SNSやブログなどのソーシャルメディアを利用している人は、ドロップシッピングを活用して起業家になった、という話を聞いたことがあるかもしれません。有名インフルエンサーや有名ブロガーの投稿が注目を集める反面、一般人も稼げるのか、時代遅れではないのか、といった点に疑問を持つ人も少なくないでしょう。
この記事では、ドロップシッピングはまだ儲かるビジネスモデルかどうかを検証します。また、これからドロップシッピングビジネスを始めようとしている方のために、事前に知っておくべきポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
2025年のドロップシッピングの特徴
ドロップシッピングは、在庫や倉庫を持たずにEコマース業界に参入でき、初期投資を抑えられることから、依然として起業家にとって魅力的なビジネスモデルです。
ドロップシッピングでは、注文から商品が届けられるまでのプロセスである注文フルフィルメントは、メーカーや卸売業者(サプライヤー)が行います。ドロップシッピングサイトの運営者は、商品を仕入れたり在庫として確保したりする必要がなく、梱包や発送手続きも行いません。
このようにドロップシッピングは、仕入れや在庫管理、梱包、発送に関係する業務はサプライヤーに一任するため、費用や人件費を削減でき、通常のECサイト運営に比べると低コストで始められるビジネスです。

2025年にドロップシッピングを始めても儲かるか?
低コストで小規模なビジネスを始めたい人にとって、ドロップシッピングは良い選択肢で、儲かるチャンスは充分にあります。以下のグラフでもわかるように、「dropshipping」という単語の検索数は、過去20年間で急増しており、特にここ10年で検索数を大きく伸ばしていることがわかります。

ドロップシッピングの始め方は、以下の通りです。
- ドロップシッピングで売れる商品を選ぶ
- 売りたい商品を取り扱っているドロップシッピングのサプライヤーを見つける
- ネットショップを作成する
ドロップシッピングサイトの準備ができたら、集客を行います。ドロップシッピングの場合、従来の小売業に比べ初期投資が少なくて済むというメリットがあるものの、顧客を引き付けるためのSEO対策やSNSマーケティングが欠かせません。
2025年、ドロップシッピングを始める人がまだいる理由
2025年の世界のドロップシッピング市場(英語)は4,350億ドル(約64兆円)に達すると予想されており、前年比で23.6%増加しています。2032年までは、平均24.39%の年平均成長率になると予測されており、2027年には6,000億ドル(約88兆円)を超える市場になると見込まれています。

経済産業省の調査によると、日本国内の電子商取引市場は拡大を続けていると述べており、それに伴ってドロップシッピングもさらに儲けやすくなっています。消費者がモノを買う時にオンラインショッピングを選ぶ傾向が強くなっていくなかで、在庫管理等のコストをかけずに起業ができるドロップシッピングは、新規ビジネス立ち上げを検討している人にとって大きなアドバンテージをもたらすでしょう。
一方で、ドロップシッピングのビジネスモデルを使って「一攫千金」を謳うインフルエンサーも増えています。ですが、ドロップシッピングも短期間で必ず稼げるというものではありません。メリットとデメリットがあるため、それらを理解し戦略的に事業を開始・運営することが重要です。
ドロップシッピングのメリット
参入障壁が低い
仕入れや在庫管理等に多額の初期投資を必要としないため、ドロップシッピングは初めて起業する人にとっても参入障壁が低いという特徴があります。また、サプライヤーが注文処理や梱包、発送手続きを行ってくれることから、これらの作業も行う必要がありません。
ただし、競争の激しい市場でサイト運営をする場合は、マーケティングやブランディングのスキルが必要となります。
柔軟性がある
ドロップシッピングでは、在庫管理や保管場所確保を行う必要がないことから、事業主が販売量を自由に設定することができます。取り扱い商品も、最新のヒット商品予測などの消費者のトレンドに合わせて展開させられるため、売れ筋商品の取り扱いを増やしたり、売れ行きの悪い商品の取り扱いを素早くやめたりすることができ、不良在庫を抱える心配もありません。売れ行きや流行に合わせて商品カタログを柔軟に変更できることは、ドロップシッピングの大きなメリットと言えます。
商品の販売戦略に集中できる
ドロップシッピングでは、商品の注文処理に関する作業が発生せず、商品の販売戦略を最適化させることに集中できるというメリットがあります。どの商品が売れるのかの分析に焦点を充てられることから、一部のアントレプレナーは、ドロップシッピングを短期集中型のテストマーケティングに活用しています。
オンデマンド印刷などのドロップシッピングモデルを活用することで、商品に付加価値を与えることもできます。フルフィルメントをアウトソーシングにすることで、注文を受けたらすぐに顧客へ発送される状態を維持しながら、自社独自の商品開発・提供に注力できます。
ドロップシッピングを始める前に知っておくべきこと6つ

1. 低コストで儲けられる
ドロップシッピングでは、ビジネス立ち上げ時に必要となるコストを削減することができ、収益性の高いビジネスモデルであると言えます。
日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」によると、開業資金の中央値は580万円となっています。EC事業の立ち上げでは店舗や設備が不要な分、もっと低くなると予想できますが、売り上げのうち仕入れに5割、配送費などその他の費用で3割がかかり、一般的なネットショップでの利益率は2割と言われています。つまり月収20万円を手元に残すためには、月商100万円を目指す必要があり、運転資金として80万円がかかるということになります。
しかしドロップシッピングでは、商品の仕入れ・在庫管理やフルフィルメントに掛かるコストを大幅に削減することが可能です。新商品の開発に投資する必要もなく、必要となる商品コストは、オリジナルのデザインやサンプル作成にかかるものです。注文処理はドロップシッピング業者側で行われるため、これらに関連する人件費も不要です。
ただしドロップシッピングであっても、他のビジネスモデル同様、収益を上げるには適した商品を適切な価格で販売することが重要です。類似商品を販売する競合他社が多いなか、サプライヤーとの契約に月額料金や手数料が発生する場合もあるため、各商品から得られる利益率は限定的になる可能性があります。
また、ドロップシッピングにおいて最もコストがかかるのはマーケティングです。競争の激しい市場では、商品のポジショニングが欠かせません。競合他社が類似商品をより安価に販売している場合、戦略的なデジタルマーケティングにより、自社で扱う商品をより魅力的に見せたり、購入を後押ししたりすることが重要となります。
2. 競争が激しい
ドロップシッピングは少ない初期投資で始められるため、ECサイト事業で開業を目指す起業家にとって魅力的なビジネスモデルである一方、参入障壁の低さが競争激化を招いています。人気のある分野では、特に競争が激しくなる傾向にあります。
競争が激しいドロップシッピングにおいて、ビジネスを成功に導くには、以下の方法が役立ちます。
競合の少ないニッチ市場を選ぶ
競合の少ない分野を選択することで、競争の激化を避けられます。類似商品や似たような企業が乱立していると、差別化が難しくなるだけでなく、価格競争に陥る危険性もあります。競合が少なければ、自社が提供する付加価値や、商品の特徴をわかりやすく顧客に伝えやすいだけでなく、適正価格での販売につながります。
ブランド構築
ブランド構築を行い、顧客からの信頼を得ることは、ドロップシッピングで成功を収めるポイントのひとつです。ブランドアイデンティティを持ち、ネットショップの信頼性を高める工夫をすることで、顧客は安心して商品を購入できるようになります。
顧客満足を優先する
ドロップシッピングビジネスを成功させるには、既存顧客維持に向けた優れたカスタマーサービスの提供が欠かせません。サイト運営者は、新規顧客獲得に向けたマーケティングに集中してしまうあまり、既存顧客への対応がおろそかになってしまうことがあります。しかし、ロイヤルティプログラムなどの顧客維持の戦略をとることは、継続的な利益向上につながります。商品の質や独自性にこだわるだけでなく、円滑な配送や優れたUXなどを採用すると良いでしょう。
3. 成功には時間がかかる
ドロップシッピングサイトが顧客の目に留まり、初めての収益を生み出すまでには時間がかかります。安定した儲けを確保するにはさらに時間を要するでしょう。実際にドロップシッピングを開始し販売するまでの流れは以下の通りです。
- ECサイト立ち上げ
- ニッチ市場や商品の決定
- サプライヤーの決定
- 商品のマーケティング
- ブランド構築
ドロップシッピングで安定した月間収益を上げるには、週に数十時間を費やす必要があります。費やす時間が長いほど、収益を得られる可能性が高くなります。
ドロップシップビジネス経験者によると、平均的なフルタイム労働の収入を得るには、最低でも1年間のフルタイム労働に匹敵する作業時間が必要であるとされています。
4. 信頼のおけるサプライヤーを見つける必要がある
商品のクオリティや注文フルフィルメントはサプライヤーに依存するため、信頼のおける取引先を見つける必要があります。マーケティングやブランディングに注力していても、クオリティの低い商品ばかりである、配送に問題があるといった場合には、顧客の信頼を失ってしまい、収益化が見込めなくなる恐れがあります。
こういった品質管理や出荷の遅延といったトラブルを避けるためにも、サプライヤーとのコミュニケーションが欠かせません。商品の製造や管理体制、発送までの流れについて詳しく知るために質問をしたり、どのようなプロセスを経て顧客の手元まで届くかを確認しましょう。サプライヤーの実績や口コミなども、選ぶ際の基準の一つとなります。Alibaba(アリババ)やAliExpress(アリエクスプレス)などのサイトには、ドロップシッピングを行っているサプライヤーも数多く登録しています。
取引を検討するサプライヤーが見つかった場合には、次の点に気を付けて取引先を決定しましょう。
配送
消費者は迅速かつ安価な配送を求める傾向にあるため、取引候補のサプライヤーから、配送期間や配送コストの見積もりを取って比較します。顧客のニーズに合ったサービスを提供できるかどうかをよく検討しましょう。
レビューと評価
サプライヤーと取引のある企業のレビューや評価を確認します。商品の品質や配送スピード、配送エラーの有無があるかといった情報を集め、安心して取引ができるサプライヤーかどうかを見極めます。顧客のニーズに応えられる配送スピードを確保できるか、返金対応ができるかといった点も知っておく必要があるでしょう。
フィードバックへの対応
ドロップシッピングの運営においても、顧客からのフィードバックを積極的に集め、それに対して迅速に対応することはとても重要です。商品の質や配送スピードはサプライヤーに依存しますが、販売者として当事者意識を持って対応することで、誠実かつ迅速な対応ができます。
5. カスタマーサポート対応はサプライヤーではなく事業者が行う
カスタマーサポート対応は、事業者が行います。顧客が商品を注文すると、商品の詳細や発送先は自動的にドロップシッピングサプライヤーに送信され、対応してもらえます。
しかし、破損や欠損といった商品の品質に関わるトラブルや、配送ミス、配送遅れなどの対応は事業者が行います。商品を持たず、梱包や発送を行わないことから、責任はサプライヤーにあると思いがちですが、顧客とやりとりを行い対応をするのは事業主であるため、自分の責任であると捉え、真摯に対応する必要があります。
信頼のおけるサプライヤーと取引を行えば、これらのトラブルを未然に防ぐことにつながります。一方で、配送トラブルや配送中の商品の破損といったトラブルがないとは言い切れないため、これらのトラブルが発生した場合は迅速に顧客と連絡を取り、解決策や代替案を提案します。
カスタマーサポートには、次の内容が含まれます。
- 配送の遅延や変更など、お届けに関する最新情報を積極的に伝える
- サプライヤーと品質管理基準を維持する
- 注文とは異なる商品を届けてしまった場合にフォローする(例:次回注文時に使用できるクーポンコード発行など)
- 注文確定メールにチャットボットとよくある質問へのリンクを入れて、サポートにアクセスしやすくする
迅速なカスタマーサポート対応は、SNSやオンラインレビューといった目立つ場所でネットショップへの苦情が投稿されるような事態を回避することにもつながります。ある調査によると、口コミを参考に商品を購入した経験がある人は、86.1%にも上るとされています。このように、口コミの影響は大きく、否定的なレビューが投稿されるのを避けるためにも、質の高いカスタマーサービスの提供が不可欠です。
発生したトラブルに関しては、サプライヤーに責任を取ってもらいます。一方で、顧客対応はECサイト管理者である事業主が行います。顧客と密なコミュニケーションを取り、顧客の抱える不満へのフォローを行います。場合によっては、割引クーポンを発行するなど、再度注文をしてもらえるような対応策を考えます。
6. 関連する法律などを確認しておく
当然のことながら、ドロップシッピングは合法なビジネスモデルです。しかし、ショップを開設する前に法律などの面で知っておくべきこともいくつかあります。
会社形態
個人事業主や、株式会社、合同会社などの会社形態も、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。マーケティングへの大きな出費など、ビジネスにおける負債に対して個人責任を負う必要のない、合同会社を選ぶ事業者も少なくありません。
税金
一般的な小売業と同様に、ドロップシッピングでも消費税や法人税の納付義務があります。
契約
ドロップシッピングのサプライヤーと契約を交わす際には、問題が発生した場合の責任の所在が誰にあるかをはっきりさせるだけでなく、万が一トラブルに発展した際に備えて弁護士への相談もしておくと安心です。
サイトポリシー
顧客がいつでも閲覧できるように、プライバシーポリシーや配送ポリシー、返品ポリシー、そして特定商取引法に基づく表記へのリンクを、サイトのアクセスしやすい場所に配置します。
ECビジネスの事業保険
ビジネスの拡大に伴い、リスクも増えることから、ECビジネス向けの事業保険に加入しておくと安心です。契約の内容にもよりますが、サイバー攻撃やデータ漏洩、商品責任、配送ミスなどのリスクに対する補償を提供してくれます。
まとめ
2025年以降のドロップシッピング業界は、成長を続けており、多くの起業家もこのビジネスモデルに注目しています。初期投資のかからないドロップシッピングへ参入する事業者も少なくないため、多くの競合他社との差別化に時間や労力、資金を必要とする傾向にあります。
特に、Z世代を含むターゲット層の場合、ドロップシッピングへの認知度が高いだけでなく、Temuやアリババなどの商品を安く購入できるサイトの利用経験も少なくありません。
ドロップシッピングビジネスを成功に導くには、適切な商品選びと信頼のおけるサプライヤーとの契約、そして高品質な顧客サービスの提供が欠かせません。これら3つの要素に注力しながら柔軟に運営していくことが、ドロップシッピングビジネスで儲けるために不可欠です。
ドロップシッピングに関するよくある質問
2025年、ドロップシッピングではもう稼げない?
2025年もドロップシッピングで稼ぐことは可能です。特に、低コストで小規模なビジネスを始めたい人は、ドロップシッピングが最適で、儲かる可能性も充分にあります。
初心者でもドロップシッピングで稼げる?
初心者でもドロップシッピングで稼げます。ただし、競合他社が多いことから、ブランディングなどを通した差別化が必要となるだけでなく、価格競争に陥りやすいため、利益率を上げる工夫も必要です。
ドロップシッピングのデメリットは?
ドロップシッピングは競合他社が多く差別化が難しいというデメリットがあります。また、商品は直接サプライヤーから発送されるため、品質管理が難しいという特徴もあります。商品を在庫として手元に置かないことからも、商品知識を深める努力が欠かせません。さらには、競合が多いことから価格競争に陥りやすく、付加価値を付けて利益率を上げる工夫も必要です。
2025年にドロップシッピングを始めても儲かる?
2025年にドロップシッピングを始めても、利益を生む可能性があります。ただし、利益率は販売する商品によって異なります。サプライヤーから卸価格の情報を入手し、他の小売業者の利益率などと比較して、ドロップシッピング商品の利益率を決定しましょう。
ドロップシッピングは合法?
ドロップシッピングは合法です。販売者が在庫を抱えることなく商品を販売できるビジネスモデルとして広く利用されており、他のビジネス同様、自治体や国の法令、国際法などの法律を遵守する必要があります。
Amazonドロップシッピングは将来性がある?
Amazonドロップシッピングは、売上の15%の手数料がかかるだけでなく、月間登録料といった費用も発生するため、自社ECサイトで販売するよりも利益が少なくなる傾向にあります。利益が主な目標である場合、販売チャネルの多様化を検討しましょう。
文:Masumi Murakami