出もしています。「高感度・高品質」をコンセプトに、ファッションが生活の中心と考えているターゲット顧客に絞っていることが成功の秘訣です。スポーツブランドのアディダス、高級シューズブランドのMANOLO BLAHNIK(マノロブラニク)、子ども向け雑貨のジェリーキャットなど、一貫したコンセプトの中でも多種多彩な商品を取り扱っていることが最大手に成長したカギといえます。
BEAMS(ビームス)

BEAMS(ビームス)は、アメリカンカジュアルを日本に広めたセレクトショップで、最初は6.5坪のお店からスタートしました。「アメカジ×メンズ」をコンセプトにスタートし、徐々にレディースやキッズの取り扱いも始めて現在は幅広い商品を展開しています。社長自身の「好き」を反映させたセレクトショップが、多くの顧客に支持され、時代や流行のトレンドに合わせて商品のラインナップを調整することで、セレクトショップ最大手の一つとして成長しました。
FOURGRACE(フォーグレース)
「FOURGRACE(フォーグレース)」は、食器やテーブルウェア、キッチン雑貨を取り扱うブランドで、上品で高級感のある人気商品を厳選して仕入れ、販売しています。有名なモデルとコラボして食器の特集をYouTubeで配信したり、FOURGRACEオリジナルカラーでコラボ商品を販売したりするなど、他社と差別化を図ることで、多くのファンを獲得し、ブランド認知度を高めています。
INDOORPLUS(インドールプラス)

INDOORPLUS(インドールプラス)は、家具、雑貨、ラグなどを幅広く取り扱うインテリア総合通販サイトです。日本では手に入りにくい海外テイストのデザインを多く取り揃えており、ホテルライクな空間を演出したい方や、人と被らないインテリアを求める方に人気があります。とくに、自分らしさを求めている顧客からのリピートが多いのが特徴です。
ZUTTO(ズット)

ZUTTO(ズット)は「ずっと愛着を持って使い続けたいもの」をコンセプトにしたセレクトショップです。ファッションや雑貨、インテリア・キッチン雑貨、ベビー・キッズグッズなど、幅広いアイテムを取り揃えています。見た目の良さだけでなく、商品開発の背景や素材、耐久性にもこだわり商品を厳選しています。さらに、在庫管理から梱包、発送まですべて自社で対応することで、品質維持に努めています。本当におすすめできる商品だけを販売することで、その魅力を実感した顧客がリピーターとなり、設立から20年以上も愛され続けています。
まとめ
オンラインでセレクトショップを開業するには、コンセプトの一貫性、他社との差別化、仕入れ戦略が成功のカギです。仕入れる商品は、ニッチなものや市場のニーズが高いもの、自信を持っておすすめできるものなどを選びましょう。在宅でひとりで始める場合は、在庫管理や配送の負担を減らせるドロップシッピングが手軽でしょう。まず副業としてネットでセレクトショップを立ち上げ、軌道にのってから本格的な在宅ビジネスへ成長させることで、リスクを抑えながら成功を目指せます。
よくある質問
オンラインブティックとは?
オンラインブティックとは、自社ブランドのファッションやアクセサリーなどを販売するネットショップです。とくに、高品質な商品やデザイナーズブランドを取り扱っていることが多く、コンセプトの世界観が強く表現される傾向にあります。多くの高級ブランドの公式サイトにはオンラインブティックと記載されています。
セレクトショップで利益を上げるには?
セレクトショップで利益を上げるには、市場のニーズやニッチな層にあった商品を選び、ターゲット顧客に最適なタイミングで届けることが重要です。取り扱う商品は、ファッションや生活雑貨など、多くの種類があります。また、ビジネスプランやブランド戦略をしっかり考え、コンセプトを貫くことも利益を上げるために大切です。
成功するオンラインセレクトショップの特徴とは?
成功するオンラインセレクトショップは、ターゲット顧客を深く理解し、優れた顧客サービスを提供するとともに、パーソナライズしたショッピング体験を提供するのが特徴です。また、あらゆる端末で利用できるレスポシブデザインを採用し、必要な情報が見つけやすいネットショップであることも重要です。
ネットでファッションのセレクトショップを始める方法は?
ネットでファッションのセレクトショップを始める方法は以下のとおりです。
- ビジネスプランを考える
- ブランド戦略とショップ名を決める
- 仕入れる商品を決める
- アパレルの仕入れ先を選ぶ
- 商品の価格を設定する
- ネットショップを構築する
- 配送方法・決済方法を決める
- 集客する
文:Momo Hidaka イラスト:Cornelia Li