個人事業主として開業したり会社を設立したりした後、ビジネスプランが正しい方向に進んでいるか、軌道修正が必要なのかどうかを知るには、ビジネスマイルストーンを理解し活用することが大切です。
この記事では、ビジネスマイルストーンとは何か、そして起業から1年目までに達成したいマイルストーンを11個紹介します。これらのビジネスマイルストーンを意識することで、事業の各段階での目標達成に向けた取り組みをより具体的に考えることができるようになり、ビジネスの確実な成長へとつなげることができるでしょう。
ビジネスにおけるマイルストーンとは

ビジネスマイルストーンとは、事業の各段階で達成すべき中間目標や節目となる重要な指標(KPI)を意味します。
例えば、有料のマーケティングキャンペーンで初めて効果がみられたり、新規顧客との初取引を成功させたりすることは、マイルストーン達成の具体例といえます。
こうしたマイルストーンは、事業が正しい方向に進んでいるかを測るものとして非常に重要です。
マイルストーンの例:1カ月目

1. 予算を立てる
事業を成功に導くための第一歩として、明確な財務計画を立てることが重要です。月ごとの予算を立てておくと、収入や支出を効果的に管理し、年間を通じて経営に必要な資金を適切に配分できます。予算作成時には、以下の要素を考慮しましょう。
- 予想収入
- 固定費および変動費
- 一時的な支出
- 予備費
- 予想利益(または損失)
早い段階で予算を立てておくことで、財務状況を把握することができ、不意に訪れたビジネスチャンスにかけられる予算や、出費を抑えるべきところが明確に理解できるようになります。
2. 有料マーケティングで認知度が高まる
事業を立ち上げた後、次に目指すビジネスマイルストーンは、再現性があり利益を生むマーケティング手法の確立です。この段階では、対象となる顧客層に向けた広告文や素材のテストを重ね、データに基づく改善を続けることが成功への鍵です。広告キャンペーンがすぐに期待通りの成果を上げなくても、継続的に試行錯誤することで、最適なマーケティング手法を見出すことが可能です。
ブランド認知度が低い段階では、有料広告キャンペーンの実施が効果的です。多くの有料チャネルではクリック単価制を採用しており、少額の予算から開始できます。Facebook広告やGoogle広告などで広告キャンペーンに取り組み、顧客獲得のための戦略を始めましょう。
また、ビジネスのターゲットと重なる層のフォロワーを持つインフルエンサーに商品やブランドを紹介してもらうインフルエンサーマーケティングも有効です。商品やサービスに合ったマーケティング戦略をより具体的に検討する際には、Shopifyエキスパートのサポートを活用するのもよいでしょう。
3. 商品やサービスが初めて売れる
初めて家族や友人以外の顧客から購入してもらうことは、記念すべきビジネスマイルストーンのひとつです。これは、自分の商品やサービスが市場で受け入れられている証拠であり、今後のマイルストーンマネジメントにおける重要な基盤となります。
Shopifyなどを活用してECサイトを構築したら、集客力を高めるために複数のマーケティング戦略を試してウェブ解析を行い、売り上げにつながるようサイトを改善しましょう。
初めての売り上げを達成したら、顧客へ注文お礼メールを送り、さらに感想も聞いてみましょう。好意的な反応が得られたら、ネットショップや各種レビューサイトで「お客様の声」の投稿を依頼するのもおすすめです。こうした取り組みは、今後の売り上げアップや信頼性向上につながります。
マイルストーンの例:3ヶ月目

4. カスタマーサポートにクレームが入る
ネガティブな出来事をビジネスマイルストーンに設定することも大切です。なぜなら、そういった失敗にどのように対応し改善につなげるかがビジネスの成長に大きく関わるからです。
提供した商品やサービスに対して、顧客からの不満やクレームが発生したら、カスタマーサポートについて見直しをして、顧客との関係を強化するチャンスととらえましょう。
従来のカスタマーサポートでは、「共感を示し、謝罪する」ことが基本とされてきました。しかし、現代は単に謝罪するのではなく、顧客の立場に立って問題を深く理解し、適切な解決策を提示することが求められます。例えば、配送遅延が発生した場合には、遅延の理由と具体的な対応策(代替案の提示やクーポンの提供など)をセットで伝えることで、より前向きな印象を与え顧客との関係構築につながります。
また、最も効果的なクレーム対応の方法は、そもそもクレームが発生しにくい仕組みを作ることです。具体的には、以下のような環境を整えることで、顧客が不安を自己解決できるようになり、サービスの不明瞭さなどからくる不満を未然に防ぐことができます。
- 発送予定日や配送ポリシーを明示し、配送について予測を立てられるようにする
- トランザクションメールを導入して自動的に出荷通知などが送信されるようにし、商品の発送状況を逐一知らせる
- FAQページを充実させ、顧客が自分で疑問を解決できるようにする
また、問い合わせ手段としては、問い合わせフォームに加えて、より親しみやすいライブチャットの活用も推奨されます。
5. 最初の顧客レビューを獲得する
実際の顧客からの正直で肯定的なレビューは、費用をかけずに強力なマーケティング効果を生み出すプロモーション手法です。
消費者は従来の宣伝文句に懐疑的になってきているため、リアルな口コミや率直な商品レビューを重視する傾向にあります。そのため、最初の肯定的なレビュー獲得は重要なマイルストーンとなります。
より多くの顧客にレビューしてもらえるよう、メールでレビューを依頼したり、SNSでアンケートをとったりしましょう。例えば、オランダのデオドラント製品メーカーNuudは、顧客からの好意的なレビューをホームページ上に掲示することで、訪問者に安心感を提供し、購入促進につなげています。
Shopifyストアでは、以下のようなレビュー収集アプリを使って簡単に顧客レビューを収集・活用できます。
- Trustoo Reviews:顧客からのレビューと写真を自動的に収集するアプリ。商品を紹介した顧客に報酬を出すリファラルマーケティングも可能。
- Air Product Reviews App & UGC:レビューリクエストの自動送信や割引提供で簡単にレビューが集められるアプリ。Googleでの検索結果に星評価を表示することも可能。
6. オーガニックマーケティングの結果が出始める
SNS、SEO、コンテンツマーケティングなどのオーガニックマーケティングは、すぐに成果が現れるわけではありませんが、長期的な投資利益率(ROI)を実現するためには重要な施策です。起業後の早い段階からオーガニックマーケティングに取り組んでおけば安定したトラフィックを生み出し、長期的な売り上げに貢献してくれるでしょう。
具体的な施策としては、SNS上でのコンテストの実施、友達紹介ボーナスの提供、インフルエンサーマーケティングなど、複数の手法を組み合わせることが効果的です。
また、オーガニックマーケティングの効果を持続的に狙っていくには、まずSEOマーケティングをしっかり学び、質の高いコンテンツを作成することが肝心です。さらに、最新のデジタルマーケティング戦略や成功事例について情報収集して、顧客獲得に努めましょう。
7. 専門外の業務を外注する
起業初期は、全ての業務を完璧にこなすことは困難です。自分の得意分野と不得意分野を明確に把握し、ロゴデザイン、ウェブ開発、販売戦略など、専門性が求められる部分は、外部のプロフェッショナルに任せるのが効果的です。
例えば、以下のアウトソーシングプラットフォームを活用して、信頼できる専門家に依頼することをおすすめします。
外注することで、経営者自身はビジネス戦略を考えたり顧客とコミュニケーションをとってロイヤリティを高めたり、さらなるマーケティングチャネルの開拓に専念することもでき、マイルストーン達成に直結するプロダクトマーケットフィット(商品と市場の適合性)を追求することができます。
マイルストーンの例:6カ月目

8. 受注が安定し始める
商品が定期的に売れるようになったら、自分の事業が市場にマッチしている、すなわちプロダクトマーケットフィットが達成された明確なサインです。また、顧客からの自然な口コミやUGCが増加していれば、マーケティング活動が実を結んでいる証拠です。
この段階では、以下のような指標と目標に注目し、さらに受注を安定化する努力をしていきましょう。
- リピート購入率:複数回購入している顧客の割合が上昇する。
- 顧客獲得費用(CAC):新規顧客を獲得するためのコストが低下する。
- 顧客生涯価値(LTV):各顧客がもたらす利益が向上する。
これらの指標と達成目標を意識することで、今後の事業拡大に向けたさらなる戦略の見直しや改善に役立つデータを得ることができるでしょう。
マイルストーンの例:1年目

9. 初めて売り上げが急増する
事業が軌道に乗り始めると、期間限定の大幅セールやブラックフライデー、サイバーマンデーなどで、売り上げが急増する瞬間が訪れます。こうした急激な売上増加は、自分の事業が市場に受け入れられている証拠です。
しかし、急増する需要に対応するためには、事前の準備が不可欠です。具体的には、以下のような対策を講じましょう。
- 物流・在庫管理の強化:売上増加に備え、追加の配送用品や在庫の確保、物流パートナーの見直しを行います。
- カスタマーサポート体制の整備:売上急増時には問い合わせが殺到する可能性があるため、カスタマーサポート代行やZendesk(ゼンデスク)のようなAIサポートツールを活用して、迅速に対応できるようにしましょう。
10. 初めての従業員を雇う
事業が軌道に乗り始めたら、チームの拡大を検討するタイミングです。適切な人材を採用することで、ビジネスの成長スピードを加速させ、異なるスキルや視点を取り入れることができます。
最初の採用は、今後の会社の方向性を決める重要なマイルストーンとなるため、慎重に進めることが重要です。採用時には、以下のようなポイントを考慮しましょう。
- 事業成長に貢献できるポジションを特定する:現在の業務の中で負担が大きいものや、弱みとなっている部分を特定します。
- 明確な職務内容と必要なスキルを定義する:特定した業務の職務内容や求めるスキルを具体的にまとめます。
- 正社員・フリーランス・業務委託の選択肢を検討する:予算や業務内容に応じて、どの雇用形態が最適かを考えます。
- 面接でスキル以外も確認する:スキルだけでなく、自社の価値観やビジョンに共感できる人材かどうか、過去の職歴なども確認します。
- 初期メンバーから会社の文化を築く:初めての採用者は、今後の企業文化の基盤を作る存在になります。協力しやすい環境を整え、トレーニングや成長の機会を提供することで、ビジネスの長期的な成功につなげましょう。
11. 事業運営の効率化を図る
長期的な事業運営では、日々の業務をバランス良くこなすことが成功の鍵となります。事業が波に乗ってきたら、日常的に行う業務を外注し、戦略的な業務や成長分野に専念できる体制を整えることが重要です。
具体的には、フルフィルメント、経理業務、SNS管理などを、信頼できる外部パートナーに委託します。適切な業務を外注し、商品開発や海外進出など、より大きな業務に注力できれば、より大きく事業を成長させることができます。また、ワークライフバランスを保ったり労働負荷を軽減したりして持続可能な事業運営をすることも可能になります。
まとめ
ビジネスマイルストーンは事業において節目となるポイントや中間目標を指します。起業したばかりの頃など、ビジネスプランが適切かどうか、ビジネスが着実に成長しているのかがわかりにくい場合にも、ビジネスマイルストーンを設定することで事業の進捗状況などを知ることができます。
これから起業しようと考えている人、起業したばかりでこの先の事業計画をどのようにしたらいいのかわからなくなっている人などは、この記事のビジネスマイルストーンの例を参考に、現状把握と改善を行いビジネスの成長につなげてください。
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よくある質問
ビジネスマイルストーンとは?
ビジネスマイルストーンとは、事業の各段階で達成すべき中間目標や節目となる重要な指標を意味します。事業が正しい方向に進んでいるかを測るものとして非常に重要です。
ビジネスマイルストーンにはどのようなものがある?
起業初期の段階では、初めての売り上げ、顧客レビューの獲得、マーケティングの目標達成などが主要なマイルストーンになります。ある程度事業が軌道に乗ってきたら、トラフィック率の向上や投資利益率(ROI)の向上といったこともマイルストーンになります。
ビジネスマイルストーンはどう設定すればいい?
以下の手順でマイルストーンを設定しましょう。
- 長期的な目標を明確にする
- 目標をSMARTの法則に当てはめる
- マイルストーンに優先順位をつけ、順番を整理する
- 担当者や予算を割り当てる
- 現実的なスケジュールを立てる
- KPI(業績指標)を決める
- ロードマップを作成し、定期的に見直す
ビジネスマイルストーンとスケジュールの違いは?
ビジネスマイルストーンとスケジュールの違いは、ビジネスマイルストーンはビジネス目標の達成にむかう中での中間目標や節目となるポイントであるのに対し、スケジュールはビジネス目標を達成するための計画全体を指す点にあります。
外注は事業成長にどのように役立つ?
専門外の業務を外注することで、自身はより重要なビジネス戦略の立案や顧客とのコミュニケーション、商品開発などに注力することができます。例えば、経理やウェブ開発、SNS管理など、専門的なスキルが必要なタスクは、クラウドワークスやココナラなどのアウトソーシングプラットフォームを活用してプロに任せるとよいでしょう。
イラスト:グレーシア・ラム 文:Yoshiaki S. Ikeda