近年、後払い決済サービスを導入するネットショップや店舗が増えています。手持ちのお金がないときや、商品を確認してから支払いを行いたい場合などにも、安心して買い物を楽しめるようになる便利なサービスです。矢野経済研究所のEC決済サービス市場に関する調査(2024年)によると、2019年度から後払い決済サービスの取扱金額は増加傾向にあり、2026年度には日本国内でも2兆円の水準にまで拡大すると予想されています。
この記事では、後払い決済サービスとは何かをおすすめの後払い決済サービス7つや導入の際に注意したいポイントとともに解説します。
後払い決済サービスとは
後払い決済サービスとは、商品を購入後、商品の確認をしてから代金を支払うことができる決済方法です。このサービスは、「Buy Now Pay Later(今買って後で払う)」の頭文字を取ってBNPLとも呼ばれます。
後払いの決済方法はコンビニや郵便局、銀行での支払いが主流ですが、キャリア決済やLINE Payなどのスマホ決済に対応しているサービスもあります。初めて利用するECサイトでのクレジットカード情報入力に不安を覚えるユーザーや、好きなタイミングで支払いを行いたいユーザーも抵抗感なく利用できるため、売り上げの増加や顧客満足度の向上につながります。
またm。分割払いができる後払い決済サービスもあり、特に高額決済の際に活用されています。
後払い決済サービス7つ
- NP後払い
- atone
- 後払い(ペイデイ)
- KOMOJU
- SBペイメントサービス
- GMOイプシロン
- PayPayクレジット
1. NP後払い
NP後払いは、導入店舗数20.3万店舗(2023年3月時点)と多くの事業者に利用されている後払い決済サービスです。コンビニ、郵便局、銀行、LINE Payでの支払いに対応しており、購入者は請求書発行後14日以内に好きなタイミングで支払いができます。会員登録なしでも利用できますが、後払い決済では珍しく、商品交換や懸賞の応募に使えるポイントが貯まる会員向けサービスも提供しています。また、与信審査は通過率95%と高いため販売機会を逃しにくく、利用料が顧客請求額に応じる月額固定費0円のプランも用意されています。
メリット
- 利用者が多い
- 導入店舗数が多い
- 月額固定費0円から始められる
2. atone(アトネ)
atone翌月払いは、ユーザーが商品を購入した翌月に一括で支払いができる後払いサービスです。請求金額と支払い期限は、商品を購入した翌月1日~3日の間にメールとSMSで通知されます。利用者は携帯電話の番号とメールアドレスだけで利用登録を行うことができ、支払いはコンビニか銀行ATM、口座振替のいずれかを選べます。導入したショップ向けには、メールマガジンやポイントアップキャンペーンなどを通じた販促・マーケティングサービスも提供しています。
メリット
- 利用者向けメールマガジンやアプリ通知でネットショップの告知ができる
- 販促サイト「atone shops」に無料で掲載することができる
- 実店舗でスマホ決済を導入できる
3. あと払い(ペイディ)
あと払い(ペイディ)は、コンビニや銀行振り込み、口座振替などの後払いができるだけではなく、希望する人はすぐに支払いを済ませることもできます。また分割後払いにも対応しているため、一括払いを躊躇していたユーザーからの購入が期待できます。ショップでは、初期費用や月額使用料が不要で、決済手数料のみで導入することができます。また、売上金は100%入金保証を行っているため、未払いなどのリスクを負うことなく導入が可能です。
メリット
- 売上金100%入金保証がある
- 初期費用や月額使用料がない
- 利用している事業者が多い
4. KOMOJU(コモジュ)
KOMOJUは、数多くの決済方法に対応している決済サービスで、後払い決済は銀行振り込みやコンビニ決済のほか、携帯キャリア決済にも対応しています。後払い決済だけではなく、クレジットカード決済などもまとめて管理できることから、10,000店舗以上のEC事業者が導入している決済サービスです。
メリット
- 初期費用と月額費用が無料
- 売上金を毎週受け取ることができる
- 申し込み後最短で即日から利用可能
- 利用できる決済方法が多い
5. SBペイメントサービス
SBペイメントサービスは、コンビニ決済や携帯キャリア決済にも対応した決済サービスです。決済手段が豊富に用意されているため、後払い希望の幅広いニーズに応えることができ、購入機会損失を防ぐことにもつながります。ソフトバンクグループの決済代行会社で、高度なセキュリティ対策を行っているため安心して利用ができます。
メリット
- 取引がキャンセルになった場合のキャンセル手数料が発生しない
- セキュリティ対策がしっかりしている
- 利用できる決済方法が多い
6. GMOイプシロン
GMOイプシロンは、Shopifyペイメントと併用して多様な決済方法を提案できるサービスです。コンビニ支払いや銀行振り込み、携帯キャリア決済などの後払いができるほか、GMO後払い決済サービスを利用することができます。この後払い決済サービスは、請求書発行と代金回収を行ってくれるサービスで、未回収分の料金はGMOペイメントサービスが負担してくれるため、支払状況に関わらず入金が行なわれます。GMO後払いを利用すると、コンビニや銀行、LINE Payから支払うことが可能です。
メリット
- 未回収売り上げを負担してくれる
- GMO後払いは月額費用がかからない
- 決済ステータス連携アプリをShopifyと連携させられる
7. PayPayクレジット
PayPayクレジットは、当月に利用した金額を、翌月にまとめて支払うことができるサービスです。モバイル決済の中でも知名度の高いPayPayは、事前の残高チャージを行うことなく後払い決済ができ、翌月1回払いを利用すれば支払い手数料が発生しないという特徴があります。年会費もかからず、ポイントも貯まることから、多くのユーザーに人気の決済方法の一つです。ショップ側では、PayPayを導入することで自動的に後払い決済に対応することができます。
メリット
- 利用者が多い
- PayPay決済の導入で購入者が選択できるようになる
後払い決済サービスを導入するメリット
カゴ落ち防止につながる
後払い決済サービスを導入することで、購入者は支払い方法の選択肢が広がり、カゴ落ちを防ぐことにつながります。カゴ落ちが起こる原因の一つに使用したい決済方法がないことが挙げられますが、利用者の多い後払い決済サービスを導入することで、コンビニでの支払いや銀行振り込みなど複数の支払方法に対応することができます。また、商品の代金が高額な場合に、分割払いができる後払い決済を提案することで購入を後押しすることができます。
未回収リスク防止につながる
後払い決済サービスを提供する機関が代金を立て替えて支払ってくれるため、購入者からの代金未回収のリスクを防げます。自社へ直接入金される振込やコンビニ決済では購入者からの支払いを待つ必要があり、代金が未回収となるリスクもあります。後払い決済サービスを利用すればこうしたリスクを防げるだけではなく、代金が支払われない場合の督促などの手間もかかりません。
業務負担が少ない
後払い決済サービスを利用すると、請求書発行や入金管理、督促などの業務が不要になります。Shopify上でも後払い決済の設定をすることが可能ですが、自社で行う場合には前述のような業務が発生します。
後払い決済サービスを選ぶときに確認するポイント
利用料金
後払い決済サービスを利用する際に必要となる主な料金には、以下のようなものがあります。
- 初期費用:ショップのカートや決済システムとの連携などにかかる費用
- 月額固定費:決済額に関わらず、サービス利用のために毎月支払う料金
- 決済手数料:取引額に対してかかる手数料
- 請求書発行料金:取引1件ごとの請求書発行にかかる手数料
- 郵便料金:請求書や払い込み用紙などを郵送する際にかかる料金
利用するサービスによって、初期費用や月額固定費を必要としないサービスもありますが、決済手数料の割合が高くなることが考えられます。事業の規模や後払い決済の利用者数などを考慮して、適切な利用料金であるかを確認する必要があるでしょう。導入直後は後払い決済の利用者数が予測しにくい場合も考えられるため、初期費用や月額固定費の少ないサービスから導入し、その後利用者数に合わせて決済サービスを変更することも検討してみてください。
与信枠の上限
与信枠とは、後払い決済で支払える利用限度額のことで、商品の金額が与信枠より高い場合には購入者が、顧客は後払い決済をが利用できません。利用する決済サービスによって与信枠の上限が異なることから、与信枠が自社で取り扱う商品の価格を上回っているものを選ぶと良いでしょう。
入金のタイミング
後払い決済で売れた商品代金が入金されるタイミングを確認し、自社のキャッシュフローに適しているかを確認します。後払い決済で商品が販売された場合、料金は決済サービスを提供する企業から入金されます。利用するサービスによって、15日までの売り上げ分を末日に入金する、月末までの売り上げ分を翌月末日までに入金する、など入金のタイミングが異なります。
導入実績や利用者数
ウェブサイトなどで後払い決済サービスの導入実績や利用者数を確認します。EC事業者による導入実績の多い決済サービスは、信頼性が高い場合が多く、また与信審査の精度も高い傾向にあるため、安心して利用できるサービスと言えるでしょう。利用者数が多い決済サービスは顧客に人気のある支払い方法であると言えるため、顧客の囲い込みにも有効です。また、ウェブサイトでは導入例なども公開しているケースがあるため、自社サービスと似たビジネスモデルや規模のEC事業者が多いかどうかも指標の一つとなります。
自社ショップとの連携のしやすさ
後払い決済サービスを自社のショップで連携ができるかどうか、また連携方法は簡単かどうかを確認します。現在使用しているサービスによっては、後払い決済サービスとの連携ができない可能性があり、また連携ができたとしても技術者に依頼しなければ導入できず、連携のための予算を割く必要が出てくる可能性があります。ShopifyでECサイトを運営している場合は、数あるShopifyの決済方法を利用できるだけではなく、簡単な手続きだけで連携ができる後払い決済サービスも豊富にそろえられています。
まとめ
後払い決済サービスは、今後も需要が高まることが予想されている支払い方法の一つです。商品を確認してから代金を支払うことができるため、購入者は安心して注文ができるというメリットがあり、顧客満足度向上にもつながります。また、審査が簡単で、クレジットカードを持たないユーザー層や、クレジットカード情報入力に抵抗感がある人も安心してネットショッピングを楽しめるようになります。高額商品などを扱うネットショップの場合、分割払いができる後払い決済サービスを導入することでカゴ落ちを防ぐなどの効果も期待できます。
Shopifyでは、「NP後払い」や「atone」、「あと払い(ペイディ)」など豊富な後払い決済サービスのなかから自社サービスに合ったものを選んで導入することができます。管理画面の設定から決済方法を追加したり、アプリを追加したりして簡単に導入ができます。後払いサービスの導入を検討している方は、ぜひ今回の記事を参考に、自社に合った後払い決済サービスを見つけてみてください。
後払い決済サービスに関するよくある質問
日本後払い決済サービス協会とは?
日本後払い決済サービス協会とは、後払い決済サービスの利用者の消費生活の向上と利便に貢献することを目的として設立された協会です。後払い決済サービスに関する取引の公正化と、取引に携わる関係事業者の適切な運営の確保を目指しており、利用者が安心して取引を行える環境実現を目標としています。
後払い決済サービスを導入するメリットは?
後払い決済サービスを導入すると、カゴ落ちや未回収リスクの防止、業務負担の軽減と言ったメリットが得られます。消費者にとっては、手元に商品が届いてから安心に支払いができるため、顧客満足度向上にも効果的です。また、分割払いにも対応している場合、高額な商品への購入ハードルが低くなることから、アップセルにつながることもあります。
Shopifyで使える後払い決済サービスは?
- NP後払い
- atone(アトネ)
- あと払い(ペイディ)
- KOMOJU(コモジュ)
- SBペイメントサービス
- GMOイプシロン
- PayPay(ペイペイ)クレジット
後払い決済サービスを導入することによる顧客のメリットは?
- 支払いの選択肢が増える
- クレジットカードがなくても購入できる
- 簡単に手続きができる
- サービスによっては分割払いができる
- 商品を手にしてから支払いができる
- クレジットカード情報を入力せずに済む