現在、日本で新設できる会社は4種類で、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つです。この記事では、各会社形態の特徴、および会社形態の選び方について解説します。
会社形態の種類は4種類ある

現在、日本で新設できる会社形態は以下の4種類です。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
このうち、株式会社がもっとも一般的な会社形態で、会社を所有しているのは出資者である株主、経営者は株主総会にて選出されるため、所有と経営が分離されているという特徴があります。また、株式会社以外の3つの形態(合同会社・合資会社・合名会社)は、所有と経営が一致しており持分会社と呼びます。
政府統計によると、令和5年時点での会社の割合は株式会社が約78%、合同会社が約8%、合名会社が約0.06%、合資会社が約0.2%、特例有限会社が約12%です。現在新設される会社は、ほとんどが株式会社か合同会社のどちらかとなっています。
株式会社とは

株式会社は、会社の所有者と経営者が分かれているのが特徴です。会社のオーナーである出資者は株主と呼ばれ、事業で得た利益の一部は配当金として株主に分配されます。基本的には、株主総会によって選出された人が会社を経営しますが、特に中小企業では出資者と経営者を兼任することもあります。
株式会社のメリット
- 社会的信頼性が高い
- 資金を集めやすい
- 出資者のリスクが低い
株式会社は、社会的な認知度や信用度が高いため、企業間取引(BtoB)において有利になります。
また、資金調達がしやすい点もメリットの一つです。株式を発行して投資家から資金を集められるため、通常の融資と比較すると数億円単位の大規模な資金を集めやすいです。株式の発行により資金調達ができるのは、株式会社のみです。
万が一、会社が倒産したとしても、出資者は間接有限責任のため出資金以上のリスクを背負うことはありません。ただし、金融機関から融資を受ける際には、代表取締役社長の個人保証を求められることが多く、事実上の無限責任社員となるためリスクはゼロではありません。
株式会社のデメリット
- 遵守しなければいけない規則や法律が多い
- 設立にお金がかかる
- 株主の意向を経営に反映させる必要がある
株式会社は、遵守しなければならない法律や規則が多いです。例えば、株主総会の開催や、定款の認証、決算報告などが義務付けられています。定款とは、会社の規則を定めた書類のことで、公証人役場で認証を受ける必要があります。財務状況の開示は、会社の経営状態を出資者に開示することで、取引の透明性を高めるために行われます。
また、設立の際に登録免許税や定款の認証などを受けるために、最低220,000円程度の資金が必要です。現在は、最低資本金制度の廃止に伴い資本金1円から設立可能ですが、実際には他の会社形態よりも設立にお金がかかります。
さらに、経営者であっても全ての意向が反映できるとは限りません。経営に関する大きな決定をする場合は、株主総会を開いて決議を取る必要があります。その議決権の大きさは、基本的に所有している株の割合によって決定されます。たとえば、取締役の選定や役員報酬の決定は、2分の1以上の議決権を保有する株主の同意が必要となります。さらに、会社の合併や定款の変更といった重要な決定は、議決権の3分の2以上の同意を得た特別決議が必要だと、法律で定められています。
合同会社とは

2006年の新会社法で合同会社の設立が可能になりました。アメリカのLLC(Limited Liability Company)がモデルで、日本型LLCともいわれています。出資者と経営者が完全に一致しているのが特徴で、出資者全員が会社に対する決定権を持ちます。
株式会社に次いで人気のある形態で、Amazonや西友、アップルジャパンなど、特に一般消費者相手(BtoC)の会社で増加傾向にあり、設立件数は年々増加しています。
合同会社のメリット
- 会社設立の費用を抑えられる
- 経営に関する意思決定が早い
- 出資者のリスクが低い
定款の認証が不要なため、登録免許税の60,000円と印紙代40,000を含めて、100,000円程度で設立できます。
合同会社は、出資者と経営者がイコールであるため、スピーディに意思決定できるのがメリットです。株主総会を開く必要がなく、利益配分や組織設計に制限もないことから、自由に経営を進められます。
また、出資者の責任範囲は株式会社と同様の有限責任社員になるので、負債が発生した場合のリスクも抑えられます。
合同会社のデメリット
- 社会的認知度が低い
- 資金を集めにくい
認知度は上昇していますが、株式会社ほど認知度や信頼度が高くありません。認知度や信頼度が低いと金融機関や法人相手の取引先からの信用を得にくい可能性があります。また、株式を発行できないので、大規模な資金調達にも向いていません。ただし、所定の手続きを行うことで株式会社に変更もできます。
合資会社とは

合資会社は、出資者である有限責任社員と、事業を行う無限責任社員の2名以上で構成されるのが特徴です。無限責任社員となる人物が、知り合いなどの出資者から資金を集めて事業を行う際に適しています。
合同会社が設立可能になって以降はメリットも少ないため、近年ではあまり設立されません。法改正前に設立された会社や、家族経営の小規模な酒造、醸造会社、タクシー、IT関連企業に選ばれることがあります。
合資会社のメリット
- 設立費用が抑えられる
- 法的制約が少なく、比較的自由に経営できる
合資会社は、資本金や定款の認証が不要のため設立費用を抑えられます。登記申請だけで会社設立ができ、登録免許税の60,000円と印紙代40,000円程度なので、株式会社よりも安く設立できます。
また、株式会社と比べると法的制約や規則が少なく、決算公告は不要です。経営者である無限責任社員は、分配金や組織運営などを比較的自由に決めることができます。
合資会社のデメリット
- 有限責任社員と無限責任社員の2名以上が必要
- 無限責任社員に負債の上限がなくリスクが高い
- 認知度や信頼度が低い
有限責任社員と無限責任社員の2人以上が必要で、2人未満になった場合には会社形態を変更する必要があります。
無限責任社員のリスクが高く、万が一倒産した場合には、個人資産を充当してでも負債を返済しなければなりません。有限責任社員は出資分だけ責任を負いますが、無限責任社員のリスクが非常に高いため、昨今ではあまり選択されないのが現状です。
株式会社や合同会社と比べて認知度が低く、社会的信用度もそれほど高くありません。
合名会社とは

合名会社は、出資者全員が無限責任社員となる会社形態です。社員一人ひとりが業務執行権と代表権を持ち、事実上は個人事業主の集まりのような組織となりますが、会社として法人格を持ち法人税の支払いが必要です。
合名会社のメリット
- 資本金不要で費用が抑えられる
- 株式会社と比べると規則が少ない
合名会社も合同会社や合資会社と同様に100,000円程度で設立できます。
株式会社と比べると定款の認証や決算報告義務などもなく、経営の自由度は比較的高いと言えるでしょう。
合名会社のデメリット
- リスクが高い
- 資金を集めにくい
- 大規模な組織展開はしにくい
合名会社は、無限責任社員のみで構成されるため、全員が責任を負わなければならず高リスクです。万が一、倒産した場合は出資金だけでなく、個人資産にも影響が及びます。
また、株式の発行ができないので、資金を集めにくい傾向にあります。社員持分の譲渡には全員の同意が必要となるなど、組織を拡大させづらい要素もあります。合名会社も合資会社と同様に、リスクが高いにもかかわらずメリットが少ないため、近年ではほとんど設立されません。
会社形態の選び方

1. 設立費用
株式会社は220,000円程度、持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)は100,000円程度から設立できます。どの会社形態であっても必要な費用は、定款用の収入印紙代40,000円(電子定款の場合は不要)と、登録免許税です。登録免許税は資本金の0.7%、または株式会社では150,000円、その他の持分会社では60,000円のうち、いずれか高い方となっています。株式会社はさらに、定款の認証手数料(資本金の額に応じて30,000〜50,000円)と、定款用の謄本手数料(おおむね2,000円程度)が必要となります。
2. 意思決定のしやすさ
意思決定は、持分会社の方が株式会社よりもスムーズでしょう。
株式会社の場合、経営に関する大きな決定をする際には、株主総会で意見を聞く必要があります。外部の意見を取り入れやすい一方、意思決定に時間がかかる場合がほとんどです。一方、持分会社は会社の所有者と経営者が一致しているため、迅速な意思決定ができることが多いです。
迅速な意思決定をしたい場合には、持分会社を選びましょう。
3. 資金調達のしやすさ
株式会社は、持分会社より大規模な資金調達がしやすいです。
株式会社は株式の発行により、投資家から数億円など大規模な融資を受けられる可能性があります。一方、持分会社は株式の発行ができないため、株式の発行ほどの大規模な資金調達はしにくいです。代わりに、補助金や助成金、融資などを活用する必要があります。
事業を大きくしたい人や大規模な資金調達が必要な人は株式会社を選びましょう。
4. 出資者の責任範囲
出資者のリスクを抑えられるのは、株式会社と合同会社です。
この2つは、会社が倒産しても出資金以上の責任を負う心配はありません。一方、合資会社や合名会社は無限責任社員も構成員に含まれるので、負債を抱えた場合は個人資産を返済に充てる必要があります。
5. 知名度・信頼度
各会社形態のなかで、最も知名度が高いのは株式会社で、次いで合同会社となります。
会社形態の知名度が低いと、法人相手の取引(BtoB)で不利になったり、金融機関からの融資が受けにくくなる可能性があります。
法人や大手企業との取引を希望する場合は、株式会社を選んでおくと安心です。一般消費者相手(BtoC)取引が多い場合には、合同会社などを選択しても問題ありません。
まとめ
会社の形態には、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4種類があります。
株式会社以外の形態の会社は持分会社といい、会社の所有者(出資者)と経営者が同一なのが特徴です。株式会社は、出資者である株主が会社を所有し、株主によって選出された役員が会社を経営します。
法人化を検討する際は、設立費用や社会的信頼度、資金調達のしやすさ、リスク等を考慮して、自分の事業や目的にあった会社形態を選びましょう。
開業届を提出して起業している個人事業主やフリーランスの中には、事業拡大に向けて法人化を検討中の方もいるでしょう。この記事を法人化の参考にしてみてください。
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よくある質問
一番よい会社の形態は?
基本的には、有限責任でリスクが低い株式会社、または合同会社が選択されることがほとんどです。合同会社が設立可能になって以降、合資会社や合名会社を選択するメリットは少なくなりました。株式会社と合同会社のどちらが良いかは、目的や将来的な事業展開によって異なります。
会社形態を変更するには?
会社法で、会社形態の変更は認められています。最も多いのは、事業が安定した後に、合同会社から、株式会社に変更するパターンです。ただし内容によって手続き方法が異なり、場合によっては手続きが多く煩雑なケースもあるため注意しましょう。
- 持分会社→株式会社:組織変更
- 株式会社→持分会社:組織変更
- 持分会社→他の持分会社:定款変更
- 有限会社→株式会社または持分会社(逆は不可):商号変更
会社の4つの形態とは?
会社の形態には、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4種類があります。2006年の法律によって廃止された有限会社は、現在は新設できません。
文:Shigemi Saki