近年のネットメディアやSNSの普及に伴い、情報の拡散速度が高まる一方で、消費者の関心が移り変わるスピードも高速化しています。消費トレンドと消費者の動向においても同様の現象がみられることから、これらをいち早く知り、対応策を講じることが大切です。
この記事では、最新の日本の消費トレンドと消費動向を予測しました。2025年に流行るものや市場のトレンドを知り、ビジネスに活かしていきましょう。
2025年の消費トレンド予測7選

市場調査会社のユーロモニターインターナショナルの調査や、日経クロストレンドのトレンドマップ2025上半期などの情報をもとに、2025年の消費トレンドを7つ予測しました。
AIエージェントによる意思決定
AIエージェントの登場により、消費者が自ら情報を検索し意思決定する時代から、AIに頼った消費活動の時代にシフトしていくことが見込まれます。
AIエージェントとは、設定した目標や目的に対し、必要なデータを収集し、意思決定とタスク実行を行う技術のことです。従来、オンラインショッピングでは消費者が自らさまざまなサイトを訪問し、商品の価格や特徴を比較し判断する必要がありました。しかし、AIエージェントを活用すれば、AIが大量の商品情報を確認・比較し、消費者が求める商品を提案してくれるようになるため、意思決定がAIに委ねられることになります。日経ビジネスの記事では、個人向けAIエージェントの実用化に伴い、人々がAIの意見を参考に商品を買うようになると推測しています。
この動きはビジネスにも大きな影響を与えており、Digital Commerce 360の調査(英語)では、2025年にAIに投資する予定のないEC事業者はわずか11.11%であったほか、インドの調査会社Markets and Marketsは、AIエージェントの世界市場は2030年には471億ドルまで達すると予想しています。
今後AIエージェントは、消費活動において欠かせない存在になっていくことが推測されます。ECサイト運営者は、自社商品をAIに勧めてもらえるよう、AIを活用した新しいショッピング体験を実現する「エージェントコマース戦略」が必要となるでしょう。
顧客体験(CX)に対する価値の高まり
ECサイトや店舗訪問時から購入後に至るまで、優れた顧客体験(CX)に対する消費者のニーズはますます高まっています。
ユーロモニターインターナショナルの調査によると、2024年1~8月までの間で、32か国においてFMCG(日用消費財)カテゴリーで2万3000もの新商品がオンライン上で登場しました。このように膨大な情報や商品に溢れた現代では、「労力を最小限に抑えながら自分が必要とする商品を探したい」という消費者のニーズが高まっています。この傾向は購買行動にも表れており、同社の調査では、「ライブストリーミングを通じたオンラインショッピングの経験がある」と回答した人が42%にものぼり、その理由に「ライブストリーミングは商品・サービスの特徴が理解しやすいこと」を挙げています。このことからも、シームレスでストレスのない購買体験の需要がより一層高まっていることがわかります。
また、クアルトリクスの「2025年消費者トレンドレポート」からは、顧客がネガティブな体験をした場合、その企業に対する支出を減らす割合が2021年と比べて増加していることがわかります。
こうした背景から、今後も優れた顧客体験に重点を置いた消費活動が活発になっていくと考えられます。この動向を踏まえて、ECサイト運営者は、次のような点に注力することで、消費者の利便性を高め、自社サイトならではの体験を提供できるでしょう。
パーソナライゼーションとプライバシーの両立
「自分に合う商品・サービスを見つけたい」という消費者のニーズが高まっていることを受け、消費者一人ひとりの趣味や思考、価値観に合わせた体験を提供していく必要性も高まっています。それと同時に、企業のプライバシー保護の取り組みにも、注目が集まっているのが現状です。
パーソナライゼーションは、事業者が顧客それぞれの特徴や好みに合わせて商品やサービスを提供する手法で、消費者の購買意欲を引き出すために有効です。トレンドマップ2025上半期の経済インパクト・マーケティング分野では、パーソナライゼーションが「スコアを伸ばしたキーワードランキング」で1位を獲得しています。このことからも、企業や事業主が見込み顧客や新規顧客の獲得を目指す上で、従来のマスマーケティングから、個別のニーズに合わせたパーソナライズドマーケティングに移行していることがわかります。
一方で、パーソナライゼーションは個人情報やオンライン上の行動などのデータを活用するため、プライバシーへの懸念を抱く消費者も少なくありません。クアルトリクスの調査によると、「個人情報を収集した企業が、その情報を責任もって使用している」と答えた人はわずか16%にすぎず、消費者の不安が浮き彫りとなっています。
これらを踏まえ、個々の顧客に寄り添った体験を実現すると同時に、プライバシーポリシーを明確にし、透明性のあるデータ管理を徹底することが、今後より一層求められていくでしょう。
メリハリ消費の加速
近年の物価高騰に伴い、「メリハリ消費」を意識した購買行動は2025年も継続すると予想されます。
2024年度「国内消費者意識・購買行動調査」では、3割弱が「コストパフォーマンスを意識するようになった」や「節約と贅沢のメリハリをつけるようになった」と回答しており、高所得層においても節約傾向にあります。これは、物価高による節約志向が高まっていることに加えて、消費社会が成熟したことにより、動画・音楽配信サービスやファストファッションなど、低価格で高品質なサービスが広く普及したことが一因として考えられます。
こうした背景から、「推し活」などのこだわりを持つ分野に支出を回し、こだわりのない消費に関してはコストパフォーマンスを重視する傾向が今後も強まっていくと考えられます。
サステナブル消費への関心の高まり
エコフレンドリーやサステナブルなビジネスに対する消費者の関心は高く、環境に配慮した商品や長く使える商品、環境に配慮した取り組みを行っている企業が扱う商品が注目を集めています。
「サステナブル消費とライフスタイルに関する実態調査2024」によると、消費者の約半数がサステナブルな商品・サービスを定期的または不定期に利用していると回答し、そのうち、意識的にサステナブルな商品を購入している人は21.1%にのぼります。ただし、ユーロモニターインターナショナルの調査では、「価格帯が手頃であるか」が商品購入の意思決定において重要なポイントであることも判明しています。
EC事業者は、リサイクル素材の梱包材を利用したり、環境負荷の低い製造方法を採用したりといった取り組みで競合他社との差別化を図ることも可能でしょう。また、環境に配慮した商品を販売する際、商品がサステナビリティに優れているという点のほかに、商品そのものの価値や魅力も伝え、購買意欲を引き出すことが重要です。
SNSの活用
今後、商品の発見や購入に、SNSの活用がますます加速していくと予想されます。
現代人にとってSNSは、情報収集の主要な手段になっていると言えるでしょう。総務省の調査では、日本国内のSNS利用者数はゆるやかに増加を続け、2028年には1億1360万人に達すると予測されています。さらに、モバイル社会研究所の調査によると、SNSから生活情報を得ている人の割合は39.8%にのぼります。
また、アルティウスリンク株式会社の調査によると、「SNSが商品・サービスを知るきっかけとなる」と回答した人が全体の約45%にのぼり、特に若年層になるほどその傾向が顕著となっています。中でもインフルエンサーの投稿を参考にしている人は多く、THECOO株式会社の調査では、インフルエンサーの投稿を見て購入した経験のある10~30代は、約半数とされています。
EC事業の運営者は、SNS上で他のユーザーとのつながりやコンテンツ共有を通して商品やサービスを宣伝するソーシャルコマースを活用したり、インスタのショッピング機能やライブコマースなどを使ったりすることで、コンバージョン率を高められる可能性があります。
後払い決済サービス(BNPL)の拡大
矢野経済研究所の調査によると、2023年度の後払い決済サービスの国内市場規模は前年度比121.5%の1兆5317億円まで拡大したとされており、2028年度には2兆8000億円を超えると予測されています。
後払い決済サービスがスタートした当初は、クレジットカードを持たない若年層や主婦層を中心に利用者を増やしましたが、近年では、クレジットカード所有者の中でも利用が拡大しています。その背景には、さまざまなECサイトが登場している中で、初めて使うサイトではクレジットカードの利用に心理的な抵抗を感じるといった理由から、後払い決済サービスが選択されるようになってきたことが挙げられます。
後払い決済サービスは、商品を手にしてから支払いができる安心感がある、サービスによっては分割払いができるなど、消費者の利便性向上策としても適しています。
現在も市場が拡大している点を考えると、運営するECサイトに後払い決済サービスを導入することで、新規顧客の獲得や顧客体験の向上につなげることができるでしょう。
2025年の消費動向予測4選

2025年は節約や貯蓄に努める消費者が多い反面、特定の分野では消費活動が活発になると予測されます。企業の調査や消費トレンドを踏まえ、2025年に予測される消費動向を4つ紹介します。
1. 旅行
2025年にお金をかけたいこととして人気があるのは旅行です。博報堂生活総合研究所の調査では、2025年にお金をかけたいものとして「旅行」がトップにランクインしており、国民の意欲の高さがうかがえます。実際に、観光庁の統計によると、2025年1~3月の日本人の国内旅行消費額は5兆6483億円で前年比+15.5%を記録していることから、今後も消費意向が高まることが予想されます。
また、旅行への消費活動の高まりを受け、新幹線・旅客機の輸送量や、宿泊者数も堅調な伸びを見せています。大和総研が発表した消費データブックによると、2025年5月は東海道・三洋・九州新幹線で前年比+3~9%程度の伸び率を見せ、旅客機の国内線輸送量ではANAで前年比+5.8%、JALで+11.9%を記録しました。宿泊者数も2021年12月以降、伸び率が前年割れすることなく推移しています。
こうした動きは、新型コロナウイルスの感染症分類が5類に引き下げられたことに加え、近年の「モノ消費」から「コト消費・トキ消費」への消費行動の変化も影響していると考えられます。
2. 将来に向けた投資
2025年の日本では、将来に向けた投資に関する支出が増えると予想されます。
博報堂生活総合研究所の調査結果によると「2025年にお金をかけたいもの」の第6位に「株などの投資」、第8位に「老後の暮らしの準備」がランクインしています。さらに「2025年度に始めたいこと」では、第2位が「投資・資産運用」、第3位が「貯蓄」、第4位が「副業」、第6位が「資格や免許の取得」となっています。
このような背景を踏まえると、消費者は将来の安定性を求めていると考えられます。そのため、将来に向けて収入や資産を増やすための情報を提供できる商品やサービスの売り上げは増加するでしょう。たとえば、簡単に始められる副業や安全な投資先の選び方、資産運用の知識などについてまとめたコンテンツが挙げられます。
3. 健康
近年、健康に気を配る消費者が増えていることから、購買傾向として健康関連の消費が増加すると考えられます。
博報堂生活総合研究所が「2025年に始めたいこと」を調査した結果では、第1位が「運動・体操・筋トレ」、第7位が「ダイエット・食事制限」です。さらに「2025年にやめたいこと」の調査結果では、第3位に「食べ過ぎ・飲みすぎ」、第4位に「夜更かし」、第6位に「不規則な生活」がランクインしています。また、ユーロモニターインターナショナルによると、2025年には世界のスマートウェアラブル製品の総小売販売個数が約1億1700万にのぼると予想されているなど、健康関連商品に注目が集まっています。
このように、消費者は健康的なライフスタイルを求めているため、需要に応えるフィットネスやサプリメントなどの商品やサービスの人気が高まると予測されます。
4. 趣味や推し活
趣味や、アイドルや俳優などを応援する「推し活」は、近年、若年層を中心に消費を伸ばしています。特に推し活関連の消費活動は、ライブやコンサートへの参加だけでなく、グッズの購入や飲食サービスの利用など多岐にわたります。
株式会社ビデオリサーチの調査では、推し活をしている人の割合がZ世代(15~26歳)で62.1%、Y世代(27~42歳)で40.4%、X世代(43~58歳)で27.1%にのぼりました。このことから、推し活が趣味・娯楽として普及していることがうかがえます。また、Liume株式会社の調査では、推し活をしている人の月の支出は、10~30代のどの世代においても月約5,000円以下~3万円程度の支出が主流であり、中には10万円以上の費用をかけている人もいることが明らかになりました。
若年層を中心に、その場でしか体験できないことに消費をする「トキ消費」に意欲が高まっていることを考えると、趣味や推し活など、こだわりを持つ分野への消費活動が今後も拡大していくと予想されます。
まとめ
2025年の消費動向は物価高騰により節約志向が強まっていますが、将来に向けた投資や健康、食事など特定の分野では支出が増えると予測されます。なかでも楽しい経験や体験を得られる旅行への消費は増加する見込みです。また、貯蓄や投資関連の支出も、将来への不安から増加傾向にあります。趣味や推し活においては、「トキ消費」に対する消費意欲が高まってることを受け、今後も拡大していくでしょう。
ECサイト事業者やこれから参入を検討している方は、今回ご紹介した消費トレンドや消費動向を考慮したうえで、販売する商品やサービスの方向性を決めると売上が伸びやすくなるでしょう。
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消費トレンドと消費動向に関するよくある質問
2025年の消費トレンドは?
- AIエージェントによる意思決定
- 顧客体験(CX)に対する価値の高まり
- パーソナライゼーションとプライバシーの両立
- メリハリ消費の加速
- サステナブル消費への関心の高まり
- SNSの活用
- 後払い決済サービス(BNPL)の拡大
2040年度までの市場における消費トレンド予測は?
- ウェルネス市場
- フーディング市場
- 個人の拡張市場
- 自己表現市場
- 人生学習・メタワーク市場
- 新移民市場
- 超富裕層市場
- デジタルBOP市場
- 相互扶助・コモンズ市場
- マルチコミュニティー市場
- ネオモビリティー市場
- 個人リソースマネジメント市場
- 社会リソースマネジメント市場
- 都市OSデータ活用市場
- モノの統合サプライ市場
日経BPは、2040年までに上記15の市場が活発化すると予測しています。
2025年の世界の消費トレンドは?
- 健康寿命へのこだわり
- 賢い消費
- サステナブルな消費
- 選び抜かれた購買体験
- AI関連
これらの消費トレンドは、市場調査会社のユーロモニターインターナショナルの調査を元にしています。越境ECを行っている人や、参入予定の方はこれらの消費トレンドを念頭に置いてビジネスを展開すると良いでしょう。
文:Masumi Murakami