オリジナルTシャツの販売は、ネットで稼ぐ方法や自宅でお金を稼ぐ方法として人気を集めています。市場調査によると、世界のオリジナルTシャツ印刷市場は2025年から2030年にかけて年平均11%以上の成長が見込まれており、日本でも市場の拡大が期待されています。
この成長を後押ししているのが、さまざまなオンラインツールの進化です。これにより、誰でも簡単にオリジナルTシャツ販売を始められるようになりました。デザインのアイデアさえあれば、低コストでアパレルネットショップを開業することが可能です。
この記事では、オリジナルTシャツ販売の始め方を、デザイン、制作、販売、マーケティングなどの各ステップに分けて詳しく解説します。
オリジナルTシャツ販売の始め方7ステップ

1. ニッチ市場・サブニッチ市場を見つける
オリジナルTシャツを購入してもらうには、まず商品を際立たせることが重要です。そのためには、特定の分野に特化した比較的小規模なマーケット(ニッチ市場)を見つける必要があります。コアなニーズに応えるオリジナルTシャツを提供することで、競合との差別化を図りましょう。
ニッチ市場によっては規模が大きすぎることもあるため、さらに細分化したサブニッチ市場をターゲットにするのも有効な戦略です。例えば、「熱帯魚」というニッチ市場があるとすると、その中の「アロワナ」や「ピラニア」はサブニッチ市場にあたります。ただし、市場を細分化しすぎるとターゲット層が狭まり、販売機会が限られる可能性もあります。
ニッチ市場の選定や市場規模の推測には、以下の方法が役立ちます。
- Wikipedia(ウィキペディア)の趣味に関するページを参考にする
- キーワードプランナーで、ターゲット市場に関連するキーワードの検索ボリュームを確認する
- Meta Business Suite のインサイトを活用し、SNS上での市場規模を分析する
- 掲示板型SNS「Reddit(レディット)」の各コミュニティsubreddit(サブレ)を調べ、メンバー数や投稿の活発度を参考にする
- Googleトレンドで注目を集めているキーワードを調査する
- 自分自身の興味・関心や所属するコミュニティを考慮する
この段階でビジネスプランの策定にも着手し、アイデアを整理しておくとよいでしょう。
2. オリジナルTシャツ制作サービスを決める
オリジナルTシャツを制作する際は、Tシャツの素材、形状、色、サイズ展開、プリント方法などを検討し、適切な制作サービスを選ぶことが重要です。
プリントオンデマンドサービスを利用すると、Tシャツを別途用意する必要もなく、ドロップシッピングでオリジナルTシャツを販売できます。ドロップシッピングでは、プリントオンデマンド業者が注文ごとに1枚ずつ印刷し梱包や発送まで行うため、在庫管理やECフルフィルメントの手間を大幅に削減し、売れ残りのリスクも避けられます。
ただし、サービス手数料が発生するため、自前で在庫を持つ場合と比べて利益率は低くなります。
以下に、オリジナルTシャツの制作サービスで利用可能な代表的なプリント技術を3つご紹介します。制作サービスを選ぶ際はデザインや素材、制作費用にあったプリント方法を採用している業者を選びましょう。
シルクスクリーンプリント
シルクスクリーンは、1色ごとに版を作り生地にインクを刷り込む方式で、長年にわたって広く使われてきました。版を作成すれば何度でも使用できるため大量生産に向いており、枚数が増えるほど1枚あたりの単価が下がります。また、発色が良く耐久性にも優れており、金・銀・蛍光色などの特色インクを使うことも可能です。
ただし、色ごとに版を作る必要があるため、4~5色以上のデザインや複雑なデザインには不向きで、シンプルなイラストやロゴなどに適しています。
インクジェットプリント(DTG)
インクジェットプリントは、ほとんどのプリントサービスで採用されている最も主流な方法です。シルクスクリーンのように版を作る必要がないため、小ロットでの制作やコストを抑えたい場合に適しています。フルカラーの細かいデザインも再現でき、生地にインクが染み込むことで自然な風合いに仕上がるのが特徴です。ただし、ポリエステルなどの一部の素材には適していません。
DTFプリント
DTF(Direct to Film)プリントは、デザインをインクジェットプリンターで専用のフィルムに印刷し、それを熱プレスで生地に転写する技法です。DTFは、綿・ポリエステル・ナイロンなど幅広い素材に対応し、フルカラー印刷が可能で、高い耐久性を持つため洗濯にも強いのが特徴です。ただし、転写方式のため生地に貼り付ける形となり、シルクスクリーンやインクジェットプリントに比べると若干風合いが硬く感じられることがあります。
オリジナルTシャツ制作サービスを利用する際は、サンプル品を取り寄せることをおすすめします。印刷の質や発色、Tシャツの形状や素材感などをチェックし、実際に着用したり洗濯したりして耐久性も確認しましょう。
品質にこだわることで生産コストは上がりますが、販売価格を高く設定しやすくなります。品質と原価のバランスを考慮し、販売数量と1枚あたりの利益を最大化するよう検討することが重要です。
3. Tシャツのデザインを作成する
ターゲットとするニッチ市場に合わせたオリジナルTシャツのデザインを作成します。Tシャツのデザインでは独自性が最も重要であり、必ずしも複雑で精巧なデザインである必要はありません。シンプルなデザインでも、ターゲットのニーズに合っていれば十分に魅力的な商品になります。
デザインを作成する方法は、自分でデザインを考える方法と、デザイン制作を依頼する方法があります。
自分でTシャツのデザインを考える
Tシャツのデザインを作成する際、デザインアイデアが浮かばない場合は、Tシャツ販売サイトで人気のあるデザインを参考にすると良いでしょう。以下のようなデザインTシャツの販売サイトをチェックすることで、トレンドや売れ筋のスタイルを把握できます。
ただし、あくまでも参考にするだけにして、商標や著作権を侵害しないように注意しましょう。
デザインのヒントが得られるTシャツ販売サイト
- graniph(グラニフ)
- SUZURI(スズリ)
- Tシャツトリニティ
- ClubT(クラブティー)
- Zazzle(ザズル)
- Redbubble(レッドバブル)(英語)
- SnorgTees(スノーグティーズ)(英語)
デザイン制作を依頼する
デザインソフトに慣れていない場合は、デザインの制作を外注することも可能です。
オリジナルTシャツ制作サービスでデザインを依頼する
一部のオリジナルTシャツ制作サービスでは、アイデアを元にデザインを作成してくれるサービスを提供しています。デザインの知識がなくてもプロの手を借りてオリジナルTシャツを作ることができます。以下はその一例です。
スキルマーケットでデザイナーに依頼する
クリエイター向けのSNSやスキルマーケットには、多くのデザイナーやイラストレーターが登録しています。過去の実績や作品を確認し、自分のTシャツデザインイメージに合うデザイナーを見つけたら、プラットフォームを通じて依頼しましょう。
Tシャツデザインデータ販売サイトでデータやテンプレートを購入する
すでに完成しているデザインやテンプレートを購入し、それをTシャツに使用する方法もあります。デザイナーに依頼するよりも低コストで済むことが多いですが、他の販売者とデザインが重なる可能性があるため、オリジナリティを確保するのが難しくなる点には注意が必要です。
- Tshirt Factory(ティーシャツファクトリー、英語)
- Creative Market(クリエイティブマーケット、英語)
- Graphic River(グラフィックリバー、英語)
なお、デザインやテンプレートを使用する際は、商用ライセンスの購入が必要になります。ライセンスの種類によって使用範囲が異なるため、必ず利用規約を確認してから使用しましょう。
4. Tシャツのモックアップを作成する
デザインが完成したら、モックアップと呼ばれる商品サンプル画像を作成します。モックアップは、販売するTシャツのイメージ確認に役立つだけでなく、ネットショップの商品画像としても活用できます。作成には、Adobe Photoshop(アドビフォトショップ)などの画像編集ソフトや、Tシャツデザイン用のオンラインツールを使用できます。
Photoshopのモックアップテンプレートを利用すると、複数のレイヤーを活用してTシャツの色を変更したり、しわや折り目を加えて立体的な質感を再現したりすることが可能です。デザインをリアルな仕上がりに見せることで、購入者に具体的な着用イメージを伝えやすくなります。
また、Photoshopを使用しなくても、以下のようなTシャツデザイン作成アプリを利用すれば、簡単に無料でモックアップを作成できます。
なお、ネットショップで実際に掲載する商品画像は、モックアップを使用するだけでなく、商品サンプルを注文して撮影する方法もあります。
5. Tシャツのデザインを検証する
オリジナルTシャツは、シンプルでありながら独自性の高いデザインが好まれます。デザインの改善点を見つけるために、客観的な評価を集めて検証することが重要です。以下の方法を活用し、デザインの完成度を高めましょう。
家族や知人にフィードバックをもらう
家族や友人、趣味のコミュニティなど身近な人にデザインを見せて意見をもらいます。ただし、親しい関係だからこそ評価が甘くなりがちなので、率直なフィードバックを求めることが大切です。
SNSで意見を求める
SNSを活用して反応を確認する方法も有効です。FacebookやInstagram、TikTokなどにモックアップ画像を投稿し、潜在顧客からの評価やコメントを集めましょう。実際の購買層に近い人の反応を知ることで、デザインの魅力や改善点を把握できます。
クラウドファンディングでテストマーケティングする
クラウドファンディングを利用すれば、テストマーケティングを兼ねた資金調達が可能です。オンラインで不特定多数から支援を募ることで、見込み客の関心度を測り、フィードバックを得られます。本格的にTシャツビジネスを展開したい場合には、手間や時間がかかるものの、有力な選択肢となるでしょう。
デザインが決定したら、データが仕様どおりに作成されているか最終確認を行います。利用する制作サービスの指定するデータ仕様を守ることが必要であり、特に注意すべきポイントとして、画像の解像度(300dpi以上推奨)、画像サイズ、文字のアウトライン化(画像化)、背景色の透過処理などが挙げられます。データが適切に作成されていなければ、印刷時に色や配置のズレが生じる可能性があるため、細部までチェックしましょう。
6. オンラインショップを準備する
オンラインショップを準備してオリジナルTシャツの販売を開始しましょう。オンラインショップの開設場所として、Amazon・楽天などのECモールやマーケットプレイス、Tシャツ制作サービスが提供する販売サイト、独自ドメインで構築する専用ECサイトなどがあります。これらはどれか一つに限定せず、いくつかの方法を組み合わせてマルチチャネル販売戦略をとることも可能です。
オリジナルTシャツに特化した販売サイトの例は以下のとおりです。
- T-SHIRTS TRINTY(ティーシャツトリニティ)
- SUZURI(スズリ)
- UP-T(アップティー)
- ClubT(クラブティー)
- BOOTH(ブース)
専用のECサイトを構築する際は、Shopify(ショッピファイ)を利用すると便利です。Shopifyなら、さまざまなプリントオンデマンドサービスと連携できるため、販売プロセスをスムーズに管理できます。連携機能を活用すれば、顧客がECサイトで商品を購入すると、自動的にプリントオンデマンドサービス会社へ注文情報が送信され、制作から梱包、発送までを任せることができます。
Shopifyと連携できる主なプリントオンデマンドサービスは以下のとおりです。
- Printful(プリントフル)
- オリジナルプリント.jp
- Paintory(ペイントリー)
- Gelato(ジェラート)
7. Tシャツを宣伝する
オリジナルTシャツを多くの人に知ってもらうために、Instagram、X、Facebookなどを使って積極的にSNSマーケティングを行いましょう。ハッシュタグを作ってユーザーの投稿を促しUGCをシェアしたり、TikTokの流行りの曲とともにサンプルの着用動画を投稿したりすると、ブランド認知や信頼性が上がりやすいでしょう。
さらに、多くの人の目に触れるためには、オリジナルTシャツの情報が検索されやすくなるよう工夫することも重要です。これはSNSの投稿だけでなく、オンラインショップの運営にも当てはまります。特に、オンラインショップではSEO対策を行い、ターゲットとするニッチ市場のキーワード(例えば「Tシャツ ピラニア」など)を設定することで、検索結果の上位表示を狙いましょう。
オリジナルTシャツの宣伝で最も重要なのは、独自性をしっかりとアピールすることです。ブランディングをしっかりと行ったうえで、ターゲットとなるニッチ市場やTシャツのデザインテーマに関する思いなどのストーリーテリングをすることで、共感を得て商品の魅力をより効果的に伝えることができます。魅力的なブランドを構築するには、ショップ名、ブランドのロゴ、デザインコンセプトなどを統一することが大切です。
オリジナルTシャツ販売の成功事例
日本式アニメTシャツを展開するImouri(イモウリ)

Imouri(イモウリ)は、アニメや日本語ロゴを取り入れたオリジナルTシャツを販売するブランドです。ECストアの構築にはShopifyを活用しています。
創業者は、市場に出回るアニメTシャツが有名キャラクターのデザインばかりであることに疑問を抱いていました。そこで、特定のキャラクターではなく、日本アニメの美学そのものを表現することをコンセプトに掲げ、オリジナルキャラクターをデザインしたグッズ販売をスタートさせました。
また、強みであるデジタルマーケティングとデザインに集中できるよう、プリントオンデマンドサービスを導入し、ビジネスの効率化を図りました。さらに、アニメ愛好家のコミュニティを活用し、YouTubeチャンネルにコメントを残したり、Facebookグループに投稿したりといったプロモーション活動を実施しました。
こうした戦略が功を奏し、現在ではプリントオンデマンドTシャツブランドとして確固たる地位を築いています。
まとめ
オリジナルTシャツを販売するには、まずニッチ市場やサブニッチ市場を見つけることが重要です。オリジナルTシャツの制作サービスにはさまざまな選択肢があり、在庫を持たずに1枚から注文できるプリントオンデマンドの活用や、大量生産によって高い利益率を確保する方法など、自身のビジネス戦略に応じた方法を選べます。
Shopifyを利用すれば、ECサイトとプリントオンデマンドサービスを連携させることで、効率的にTシャツを販売できます。注文が入ると自動でプリントオンデマンドサービスへ情報が送られ、生産から梱包、発送までを代行してもらえるため、手間をかけずに販売が可能です。
EC事業への参入を検討している方は、オリジナルTシャツ販売も選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
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オリジナルTシャツ販売に関するよくある質問
オリジナルTシャツ販売に必要な許可は?
自分でデザインを作成した場合や、商用利用可能なフリー素材を使用する場合は、特別な許可は不要です。ただし、フリー素材の中には商品化や販売を禁止しているものもあるため、利用規約をしっかり確認しておくことが大切です。イラストや写真など、著作権や肖像権が関係する作品を使用する場合は、著作者や肖像権者から許可を得る必要があります。商品化する際に利用料が発生することもあるため、事前に確認し、書面で契約を交わしましょう。
オリジナルTシャツの販売価格相場は?
一般的に、オリジナルTシャツの販売価格は2,000~3,500円程度が相場です。価格は、使用するプリント技術、Tシャツの品質、デザインの複雑さなどによって変動します。また、大量仕入れを行うことで、1枚あたりの販売価格を抑えることも可能です。
オリジナルTシャツの納期の目安は?
オリジナルTシャツの納期は、通常3~13日程度が目安となります。注文したTシャツの在庫状況や使用するプリント技術によって変動し、一部のサービスでは即日発送が可能な場合もあります。
文:Norio Aoki