起業する時に考えなければならないことの一つに、「どのビジネスモデルを採用するか」があります。事業にふさわしいモデルを選ぶには、ビジネスモデルの種類とそれぞれの利点と欠点を理解する必要があります。
そこでこの記事では、ビジネスモデルとは何か、その種類や事例などを解説します。
ビジネスモデルとは

ビジネスモデルとは、顧客に価値を提供しながら収益を得て事業を運営するための仕組みです。優れたビジネスモデルは、価格戦略やターゲット市場をしっかりと定め、また提供する商品やサービス、将来の経費を明確に示していることが特徴です。
持続可能で成長するビジネスを立ち上げるには、しっかりとしたビジネスモデルを構築することが重要です。また、ビジネスモデルは市場需要に合わせて柔軟に調整・変更することも大切です。特に資金調達や他社との提携を検討しているようであれば、自分のビジネスの信頼性を高めることにも役立ちます。
主なビジネスモデルの種類5つ

1. 企業対消費者間取引(B2C)
企業対消費者間取引(B2CまたはBtoC)ビジネスモデルは、企業と消費者の間で発生する取引のことを示します。例えば、スーパーマーケットでの買い物などはこれに当てはまります。B2Cは、eコマースや実店舗での取引、またその両方を組み合わせた取引も含みます。
2. 消費者直接取引(D2C)
D2C(DtoC)は「Direct to Consumer」の略で、メーカーが中間流通を介さずに消費者と直接取引することを指します。例えば、メーカーが自社のECサイトで消費者に販売するのはD2Cに該当します。D2Cは、コロナ禍をきっかけに広がり、現在も市場拡大しています。
B2CとD2Cの両方を展開している企業も数多くあります。例えば、亀田製菓株式会社はスーパーマーケットのような中間流通を介しての販売(B2C)と、Shopifyで立ち上げた自社ECサイトでの小売り販売(D2C)をしています。
3. 企業間取引(B2B)
企業間取引(B2BまたはBtoB)は、企業同士で行われる取引全般を示します。eコマースと実店舗での取引両方を含み、一般的に卸売業者はこのカテゴリーに該当します。
また、B2CとB2B、両方を展開する企業もあります。例えばコーヒー豆を取り扱うブランドであれば、顧客にオンラインでコーヒー豆を販売する(B2C)ことに加えて、カフェなどにより大きな単位でコーヒー豆を売ることもできます(B2B)。
4. 消費者間取引(C2C)
消費者間取引(C2CまたはCtoC)とは、消費者が商品やサービスを別の消費者に販売することを意味しています。例えば、自作のアクセサリーをmercari(メルカリ)で販売するのはC2Cに該当します。
ハンドメイド販売の多くは、minne(ミンネ)やEtsy(エッツィー)のようなマーケットプレイスから始まり、取引数の増加に伴ってオリジナルのネットショップを開設してブランドを構築し、D2CやB2Cへと発展していきます。
5.消費者対企業間取引(C2B)
消費者対企業間取引(C2BまたはCtoB)は、消費者が自身の商品やサービスを企業に販売するビジネスモデルで、クリエイターエコノミーの広がりにより活発になっています。インフルエンサーが企業と契約し商品を紹介する、フォトグラファーがオンラインで商用可能な写真を販売するといったことは、C2Bに該当します。
ビジネスモデルの例16選

1. eコマースモデル
eコマースモデルは、多くの人にとって最も開業しやすく、多様な商品の提供に対応できるビジネスモデルです。具体的には、楽天市場やAmazonなどのオンラインマーケットプレイスやSNS、ECサイト、また他の販売チャネルとの組み合わせを通じて商品を販売するビジネスモデルを指します。
初心者がネットビジネスを始める際に取り組みやすいビジネスモデルで、スモールビジネスやニッチをターゲットにするブランドから、何千ものアイテムを提供するグローバルな企業まで幅広く活用されています。eコマースは、一般的にB2C、B2B、D2Cの形態で展開され、どれが適しているかは、ターゲット層やビジネスゴールによって変わります。
利点
- 幅広い消費者にリーチできる:ネットショップは地理的な制約を受けないため、世界中の消費者にリーチできます。
- 初期費用を抑えられる:店舗用物件を借りる必要がないため、その分初期費用を低く抑えられます。
- 規模を拡大しやすい:適切なツールとプラットフォームを利用すれば、簡単に事業規模の拡大に対応できます。
欠点
- 競争が激しい:参入しやすいため競合が多く、消費者の目に留まりにくい可能性があります。
- テクノロジーに依存する:サーバーやデジタルツールに依存しているため、システム障害の影響を受けたり、コストのかかる更新が必要になったりする場合があります。
- 物流が課題:配送、返品対応、在庫管理を効率的かつ正確に行う必要があります。
eコマースモデルの成功事例
スノーボードクロス日本代表の鈴木瑠奈氏は、競技資金を確保するためにSOULfitwear(ソウルフィットウェア)を立ち上げました。Shopifyを利用してECサイトを構築し、高い強度と機能性を持つウェアを販売しています。
ShopifyでECサイトを構築した理由は、デザイン性の高さと低い手数料で簡単かつ効率的にサイト運営ができることです。高いデザイン性を活かしてブランドメッセージを顧客に届けたことで、30代の女性を中心に愛されるブランドになりました。
2. 小売モデル
小売モデルはB2Cの形態で、さまざまなメーカーが製造した商品を消費者に販売することです。卸売業者から仕入れた商品や自社で製造した商品、プライベートブランド製品(例:イオンのトップバリュ)を組み合わせて販売することも、このカテゴリーに含まれます。小売ビジネスの拠点としては、実店舗やポップアップストア、ECサイトやマーケットプレイスなどがあります。
小売業者の中には、B2CとB2B、両方のビジネスモデルを採用する企業もあります。例えば、オフィス家具を取り扱っている企業は、顧客層を拡大するために、個人消費者と法人の両方をターゲットにビジネスを展開するところが多くあります。
小売モデルで実店舗を開設する場合の利点と欠点は、以下のようなものがあります。eコマースモデルと組み合わせてそれぞれの欠点を補い合うのもおすすめです。
利点
- 顧客との関係を築ける:実店舗の場合、顔を合わせて接客ができるので顧客との関係を築きやすいです。
- 販売を促進する:店頭で商品の実物に触れることができるため、エンゲージメント率が高まります。ECと実店舗のどちらも展開していれば、販売の機会を増やすことができ、売り上げにもつなげやすくなります。
- 配送の手間がない:対面販売では、商品が大型でない限り、店内で商品の受け取りが完了するため、発送作業やそれに伴うコストについて考える必要がありません。また、顧客は実物を手にした上で購入するので返品率が低くなり、返品時も直接持ち込まれることが多いため配送料などが不要になります。
欠点
- 諸経費がかかる:実店舗のオープンには、継続的な運営費はもちろんのこと、テナント料や什器など多額な初期費用がかかります。
- 柔軟性がない:実店舗では、内装や設備を変更するには大がかりな作業が必要となり、物件の広さや賃貸規約などの制約も影響します。
- 管理するものが多い:実店舗では、店舗スタッフや備品、設備の管理をしなければなりません。
小売モデルの成功事例
amirisu(アミリス)は編み物文化を世界に広めるため、海外輸入の毛糸や編み物道具を中心とした商品を販売しています。実店舗とShopifyで構築したECサイトを活用して国内外の顧客をターゲットにしているだけでなく、実店舗にはShopify POSを導入することで、商品管理や決済、ECサイトとの連携をスムーズに行っています。
3. ドロップシッピングモデル
ドロップシッピングは、オンラインストアや通販サイトなどで商品が売れた際、メーカーや卸売業者(サプライヤー)から購入者に直接商品が発送されるビジネスモデルです。在庫を抱える必要がないため、無在庫販売モデルとも呼ばれます。低コストで始められるので、初心者がネットで稼ぐ方法としておすすめのモデルです。
利点
- 初期費用を抑えられる:商品を仕入れる必要がないので、初期費用がほとんどかかりません。
- 低リスク:商品を仕入れなくていいので、売れない在庫を抱えるリスクがありません。
- 配送の手間がない:商品のピッキングから配送まで、ドロップシッピング業者が担ってくれます。
欠点
- 競争が激しい:参入障壁が低いため、競争が厳しく差別化が難しくなっています。
- 利益率が低い:利益率が低いため有料広告で競争するのは難しく、コンテンツマーケティングなどで宣伝する必要があります。
- 在庫データの同期が必要:自社で在庫を保持していないため、オンラインでの在庫情報と実際の在庫量にずれが生じる可能性があります。
ドロップシッピングモデルの成功事例
ドロップシッピングサイトのTopSeller(トップセラー)を2015年10月から利用している江面勝さんは、半年で月商200万円を達成しました。多種多様な商品をドロップシッピングで取り扱うことで、ネットショップ運営初心者でありながら、幅広い層を取り込むことに成功しています。
4. 製造業モデル
製造業モデルは、オリジナルのアイデアを持つ人や、既存のアイデアにアレンジを加えることが得意な起業家に向いています。また、製品検証で扱う商品に市場価値があることがわかっている場合にも適しています。B2CもしくはB2Bモデルとして展開できます。
製造業モデルは、さらに以下のようなモデルに分けることができます。
- プライベートブランド:他の企業に製造を委託し、自分のブランド名の下で販売します。ブランドのオーナーは商品のディテール、パッケージなどを決定します。
- ホワイトラベル:メーカーが企画・開発・製造した製品を、自社ブランド名で販売します。
- ハンドメイド:ハンドメイド製品を販売します。製造と販売を一人で行うので、品質管理やブランド構築を自分の思う通りにできる反面、人手や時間が限られるため事業の拡張性に乏しい面があります。
利点
- 原価を抑えることができる:製造業はユニットあたりの原価が最も低いため、利益率が高くなります。
- 自分でコントロールできる:ブランディング、価格設定、品質管理を自分で行うことができます。
- 迅速に対応できる:自分で製造業を営むことにより、変化する消費者のニーズを迅速に商品に反映できます。
欠点
- 多額の初期投資が必要:自社製造を新たに始める場合は、工場の設備投資など初期投資が高額になる可能性があります。プライベートラベルやホワイトラベルの場合は初回発注のコストや最少注文数にも注意が必要です。
- 時間がかかる:製品によっては、製造して販売を開始するまでに時間がかかります。
- 詐欺のリスクがある:製造を外部に委託する場合は、契約を結ぶ前にそのメーカーの情報を収集し、信頼できるかをしっかりと審査する必要があります。
製造業モデルの成功事例
土屋鞄製造所は、長年にわたり質の高い革製品を手掛ける老舗ブランドです。工房併設の店舗やShopifyをベースに構築した自社ECサイトなどで製品を販売しています。
Shopifyを導入した理由は、少人数でもECサイトの運営や改善ができ、また、拡張性が高くさまざまツールを利用できるからです。時間を効率的に使うことが製造業モデルの課題ですが、Shopifyを導入した結果、製造やブランディング、顧客体験の向上により注力できるようになりました。
5. 卸売業モデル
卸売業モデルは、事業を素早く立ち上げたい時や、数多くの商品やブランドを販売したい場合に適したB2Bのビジネスモデルです。卸売業の利益率はドロップシッピングと製造業モデルの中間くらいであるのが一般的です。ケースによって異なりますが、卸売りで購入した商品を小売価格で販売した時の利益率はおよそ25~50%です。
利点
- 既存商品を販売できる:すでに市場で認められている規制品を取り扱うため、認知度がなく誰も買わないというリスクを避けられます。
- 確立されている信頼性に頼れる:すでに信頼を獲得しているブランドの商品を販売するので、自社の信頼性や地位も確保しやすくなります。
欠点
- 差別化に努力を要する:複数の卸売業者が同じ商品を取り扱うため、差別化が必要になります。
- 価格設定に縛りがある:他社製品を販売するため、価格設定などに制約がかかることがあります。
- 最低発注量がある:製造業者によって最低発注量が設定されていることが多いため、ある程度の商品を仕入れて在庫管理する必要があります。
- 複数の製造業者とのやり取りが必要:取り扱う商品の種類が多いと、複数の製造業者とやり取りをすることになり、管理が煩雑になる恐れがあります。
卸売業モデルの成功事例
バイク・自転車業界向けのB2B市場でトップシェアを誇るカスタムジャパンは、国内外の有名ブランドからオリジナルブランドまで数100社・15万アイテムを取り扱い、海外メーカーから直接仕入れることでコスト削減を実現しています。また、紙媒体だけでなく会員制ECサイトを運営し、ウェブカタログでも情報発信することで権威性や信頼性を高め、他社と差別化しています。
6. プリントオンデマンドモデル
プリントオンデマンド(POD)モデルは、クリエイターがオンラインでビジネスを始める際に適したビジネスモデルで、初期費用を低く抑えられるのが特徴です。一般的にB2Cのビジネスですが、企業からクライアントへのギフト、イベント参加者に配るバッグの受注など、B2Bとしても展開できます。
クリエイターはデザインを作成し、プリントオンデマンドサービスを提供する企業(PODパートナー)に送ります。顧客から注文が入ったら、PODパートナーがアイテムにデザインを印刷して商品として仕上げ、梱包と配送を行います。
クリエイターは仕入れ、製造、在庫管理をすることなく、自分のブランド名で商品を販売することができます。
プリントオンデマンドの市場で人気のあるアイテムは以下のようなものがあります。
- トートバッグ
- ヨガレギンス
- マスク
- キャンバスプリントやポスター
- クッション
- ブランケット
プリントオンデマンドモデルで販売する商品の利益率は価格戦略や顧客獲得コストによって異なりますが、それほど高くならないことがほとんどです。しかし、リスクが低いビジネスモデルであるため、EC事業の初心者や、既存事業のために新しい収入源を模索したい人に適しています。
利点
- 商品を素早く作成できる:デザインさえ作ってしまえば、すぐにモックアップを作成し、自分のネットショップで販売できます。
- フルフィルメントの手間がない:商品の準備や配送はPODパートナーが行ってくれます。
- 初期費用を抑えられる:自分では在庫を保有しないため、商品を手軽に追加または削除できます。新しいアイデアを試したり、ニッチ市場向けのデザインを作成したりするコストもあまりかかりません。
欠点
- 配送管理ができない:顧客の要望に応じて配送方法を変更するなど細かい配送管理はできないことがほとんどです。また、梱包方法の指定ができないので印象に残る開封体験の提供も難しくなりす。
- カスタマイズしにくい:商品をどの程度カスタマイズできるかは業者や商品によって異なります。カスタマイズをする際は、予算、印刷技術、そしてサイズ展開を予め考える必要があります。
プリントオンデマンドモデルの成功事例
YouTuberの「パパはYouTuber(ぱぱゆー)」はプリントオンデマンドサービスのSUZURIを利用して、ぱぱゆーショップというネットショップを開設し、オリジナルグッズを販売しています。人気のあるYouTuberは、このようにプリントオンデマンドのサービスを利用して、オリジナルグッズを販売し、動画再生以外の収入源を得ているケースが多くあります。
7. 消費者直接取引(D2C)モデル
消費者直接取引モデルは、メーカーが中間流通を介さずに消費者と直接取引するビジネスモデルです。販売チャネルの基盤ができるまでは時間や費用がかかるかもしれませんが、消費者にお得意様になってもらい収益性を高めることのできる優れたビジネスモデルです。
利点
- 顧客と関係を築ける:仲介なしで直接販売することで顧客とより深い関係を築くことができ、顧客生涯価値を高めることができます。
- 自社で顧客データを収集できる:自社で顧客データを集めることが可能になり、パーソナライズドマーケティングがしやすくなります。
- 利益率が高い:小売店などの中間流通を通さない分、利益率は高くなります。
- フィードバックが早い:顧客と直接コミュニケーションを取ることができるため、素早くフィードバックを得ることができ、商品や顧客体験の改善に役立てることができます。
欠点
- 多額の初期投資が必要:配送料や在庫管理の費用を自社で負担するので、業務をスムーズに進めるためには多額の初期投資が必要になります。
- 既存顧客がいない:新規ブランドの場合は一から市場開拓をしなければなりません。また、小売業者の経験や販売のノウハウを利用することができません。
消費者直接取引モデルの成功事例
株式会社Francfranc(フランフラン)はインテリア雑貨を中心に自社で企画・製造・販売を行うブランドで、特に20~30代女性に支持されています。Shopifyでオンラインストアをリニューアルし、3年で売り上げを約5倍に増やしました。
成功した理由は、安定した自社サイト運営と物流の自動化です。ShopifyはEC機能やマーケティングツールなどが簡単に使えるため、専門知識のない担当者でも無理なく運営することができ、結果として売り上げの増加につながりました。また、EC物流の自動化ができることも、売り上げの倍増を後押ししました。
8. サブスクリプションモデル
サブスクリプションモデルは、顧客に月次や年次で繰り返し課金し、その引き換えとして商品やサービスへのアクセスを提供するビジネスモデルです。このモデルは、継続的な顧客関係がカギとなります。
eコマースやオンライン講座など、サブスクリプション事業は以下のようなさまざまな分野で始めることができます。
- ストリーミングサービス
- 毎月の定期便サービス
- 会員制のコミュニティー
- 食品サービス
このように繰り返し売上が発生するビジネスモデルは、顧客を飽きさせない満足度の高い商品やサービスを毎回提供することができれば、より高い収入へとつながり、揺るぎない顧客関係を築くことが可能になります。顧客が商品やサービスを使用する期間が長くなればなるほど、そのサブスクリプションのサービスは顧客にとってより価値あるものになります。
利点
- 収入が予測可能:売り上げが定期的に発生するため、収入予測や在庫計画がしやすくなります。また事業拡大のためにどの程度の再投資をすべきか、把握しやすくなるでしょう。
- 顧客をリピート客にできる:定期的な購入を通して得た顧客行動に関する詳しいデータを活用すれば、商品を効率的に改善することができ、結果として顧客に継続してサービスを利用してもらえるようになります。
- クロスセルとアップセルしやすい:継続して商品やサービスを利用している顧客は商品価値を理解しているため、クロスセルやアップセルしやすいでしょう。
欠点
- 解約リスクが高い:解約リスクは、サブスクリプションモデルの課題の一つです。継続利用してもらうためには、常に人々の興味を引き付ける必要があります。
- 多様な商品やサービスを揃える必要がある:商品に変化がないと解約につながってしまうため、品揃えやサービスを常に新鮮に保つ必要があります。例えばNetflix(ネットフリックス)は毎月新しい映画を追加し、古いものを削除しています。
- 小さなトラブルが大きな問題になる:多くのサブスクリプションサービスは、複数の顧客に対して同時期に同じ商品を提供しています。そのため、システムや商品に欠陥があった場合には、広範囲に影響する恐れがあります。
サブスクリプションモデルの成功事例
Oisix(オイシックス)は、食品宅配サービスをサブスクリプションで提供しています。ほぼ完成した料理が定期的に届けられ、手間をかけずに美味しく栄養バランスのよい食事を取れるので、忙しい毎日を送る消費者に人気があります。2023年3月末時点での定期会員数は約50万人にのぼります。
9. サービス業モデル
サービス業モデルは、商品を提供するのではなく、技術や体験といった形のない価値を提供するビジネスモデルです。このタイプのビジネスは、B2CやD2C(美容院など)、B2B(オフィス清掃サービスなど)などあらゆるビジネスモデルが考えられます。
総務省統計局の2024年9月期サービス産業動向調査によると、サービス産業全体の月間売上高が35.0兆円に達し、前年同月比で2.0%の増加を示しています。これは、日本のサービス産業が着実に成長していることを意味しています。
利点
- 時間給を得られる:サービス業モデルでは、仕事に費やした時間に対して確実に報酬を得ることができます。
- 初期投資が低く抑えられる:サービスを提供する場合、初期投資や諸経費を低く抑えることも可能です。例えば、犬の散歩代行サービスは初期費用がほとんどかかりません。
欠点
- 事業規模に限界がある:サービス業モデルは自分の時間を費やすため、一人で規模を拡大するのは難しいでしょう。収入を増やすには、料金を上げるか低い料金で契約してくれる他社に一部を外注することが考えられますが、値上げによりクライアントが離れるリスクや、外注業者を見つけて管理する労力やコストが伴います。
- 交渉が必要な場合がある:形のない価値を提供するので、その料金の妥当性について説明できるようにする必要があります。
サービス業モデルの成功事例
一人サロン経営塾を運営する嶋田篤士氏は、顧客ゼロで開業し、ブログとInstagram(インスタグラム)を通して効果的に集客することで、半年で黒字化に成功しました。さらにその経験を活かして一人サロン経営塾を立ち上げ、ホームページやLINE(ライン)、メールマガジンを通して、独立を目指す美容師に向けて効果的な集客方法を教えています。
10. フリーミアムモデル
フリーミアム(Freemium)とは、「フリー(Free)」と「プレミアム(Premium)」からできた造語で、基本的な機能やサービスは無料で提供し、より高品質なものは有料で提供するビジネスモデルのことです。一般的に、B2CまたはB2Bの形態で展開されます。多くの場合、SaaS(インターネットを通じてソフトウェア利用できるサービス)やコンテンツ配信ビジネスがフリーミアムモデルを採用しています。
利点
- 顧客獲得が容易:ユーザーはまず無料で機能やサービスを体験できるので、新規利用者の獲得が比較的簡単です。
- 顧客データが収集可能:無料ユーザーであっても、パーソナライズされたキャンペーンやおすすめを表示するためのデータを収集できます。
欠点
- コンバージョンが難しい:無料で利用しているユーザーは、すでにその体験に満足していることも多く、アップグレードに興味がない可能性があります。
- 解約リスクが高い:サブスクリプションは解約率が高い傾向があり、基本機能を無料で利用できるフリーミアムモデルではその傾向がさらに高くなる恐れがあります。
フリーミアムモデルの成功事例
マンガアプリ業界最大級のコミックシーモアは、無料プランでは対象のマンガを毎日読むことができ、有料プランを契約すると、作品が購入できたり月額制読み放題が利用できたりします。
無料でも十分にマンガを楽しめるようにしつつ、読み放題プランはより豊富なジャンルをお得に読めるようにすることで有料プランの利用を促し、2024年3月期の売上高は812億円に上りました。
11. アフィリエイトモデル
アフィリエイトモデルは、商品やサービスの販売を促進するために、アフィリエイターがサービスを宣伝し、その成果に応じて報酬を得るビジネスモデルです。具体的には、ホームページやブログ、SNSなどのメディアを持つ運営者が、自分のサイトに企業の広告を掲載し、サイト訪問者がその広告から商品やサービスを購入すると報酬が発生するビジネスモデルを指します。アフィリエイトは個人が行うことが多いため、一般的にC2Cのビジネスモデルとして知られています。
利点
- 不労所得を得られる可能性がある:アフィリエイターはSEO対策をしたサイトとアフィリエイトリンクを用意することで収入を得られます。広告主側も、自社の代わりにアフィリエイターが宣伝をしてくれるため、少ない労力で商品やサービスを販売できます。
- コラボレーションの機会が得られる:アフィリエイトを通して、様々なブランドと提携することができます。これにより、新たなビジネスの機会やアイデアを得ることができる可能性があります。
欠点
- 収益化まで時間がかかる:NPO法人アフィリエイトマーケティング協会が行った調査によると、アフィリエイトによる収入はないと回答した人の68.6%が、始めて1年未満となっています。最低でも半年から1年は続ける心構えを持たなければ、アフィリエイトで収入を得るのは難しいでしょう。
- オーディエンスが必要:成功しているアフィリエイターは、多くの読者やフォロワーを抱えています。まだそういったオーディエンスがいない場合は、まずは継続的に充実したコンテンツを投稿し、オーディエンスを獲得するところから始めなければいけません。
アフィリエイトモデルの成功事例
社会人の転職をテーマにしたサイトである転職アンテナは、転職エージェント各社の傾向や面接のノウハウなど、転職の際に役立つ情報を載せています。このサイトを運営するアフィリエイターは、自身の転職経歴を活かして実践的で信頼のおけるサイトを作り、転職サイトをはじめ経済関連メディアなどから広告掲載の依頼を受けています。
12. 消耗品モデル
消耗品モデルは、本体を低価格で販売し、本体を使い続けるために必要な消耗品を購入してもらうことで利益を生み出すビジネスモデルです。このビジネスモデルの名称の由来は、カミソリのメーカーのジレットがカミソリ(本体)を替刃(消耗品)に比べて安めの価格で販売していることからきています。このことから、ジレットモデルとも呼ばれます。
逆に、本体の価格を高めに設定し、消耗品の価格は低く抑えることで、消費者に定期的に消耗品を購入してもらう手法もあります。
利点
- リピート購入を促進できる:本体を使い続けるには、顧客は消耗品を継続的に購入しなければならず、リピート率と顧客生涯価値を高めることができます。
- 顧客データが収集可能:顧客が購入すればするほど、より多くの顧客データを収集することができます。自社で顧客データの収集ができることは、企業にとって強みとなります。
欠点
- ブランド価値の希薄化:本体を安価で販売し、消耗品をかなり高額に設定した場合、顧客は商品の品質やブランドの信頼性に疑いを持つ可能性があります。
- 競争と価格破壊の影響を受けやすい:競合が本体価格をより安価にして品質を向上させる、価格を大きく下げるなど、競争と価格破壊の影響を受ける可能性があります。
消耗品モデルの成功事例
Rakuten Mobile(ラクテンモバイル)は、「ポイント全額払いで、スマホ代のお支払いがずーッと0円!」と銘打ってキャンペーンを行っています(2025年3月時点)。本体価格は破格ですが、データ通信料金により利益を確保しています。
13. デジタル商品モデル
デジタル商品モデルは、デジタルコンテンツを販売するビジネスモデルです。デジタル商品は一般的に、ダウンロードやストリーミング、MP3、PDF、NFTs、動画、プラグインまたはテンプレートなどのデジタルファイル形式で提供されます。
デジタル商品を作成するための初期費用は高額になるかもしれませんが、販売にかかるコストは比較的低く済みます。
利点
- 間接費が低い:在庫を保有したり配送料を支払ったりする必要がありません。
- 事業拡大しやすい:デジタル商品は即納品が可能なために、フルフィルメントの手間がかかりません。事業が拡大した際も、納品作業を自動化して時間を節約することができます。
- 提供方法が多様:さまざまな方法で商品を提供できます。例えば、アップグレード可能な無料商品を提供するフリーミアムモデルやサブスクリプション、ライセンス販売などがあります。さらにデジタル商品だけを取り扱って事業を構築することも、既存事業にデジタル商品を取り入れることも可能です。
- 将来性がある:矢野経済研究所が実施した「eラーニング市場に関する調査(2024年)」によれば、2024年度の日本におけるeラーニング市場規模は、前年度比0.1%増の3,693億5,000万円となる見込みです。
欠点
- 競争率が高い:ほとんどのデジタル商品には、無料の代替品が存在しています。成功するためには、ターゲットにしたいニッチ市場をよく検討し、より優れた商品を提供し、ブランドを構築しなければなりません。
- 著作権を侵害される:デジタル商品には、コンテンツを盗用または再利用されるリスクがあります。
- 販売に制限がある:例えば、Facebook(フェイスブック)やInstagramの商取引ガイドラインによると、プラットフォーム上で販売できるのは物理的な商品に限られています。
デジタル商品モデルの成功事例
彩流社は、Shopifyをベースに、電子書籍配信プラットフォームbookend(ブックエンド)を運営しています。電子書籍と紙書籍の2つの選択肢が用意されており、購入した書籍はウェブ上の本棚に追加され、スマホやパソコンがあればいつでも閲覧できるようになっています。また、デジタル著作権管理機能も搭載されているので、購入者の個人情報や購入書籍に対し厳重なセキュリティ対策が施されています。
14. バンドル販売モデル
バンドル販売モデルとは、複数の商品やサービスを組み合わせ、単体で購入して揃えるよりもお買い得になるように価格設定して販売するビジネスモデルです。商品の認知度と平均注文額(AOV)を高めたい場合に効果的で、B2CとB2Bの両方の形態があります。サブスクリプション型保守サービスから厳選されたギフトセットまで、バンドル販売の事業内容はさまざまです。
利点
- 販売を促進できる:お得なセット価格が消費者の心理を刺激して、売り上げの向上につながります。
- 顧客体験が向上する:補完的なアイテムを一緒に提供することで、メインの商品やサービスについての体験が向上します。
- 意思決定を促す:顧客はセット商品をよりお得と認識するため、購入前の悩む時間が短縮されます。
欠点
- 利益率が低い:慎重に価格設定しなければ利益率を低下させる可能性があります。
- 在庫管理が煩雑になる:バンドルに含まれる全商品の十分な在庫が必要なので、多くの在庫を管理することになります。
- 顧客の好みに左右される:バンドルにあまり好ましくない商品が含まれている場合、顧客は価格が割に合わないと感じるかもしれません。セット内容をカスタマイズできるようにすることも検討しましょう。
バンドル販売モデル成功事例
国内最大級の家電量販店であるビックカメラは、新年度に一人暮らしを始める若い世代をターゲットにした「新生活家電セット」を販売しています。「新生活家電セット」は、品数別に複数のセットがあり、追加料金で家電のグレードアップができるなどカスタマイズも可能です。これにより、顧客はセット内容に納得した上で購入することができます。
15. マーケットプレイスモデル
マーケットプレイスモデルは、売り手と買い手とを結びつけるインターネット上の取引所としてプラットフォームを提供するビジネスモデルで、小売業者ではなく、仲介業者としての役割を担います。よく知られている例としては、Airbnb、Amazon、楽天市場などがあります。マーケットプレイスは業界を超えて、B2CやB2Bとして運営されます。
利点
- 初期費用が抑えられる:プラットフォームは在庫や商品の生産を必要としないため、初期費用を抑えることができます。
- 事業拡大しやすい:プラットフォームを利用する小売業者が増えることで、多額の投資をすることなく事業を拡大することができます。
- 多様な収益源がある:マーケットプレイスは、出品料、手数料、プレミアムメンバーシップといった多様な収益源を持っています。
欠点
- 競争が激しい:マーケットプレイスは、ニッチな分野で確立されたプラットフォームと競合することが多いです。
- 管理が複雑:係争への対応、品質の確保、支払いの処理などさまざまなことを管理する必要があります。
- 構築が難しい:買い手と売り手と買い手の両方を惹きつけるプラットフォームを構築し、ニーズに合わせてアップデートしていくことには多大な努力を必要とします。
マーケットプレイスの成功事例
日本最大級のハンドメイド商品のマーケットプレイスであるCreema(クリーマ)は、ハンドメイド作家と買い手を結びつけるニッチなマーケットプレイスです。売り手と買い手双方に使いやすいプラットフォームを構築し、2024年3月期時点で、登録クリエイター数は約27万人、登録作品数は1,690万品に達しました。
16. 転売モデル
転売モデルとは、市販されている商品を購入し、その商品に利益をのせて販売するビジネスモデルです。ファッション、電子機器、収集品業界では一般的で、実店舗、ネットショップ、eBay(イーベイ)などのプラットフォームで販売されます。
利点
- 立ち上げが簡単:商品を製造する必要がないため、ビジネスの立ち上げが簡単です。
- 柔軟性がある:市場動向に基づいて素早く事業方向を転換することができます。
- 需要が確立されている:認知度の高いブランドや流行のアイテムを販売することで、簡単に顧客を惹きつけることができます。
欠点
- 市場動向によって利益率が低くなる:競争や市場の飽和により利益率が低くなることがあります。
- 余剰在庫のリスクがある:売れ残った場合は在庫を抱えることになり、財務を圧迫する可能性があります。
- サプライヤーに依存:商品の確保や品質は仕入れ先の小売店などに左右されます。
転売モデルの成功事例
羽田甚商店は、「暮らしの中に小さな幸せを」というコンセプトのもとに、女優の羽田美智子氏が営むセレクトECショップです。日本全国の食品や雑貨、スキンケア商品を取り扱っています。
メーカーのECサイトよりも少し高い価格設定ですが、女優としての知名度が付加価値となっているだけでなく、コンセプトや自身が足を運んで生産者と対談する取り組みが転売のネガティブなイメージを払拭し、集客に成功しています。
ビジネスモデルの選び方

1. ターゲット層を知る
適切なビジネスモデルを採用するには、自分の商品に興味を持つ消費者について知ることが必要です。市場調査を行いターゲットにすべき層を把握できたら、ターゲット層の課題や悩み、購入を決定する際の動機は何かについて考察しましょう。これらの情報は、価格設定や商品開発、マーケティング、広告戦略を考案する際に活用できます。
2. 提供できる解決策について考える
次は、ターゲット層が抱える課題や悩みに対して、自分の商品が提供できる解決策を考えます。例えば、ジュエリーを販売するのであれば、高品質なジュエリーに憧れがあるが経済的な余裕がない若い世代に向けて、高品質で小ぶりなイヤリングを手頃な価格で販売したり、日常的に料理をする層に向けて、水に濡れても劣化しないブレスレットを販売したりすることが、課題や悩みに対して提供できる解決策となります。
提供できる解決策がわかれば、自分のブランドが提供する価値が見えてきます。このことは、市場で際立つ存在となるためのブランドポジショニングやマーケティング戦略を構築する際に非常に役に立ちます。
3. 事業計画を作成する
事業計画の作成には、どのようなビジネスモデルを採用するのか、ターゲット層、初期費用はどこから調達するのか、バックエンドの機能はどうするのか、どのようにプロモーションを行い事業成長させていくのかなどを記します。
事業計画を作成する過程で、自分の商品は複数のビジネスモデルに当てはまると気づくかもしれません。例えば、B2CでもB2Bでも需要がある商品かもしれません。複数のビジネスモデルで事業を展開することは、複数の販路を確保できるということで、企業にとって強みになります。
まとめ
さまざまなビジネスモデルの中から、自分のビジネスにふさわしい種類を選ぶのは、一見すると大変なように思えますが、ほとんどの商品はいずれかのビジネスモデルに当てはまります。
昨今では、パソコンやスマホの普及とITの進歩により、インターネットを利用して収入を得られるビジネスモデルが増えています。副業として行えるものなど規模もさまざまなため、自分の商品やサービスのターゲット層を把握し、最適なビジネスモデルは何かを検討しましょう。
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よくある質問
主なビジネスモデルの種類は?
- 企業対消費者間取引(B2C)
- 企業間取引(B2B)
- 消費者間取引(C2C)
- 消費者対企業間取引(C2B)
- 消費者直接取引(D2C)
ECやネットで稼ぐには、どんなビジネスモデルがある?
- eコマースモデル
- 小売モデル
- ドロップシッピングモデル
- 製造業モデル
- 卸売業モデル
- プリントオンデマンドモデル
- 消費者直接取引(D2C)モデル
- サブスクリプションモデル
- サービス業モデル
- フリーミアムモデル
- アフィリエイトモデル
- 消耗品モデル
- デジタル商品モデル
- バンドル販売モデル
- マーケットプレイスモデル
- 転売モデル
ビジネスモデルはどのように選べばいい?
最適なビジネスモデルを選ぶには、まず市場調査を行い、ターゲット層を知ることから始めます。その後、ターゲット層が抱える課題や悩みに目を向け、自分の商品やサービスを通して提供できる解決策について考えます。
文:Kyoko Kitamura