スモールビジネスは、自分一人で、あるいは少ない人数で始められるため機動力が高く、自由に運営できるのが魅力です。成功のためには、限られた予算や時間を最大限に活用するための効果的な戦略が求められます。この記事では、スモールビジネスを始めるメリットや成功事例に加え、具体的な始め方と成功のためのポイントについて解説します。
スモールビジネスとは
スモールビジネスとは、一人または少人数で運営されるビジネスのことで、一般的な中小企業よりもさらに小規模な事業を指し、小規模法人に加え個人事業主やフリーランスも含みます。起業と聞くと、大きな資金や店舗契約が必要だと思われがちですが、スモールビジネスであれば、個人または数人で、最小限のコストと設備でスタートすることが可能です。意思決定に関わる人数が少ないため、機動力が高く、スピーディーに事業を進められる点も大きな魅力です。
スモールビジネスで開業するメリット

1. 初期費用を抑えやすい
業種にもよりますが、一般的にスモールビジネスでは初期費用を抑えることが可能です。
たとえば、コンサルタント、士業、ライター、デザイナーなどの業種で、スモールビジネスとして開業する場合、パソコンや机など最低限の設備があれば自宅でも開業できるため、創業時のコストを低く抑えられます。
また、経理やマーケティングなどに役立つオンラインツールやクラウドサービスの多くは、利用人数や使用頻度が少ない場合、無料もしくは非常に低価格で提供されています。このため、スモールビジネスでは運営にかかる費用も抑えて事業をスタートさせることが可能です。
2. 裁量が大きく、意思決定が速い
スモールビジネスでは人数が少ない分、一人ひとりの権限や裁量が大きくなります。そのため、大企業では時間がかかるような意思決定も、スピーディーに行うことが可能です。担当者が自らの判断で顧客対応や企画などの方針を柔軟に進められる点は、スモールビジネスならではの強みです。
また、承認フローが不要、または少ないため、環境変化への対応が迅速に行えます。市場動向や顧客の反応を受けてすぐに方針転換することで、ビジネスチャンスを逃すことなく競争力を維持できます。顧客の声を商品づくりにすぐ反映させられるため、顧客満足度の向上にもつながります。
3. リスクを管理しやすい
スモールビジネスの場合、売り上げが思うように伸びなかったり、利益が出なかったりする場合でも、投資規模が小さいため損失を最小限に抑えやすく、新たな戦略への切り替えも柔軟に行えます。
また、信用リスク、コンプライアンスリスク、セキュリティリスクなど、さまざまな事業リスクに対しても、経営者自身が細部まで目を配ることが可能です。
4. ニッチな市場でも成り立つ
スモールビジネスの大きな利点は、規模の小さなニッチ市場でも十分に成立する点です。1人または少人数で運営する場合、大企業のように高い年商が得られなくても採算がとれることが多いでしょう。そのため、見込み客が少ない市場であっても、ビジネスとして成り立つ可能性があります。むしろ、大企業との競争を避けるという点でも、積極的にニッチ市場を狙う戦略が有効だといえるでしょう。
スモールビジネスで起業するデメリット

1. 社会的な信用を得にくい
スモールビジネスは個人や少人数での運営が多く、大規模組織と比べて社会的信用度が低く見られることがあります。規模の小ささに加え、知名度や市場での存在感が十分でないことや、公開できる顧客事例が少なくなりがちなことも、信用を得にくい要因のひとつです。そのため、金融機関からの融資審査で不利になる、取引先からの信頼を得にくいといったケースが考えられます。
2. 業務が属人的になりやすい
少人数での運営では、業務が特定の人に集中しやすく、事業全体が個人のスキルや体調に依存する傾向があります。ひとりが対応できる仕事量には限りがあり、成長や拡大が難しくなることもあります。事業を継続的に発展させるためには、仕組み化や他社への業務移管が重要となります。
3. 人手が不足しやすい
スモールビジネスでは、働き手が一時的に欠けた際、業務に大きな影響が及び、病気や私用で一人が休むだけでも運営が困難になることがあります。また、担当業務が広範囲に及ぶため、長時間労働になりやすく、休暇を取りにくい傾向があります。トラブル対応の余力も少なく、急な問題が発生した際に対応が遅れるリスクも伴います。
4. 事業の拡大に壁がある
個人や少人数の体制では、対応できる仕事量や分野に制約が生まれやすく、大規模な事業展開や広告戦略をとるには資金力やリソースが不足しがちです。また、スキルアップや人脈拡大の機会が少なく、ビジネスの成長が停滞しやすいという課題もあります。長期的な発展を目指すには、戦略的な外部連携や資金調達の工夫が必要です。
スモールビジネスの始め方
1. 参入する分野を選ぶ
最初に、どの業界でビジネスを行うか、具体的な分野を選定します。スモールビジネスで成功するには、自分の興味・趣味・経験・専門知識などを活かせる分野を選ぶのが重要です。また、問題解決や社会貢献といった明確な目的意識を持って事業を始めることで、困難に直面したときでも高いモチベーションを維持しやすくなります。
2. 事業計画を立てる
次に、事業の目的や、提供する商品・サービスの特徴や強み、対象とする市場など、事業の全体像を整理しましょう。そのうえで、事業のスタートに必要なものを具体的にリストアップし、資金計画や収支の見通しを含めた事業計画書を作成します。
3. 資金を準備する
事業を始めるには、まず最低限の資金を用意する必要があります。
事業計画書をもとに、自己資金のほか、ローン、投資家からの出資、クラウドファンディングなど、さまざまな方法を活用して必要な資金を確保しましょう。
4. 会社形態を選択し、開業手続きを行う
ビジネスの目的や規模に応じて、適切な会社形態を選択し、それぞれの形態に合った手続きを行います。
複雑な手続きを避け、初期費用を抑えたい場合は、個人事業主としての開業がおすすめです。開業届を提出するだけで、スムーズに事業を始めることができます。経営が軌道に乗るまでは、副業として事業を展開することも一つの選択肢です。
一方、すぐに資金調達が必要なケースや、ある程度の売り上げが見込める場合には、融資を受けやすく社会的信用も得やすい「法人」としての設立を検討するとよいでしょう。
5. ブランドの設計とウェブサイトの開設を行う
提供する製品やサービスの特徴をもとにブランド名やロゴを決め、ホームページやECサイトを用意します。同時に、SNSのアカウントも必要に応じて開設しておきましょう。
6. 受注を開始する
商品を販売する準備が整ったら、いよいよ受注を開始します。
最初は思うように受注できないこともありますが、その場合は商品の内容や販売経路について見直すようにしてみましょう。積極的に新しい方法に挑戦しながら、事業を前向きに展開していきましょう。
スモールビジネスの成功例
フローフルワークス株式会社
次世代型ルアー(釣り具)の開発・販売を手がけるフローフルワークス株式会社は、ルアーの装着方法に革新をもたらす独自技術を開発し、日本をはじめ米国、オーストラリア、韓国、中国など世界各国で高い評価を受けています。2023年に創業したスモールビジネスながら着実に成長を続けており、「未来のものづくりベンチャー発掘コンテスト2024」では、代表取締役の星野創一郎氏が「採択者」に選出されるなど、その技術力と将来性に注目が集まっています。
株式会社クリスタルロード(感覚過敏研究所)
現役中学生が母親とともに立ち上げた株式会社クリスタルロード(感覚過敏研究所)は、感覚過敏を専門に扱う国内唯一の団体として、さまざまなメディアで取り上げられています。代表者自身が感覚過敏の当事者であり、同じ困難を抱える人々の役に立ちたいという思いから事業を開始しました。同社は、感覚過敏マークの開発や、感覚過敏の方向けアパレルブランド「KANKAKU FACTORY」の展開、コミュニティの運営など、多岐にわたる活動を行っています。
wavelogy株式会社
AIによる音響解析技術で漏水音などの異常音を検知するソリューションを提供するwevelogy株式会社は、2022年に創業したばかりの若い企業ながら、長崎市や宇都宮市の上下水道局と連携して漏水音のAI診断システムの実証実験を行うなど、その技術力がすでに評価されています。代表者は、音響解析を活用して社会インフラの維持管理を効率化したいとの思いから、高等専門学校の在籍時に起業しました。
スモールビジネスに適したアイデア一覧

- ハンドメイド作品の販売
- 手作り菓子や軽食の販売
- イラストや絵の販売
- 写真の販売
- 記事執筆
- 翻訳・通訳
- 動画制作
- 漫画の販売
- ウェブデザイン・バナー制作
- 音声・ナレーション収録
- オンライン講座の開設
- コンサルティング
- SNS運用代行
- ブログ・アフィリエイト運営
- データ入力・事務サポート
- 家事代行サービス
- オンライン秘書・アシスタント
- 地元の観光ガイド
スモールビジネスを成功させるコツ
1. ターゲット層を絞る
スモールビジネスでは人手や資金に限りがあるため、幅広い市場を狙うよりも、特定のニッチに絞った戦略が有効です。ターゲットが明確であれば、商品開発やプロモーションの方向性も定まり、成果が出やすくなります。たとえばアパレルブランドなら、どのような年代や性別、体型、使用シーンをターゲットとするか細かく決め、こうしたターゲット層に合う商品展開をするようにしましょう。ニッチ市場を探る際は、Googleトレンドなどを活用し、実際の検索ボリュームを把握するのも効果的です。
2. ブランドを構築する
大企業に比べて知名度が低いスモールビジネスでは、独自のブランドを築くことが差別化の武器になります。ブランド名やロゴ、キャッチコピーのほか、提供する価値や世界観を明文化し、ユーザーに一貫した印象を与えることが重要です。
まずはブランドの使命や顧客への約束を明確にし、デザイン・言葉・サービスすべてにその軸を反映させましょう。Shopify(ショッピファイ)のAIビジネス名ジェネレーターやロゴメーカーを活用するのもおすすめです。
3. 経費を削減する
限られた資金でスタートするスモールビジネスでは、無駄な出費を防ぐ工夫が欠かせません。まずはサブスクリプションや月ごとの固定費を洗い出し、不要なものがあれば、契約を解除するようにします。また、中古機器を導入する、シェアオフィスに移転するなどの工夫ができないか検討してみましょう。小さな節約を積み重ねることで、資金繰りが安定しやすくなります。
4. マーケティングトレンドを把握する
大規模な広告展開が難しいスモールビジネスにとっては、今どのようなマーケティング手法が効果を上げているのかを知り、適切に取り入れることが重要です。SNSや音声配信など、コストを抑えながら発信できる手段が年々増えています。有名マーケターのSNS投稿をチェックしたり、関連するセミナーに参加したりすることで、実践的な知見を得ることができるでしょう。また、展示会やイベントなどに参加し、自社の業界に強い感性を持つプロから学ぶことも役立ちます。
5. コンテンツをつくる
スモールビジネスでは広告費に多くの予算を割けないため、自社でコンテンツを作成し、それを活用して認知度を高める方法が効果的です。ブログ記事や動画、SNS投稿を通じて商品やブランドの魅力を継続的に発信しましょう。商品の使い方、顧客の声、制作の裏話など、身近な素材が価値あるコンテンツになります。内容にバリエーションを持たせることで、飽きさせずにリピーターの関心を維持できます。イラスト、写真、漫画、音声など、多様な表現形式を使い分けるのもポイントです。
6. 単純作業を自動化する
少人数で運営するスモールビジネスでは、時間を効率的に使うことが重要です。特に繰り返し発生する事務作業は、自動化することで大きな負担軽減につながります。たとえば会計処理の際、OCR機能を搭載したスマホアプリでレシートを撮影すれば、手入力の手間を省けます。また、Trelloなどのプロジェクト管理ツールを活用すれば、タスクの進行状況を可視化し、チーム内での連携もスムーズになります。単純作業の自動化によって、創造的な業務に集中できる時間を生み出しましょう。
スモールビジネス向けの支援制度を利用する
スモールビジネスを支援するために、国や地方自治体ではさまざまな制度を用意しています。
多くの制度が存在する中から、代表的なものをいくつかご紹介します。なお、支援内容や適用条件などは随時変更される可能性があるため、ご利用の際は必ず最新の情報をご確認ください。
小規模事業者持続化補助金
持続化補助金とは、小規模事業者が制度変更等(※)への対応を目的とした経営計画を作成した場合に、その計画に基づく活動の一部を補助する仕組みです。
※制度変更等の例:働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃金引上げ、インボイス導入、等
小規模企業共済
小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。国の機関である中小機構が運営しています。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
中小企業や小規模事業者が新しく革新的な製品やサービスを開発したり、生産方法を改善したりするために必要な設備投資にかかる費用の一部を補助する制度です。
ミラサポplus(中小企業・小規模事業者向け補助金・総合支援サイト)
中小企業・小規模事業者向けの補助金・支援策情報や、経営相談、専門家派遣などの支援情報を提供するポータルサイトです。
まとめ
スモールビジネスは、経済的な利益を得ながら自己実現もかなえる手段として非常に魅力的といえます。本記事では、スモールビジネスを始めることのメリットや、事業を成功へ導くための具体的なポイントを詳しくご紹介しました。一見するとハードルが高そうな開業や設立も、各種支援ツールや制度を活用すれば、低コストかつ効率的に進めることが可能です。
製品やサービスの準備が整った段階で、Shopifyのネットショップ作成サービスを活用すれば、販売やプロモーションに関わる多くの作業を効率化できます。スピーディーにビジネスを立ち上げたい方は、ぜひ導入を検討してみてください。
よくある質問
スモールビジネスで目指すべき利益水準は?
スモールビジネスを安定させるには、しっかりと利益を確保することが不可欠です。目安としては、利益率20%を目指しましょう。これは、売り上げのうち5分の1が利益として手元に残る水準を意味します。
スモールビジネスの定義は?
スモールビジネスとは、一人または少人数で運営される事業のことで、一般的な中小企業よりもさらに小規模なビジネスを指します。小規模法人に加え、個人事業主やフリーランスも含まれます。一般的には従業員数が5人以下の企業を指します。
スモールビジネスを支援するプログラムはある?
- 小規模事業者持続化補助金:小規模事業者の販路開拓の取り組みを支援する補助金
- 小規模企業共済:小規模企業の経営者、個人事業主向けの退職金制度
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金):新製品・新サービス開発に必要な設備投資費用を支援する補助金
- ミラサポplus:中小企業・小規模事業者向け補助金・総合支援サイト
文:Norio Aoki