都市部への人口集中が問題となっている今、地方では、地域経済の縮小や雇用の減少、伝統産業の衰退といった問題が深刻化しています。そんな中、どうやって地域の人口減少を抑制し、コミュニティを守っていくかが大きな課題となっています。
地域の小さなお店で買い物をすることは、そのお店を支えるだけでなく、地域にお金を循環させ、新たな雇用を生み出し、地域全体を活性化することにつながります。さらに、環境負荷の少ない地産地消の仕組みが後押しできれば、持続可能な社会の実現にもつながります。
この記事では、地域ビジネスを支援する方法を紹介し、地域ビジネスで買い物をすることが、なぜ地域社会や未来の世代にとって重要なのかを解説します。
地域ビジネスを支援する7つの方法

1. 新しいお店を積極的に探す
自分の住む地域で、新しくできたお店を積極的に探してみましょう。
街を歩いていると、新しく開店した雑貨店や本屋、レストランなどに出会うことがあるかもしれません。新しくできたお店を見つけたら、積極的に試してみましょう。
お店を探す際には、Google(グーグル)のレビューや、近所の人の口コミも参考になります。また、Shopify(ショッピファイ)が提供しているモール型アプリの「Shop」を使うと、オンラインで購入した商品をまとめて管理できるだけでなく、地域のショップや注目のブランドを見つけることができます。
2. ギフトカードを購入する
お気に入りのお店を家族や友人に紹介するときは、ギフトカードが役に立ちます。
贈った人が試しにお店で使ってみて気に入れば、そのお店の新しい常連客になるかもしれません。また、今すぐ欲しいものがなくても、自分用にギフトカードを購入することでお店の支援ができます。
3. お気に入りのお店をSNSで紹介する
スモールビジネスは、大手企業と比べて広告にかけられる予算が限られているため、SNSや口コミでの紹介が非常に重要です。特に、ユーザーが自発的に発信するUGC(ユーザー生成コンテンツ)は、お店の信頼度向上や新規顧客の獲得につながる強力なマーケティング手法です。
気に入った商品を見つけたり、お店ですばらしい体験をしたりしたら、ぜひそれを周りの人に共有しましょう。レビューを書いたり、商品の開封動画を投稿したりするのもいいでしょう。そのお店を多くの人に知ってもらうきっかけになります。
4. ギフトは地域の小さなお店で買う
ギフトを贈るときは少し時間をかけて、地元の小さなお店で探してみるのはいかがでしょう。委託販売を活用している店舗では、地域のさまざまなクリエイターや生産者の商品が並ぶことが多く、個性的なギフトを見つけやすいという魅力もあります。
Amazonなどの大手ECサイトでは当日配送や翌日配送といった配送サービスが提供されていますが、その便利さの裏には物流コストの増加や、環境負荷の増大といった問題が隠れています。
地域のお店で購入することで、輸送距離の短縮や、配送コスト、二酸化炭素排出量の削減に貢献できます。環境にも地域経済にもプラスになります。
5. 価格に対する考え方を見直す
「小さな小売店で買うのは高くつくから損」という認識を持っているのなら、一度考え直してみるのもよいでしょう。
例えば、ファストファッションブランドではなく、地域の小さなアパレルブランドから服を買うと、価格が割高に感じられるかもしれません。しかし、価格が高いということは、それは余剰生産と廃棄を前提としたものではなく、持続可能な方法で作られたという証でもあります。服だけでなく、家具や雑貨も、ほんとうに気に入ったアイテムを購入して長く使えば、結果的には節約や環境保全につながります。
6. 副業で地域のビジネスをサポートする
副業を考えているなら、地域のビジネスに貢献できる仕事を探すのもいいでしょう。
最近では、リモートワークが広がっているため、その場所にいなくてもライティングやデザイン、マーケティングなどのスキルを活かして、地域のショップやブランドの運営をサポートすることが可能です。
また、オンラインで地域の特産品を販売するサービスを展開したり、地元の企業と協力して新しい商品を企画したりすることでも、地域のビジネスをサポートできます。自分のスキルを生かしながら、地域に貢献できます。
7. ふるさと納税をする
住んでいる自治体に本来納めるはずの税金の一部を自分で選んだ自治体に寄付することで、地域の生産者や事業者を応援しながら、お礼の品として特産品を受け取ることができるのがふるさと納税です。
近年ではクラウドファンディング型のふるさと納税も増えており、地域の新しいプロジェクトや伝統産業の復興をサポートすることも可能です。「地元を応援したい」「好きな地域の発展に貢献したい」という人には特におすすめです。
8. 地域のイベントに参加する
地域で開催されるクラフトフェアやマルシェには、その地域の事業者が多く参加しているため、イベントに参加するだけでも、地域ビジネスの支援になります。
地域のイベントは、単に買い物をする場ではなく、地域の事業者と直接交流し、ビジネスの背景やこだわりを知る機会にもなります。その場所で新しい発見や出会いが生まれる可能性もあります。
地域ビジネスを支援する5つの理由

1. 地域経済の活性化に寄与できる
ある小規模企業が成功を遂げると、それに伴い地域にある他の事業者も潤い、地域経済全体が活性化されます。
例えば、ある地域のレストランが繁盛するようになると、食材を提供する、その地域の農家や漁業者のもとにもお金が流れます。 さらに、そのレストランが地域のデザイン会社にメニューの作成を依頼したり、地域の印刷会社に広告を発注したりすることで、地域内の多様な事業者にも恩恵がもたらされます。
このように、小さなビジネスを支援することは、地域経済全体の発展を促すことにつながるのです。
2. 地域コミュニティの発展と雇用創出に貢献できる
地域の小さいビジネスを支援してその企業が新たな雇用を生み出せるようになると、地域コミュニティの発展が促されます。特に地方では、大企業の工場撤退や人口減少による雇用機会の減少が問題になっています。そうした中で、地域の小さなビジネスが新たな働き口を提供することは、大きな意味があります。
地域において小さなビジネスが増えることで、その場所における特色や個性が強まり、観光客を引き付ける魅力が生じます。たとえば、個性的なカフェや雑貨店が集まるエリアがあると、そこを訪れる人が増え、飲食・宿泊・観光業など周辺のビジネスも活性化します。
さらに、小規模ビジネスが増える環境は、若者や起業を目指す人の目にも魅力的に映るでしょう。地域で新しいビジネスを始めやすい環境が整えば、その場所での起業が増え、次世代のビジネスリーダーが育ちやすくなります。
3. サステナブルな商品を入手しやすくなる
地域で作られた野菜や食品、工芸品をその地域で購入すれば、生産地の近くで消費することになり、輸送に伴うエネルギー消費やCO2の排出の削減に貢献できます。また、地域に根ざす企業は、環境に配慮した商品を積極的に販売することも多いため、こうした企業で購入することでサステナブルな商品を入手しやすくなります。
プラスチックフリーの雑貨、リサイクル素材を活用した商品など、地域ビジネスからサステナブルな商品が次々と誕生しています。
4. 豊かな顧客体験を得られる
スモールビジネスは、規模が小さく顧客との距離が近いため、画一的ではない豊かな顧客体験を得られます。
全国展開しているチェーン店はどこでも同じ品質のサービスを受けられるのが特徴ですが、スモールビジネスでは経営者や店員の裁量が大きくなるため、より個性豊かで、有機的なサービスが提供されています。
例えば、個人経営のカフェでは、オーナーがコーヒーを淹れ、直接接客してくれることも少なくありません。コミュニケーションがはずみ、カフェの常連になり、その場所が自分の居場所になれば、ただコーヒーを飲むというだけではない、豊かな時間を過ごすことができます。
また、個人のハンドメイドブランドで買い物をすると、作り手のこだわりや制作の背景について直接話を聞けることがあります。どんな素材を選び、どんな想いで商品を作ったのかをオーナー自身に説明してもらうことができたら、ただ商品を購入するだけでなく、その作品が生まれる過程や作り手の情熱を感じ取ることができるでしょう。
5. 多様でニッチな市場を支えられる
地域のスモールビジネスへの支援は、多様でニッチな市場を支えることにもつながっています。
大手ブランドは、多くの人に受け入れられる商品を作る必要があるため、個々のニーズに寄り添った商品が少ない傾向にありますが、ビジネスの規模が小さいと自由度が高くなるため、柔軟な発想で特定のターゲットに向けた商品やサービスを展開しているところが多いです。スモールビジネスを支援することで、大手ブランドでは手に入りにくい、個性的で自分に合った商品を見つけることができます。
例えば、特定の肌色に合うコスメや、障がいを持つ人向けのアパレルなど、大企業では見落とされがちなニーズに応えるブランドは、スモールビジネスに多いです。
ニッチな需要に応えるビジネスを支援することで、市場の多様性を保つことに貢献できます。
カテゴリ別ショッピングガイド

地域に根付いたビジネスを展開しているブランドや、地域の特産品を扱うショップを紹介します。ショッピングの参考にしてください。
1. 食品
- 飯坂富士商店:北海道小樽市の海産物問屋です。数の子、蟹、いくらなど、北海道の名産が人気です。
- シオクリビト:福島県商工会連合会が運営する、福島の食品の通販サイトです。
- 新田醸造:長野県埴科郡坂城町にある江戸末期に創業された味噌蔵です。木桶で1年熟成された「信州白樺印みそ」が人気です。
- オブセ牛乳:長野県の小布施町で牛乳のほか、ヨーグルトやお菓子などを販売しています。
- 山本海産物:長崎県にある五島列島の南部、福江島にある海産物店です。海産物、珍味、かわきものをはじめ、五島名物「五島うどん」なども販売しています。
- 竹川ファーム:淡路島のお米、玉ねぎを産地直送で販売しています。
- Deer’s Kitchen(ディアーズキッチン):奈良県生駒市にあるパン屋。オンラインショップでは冷凍パンを販売しています。
2. 飲料
- 川越角屋酒店:埼玉県川越市に1877年からある酒屋です。ワインに力をいれており、その品揃えは目を見張るものがあります。ソムリエが選定したワインを定期的に送ってもらえる「ソムリエにおまかせ定期便」のような特徴的なサービスも提供しています。
- みずたま農園製茶場:静岡県牧之原市で栽培・製茶・包装の一貫製造を行っています。
- ベリービーズワイナリー:長野県塩尻市にあるワイナリーが運営する、ワインの直産サイトです。ワイン用のブドウは循環型農業で生産されています。
- ELMERS GREEN(エルマーズグリーン):大阪の北浜からはじまったコーヒー店です。
3. ホーム・オフィス
- WAAK°(ワアク):日本最大の家具産地である福岡県大川市で生まれた、在宅ワークのためのデスクブランドです。
- ハートウエル:愛媛県今治市にある創業90年の老舗タオルメーカーです。中でもフィンランド観光局監修のサウナハットが人気です。
- 洛中高岡屋:創業100年を超える、京都の布団や座布団のブランドです。
- Studio1156 (スタジオイイコロ) :福岡の春吉地区に店舗を構え、有田焼、伊万里焼、波佐見焼、唐津焼を販売している食器専門店です。
4. アパレル・雑貨
- 帽子工房ikhtiart(イフティアート):兵庫県相生市の工房で職人により一つひとつ作られた帽子を販売する帽子屋です。
- GMA:愛知県で誕生したレインウェアブランドです。幅広いサイズ展開をしているところが特徴です。
5. ビューティー・スキンケア
- マイスター:北海道遠軽町で、地元で採れたはちみつや野菜を使ったスキンケア製品を製造販売している化粧品メーカーです。
- 木村石鹸:大阪府八尾で100年続く石鹸ブランドです。石鹸は職人が一つひとつ釜焚き製法で作っています。
6. 花
- WABARA(ワバラ):琵琶湖のほとりにあるバラ園。ブーケやフラワーボックス、定期便などを扱っています。
- 土と風の植物園:岡山県倉敷市を拠点とするドライフラワーやスワッグの専門店です。
- LIFFT(リフト):卸売業者を介さずに、さまざまな地域の農家と提携し、産地直送で花を販売しているサービスです。花の廃棄ロスの削減に取り組んでいます。
7. ペット用品
- ぽぽねこ:猫が好きなご夫婦が立ち上げた、茨木県にある猫用品専門店です。「猫ファースト」なモノづくりを特徴としています。
- DOGBASE YOKOHAMA(ドッグベース・ヨコハマ):横浜元町の中華街で、犬服のオーダーメイドを受けることからスタートしたドッグウェア専門店です。
- WAN-DELI-TOKYO(ワンデリトーキョー):獣医師監修のもと作られた犬のフレッシュフード専門店です。
8. 伝統工芸品
- BECOS(ベコス):都道府県別に伝統工芸品を探し、購入できるサイトです。
- 日本工芸堂:日本各地の伝統工芸品を購入できるサイトです。ギフト向けの商品が充実しています。
まとめ
地域ビジネスへの支援はまちやコミュニティを守ることであり、ひいては社会貢献になります。
地域のお店で商品を買う人が増えれば、地域経済が活性化し、雇用が生まれ、コミュニティが盛り上がり、そこに住む人にとっても、そこを訪れる人にとっても、より豊かで魅力的な環境を形成していくことができます。さらに、個性豊かなスモールビジネスを支援することで、持続可能な消費の促進や、多様性の確保にも貢献できます。
一人ひとりの選択が、地域の未来を左右します。新しいお店を見つけて応援する、ギフトカードを購入する、SNSでシェアする、副業を通じてサポートするなど、それぞれができる方法で地域ビジネスを支援して、地域の未来をともに支えましょう。
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よくある質問
地域ビジネスを支援する方法は?
- 新しいお店を積極的に探す
- ギフトカードを購入する
- お気に入りのお店をSNSで紹介する
- ギフトは地域の小さなお店で買う
- 価格に対する考え方を見直す
- 副業で地域のビジネスをサポートする
- ふるさと納税をする
- 地域のイベントに参加する
地域ビジネスの探し方とは?
- 街を歩く
- Googleマップやレビューサイトを見る
- SNSで検索する
- Shopアプリを使う
- 地域で開催されているマルシェやイベントに参加する
地域ビジネスを支援するメリットは?
- 特定のニーズに対応した商品や、個性的で高品質な商品を入手しやすくなる
- パーソナルな顧客体験を得られる
- 地産地消に貢献できる
- 地域経済の活性化や新たなビジネスの創出に貢献できる
- 雇用の創出や、観光・移住の促進に貢献できる
- 物流コストとCO2排出の削減に貢献できる
文:Taeko Adachi イラスト:Isabella Fassler