適切なマーケティング戦略は、商品の十分な売り上げを確保するうえで欠かせない要素です。しかし、起業したばかりなどは、マーケティングのためのコストを捻出することは簡単ではないでしょう。
そこでこの記事では、スモールビジネスでも実行可能な、無料または低コストのマーケティングアイデア15選を成功事例とともに紹介します。マーケティング戦略に悩む方は、ぜひ参考にしてみてください。
マーケティングアイデアと成功事例15選
予算が少なくても、しっかりとしたマーケティングプランをもつことが必要です。ここでは、お金をかけずに実践できる15個のマーケティングアイデアを紹介します。
1. SNSでプレゼントキャンペーンを実施する
総務省の調査によるとインターネットを利用する人の約8割はSNSを活用しており、企業が短期間でより多くの消費者にリーチするうえで、SNSは広告よりも低コスト、かつ高い費用対効果が期待できます。
複数のSNSプラットフォームを使い、以下のようなユーザーが気軽に参加できるプレゼントキャンペーンを実施するとより拡散力が高まるでしょう。
- リポスト&フォローキャンペーン
- 「いいね」キャンペーン
- ハッシュタグキャンペーン
- アンケートキャンペーン
- クイズ・診断型キャンペーン
- コメントキャンペーン
- フォトコンテスト企画 など
例えば、日本の大手飲料メーカー伊藤園は、お茶のプレゼントキャンペーンをX(エックス)で開催しました。
伊藤園のアカウントをフォローし、ハッシュタグとともに投稿してくれたユーザーに、新フレーバーのお茶をプレゼントする、というものです。このような戦略を通じて、伊藤園は新商品の認知度を高め、購買意欲の向上に成功しました。

プレゼントキャンペーンでは、必ずしも膨大なマーケティング費用が必要になるわけではありません。低価格な商品をごく少数の人にプレゼントするのでも、十分な効果を出すことができます。
2. ユーザー生成コンテンツを共有する
アライドアーキテクツが実施した調査によると、ネット通販や定期通販の購入時、88.5%の顧客が、SNSの投稿やサイト内のレビュー、個人ブログなどのユーザー生成コンテンツ(UGC)をチェックしています。
そのため、売り上げや信頼を得るためには、既存顧客に商品を実際に使用している写真や動画、体験談を共有してもらうことが大切です。また、ブランド名やハッシュタグを定期的に検索し、ユーザーが自発的に投稿したブランドに関するコンテンツをシェアして、潜在顧客のブランド認知や購買意欲を高めましょう。
UGCの力を活かしてフォロワーの購買意欲を高めた事例の一つに、シューズショップASBee(アスビー)の施策があげられます。
ASBeeは、スニーカーデコ(スニーカーをビーズなどで飾りオリジナルの靴にすること)の流行に合わせて、デコレーションしたシューズの写真を、ハッシュタグとともにInstagram(インスタグラム)に投稿してもらうインスタマーケティングを行いました。
フォロワーであることを条件にし、コンテスト形式にして景品を用意することでフォロワー獲得にもつなげています。

また、アパレル企業の事例として、自社製品を使ったコーディネート写真にハッシュタグをつけることを推奨し、その投稿を自社公式サイトやSNSで共有したものもあります。
これにより一般の消費者をブランドアンバサダー化し、商品に魅力を感じている人だけでなく、公式サイト・SNSでファッションを紹介してもらいたいユーザーの購買意欲も促進させました。
3. 動画を作成する
動画マーケティングは、多くのマーケティングの種類の中でも人気の手法です。短い動画コンテンツに特化したTikTokだけでなく、Instagramなど写真がメインコンテンツだったSNSでも動画の人気が高まっています。
動画アイデアを考えたら、無料の動画編集ソフトを利用して、SNS上でビジネスを売り込むためのコンテンツを制作しましょう。マーケティングに有効な動画には、以下のようなものがあります。
- 商品に満足した顧客からのレビュー
- ビジネスの舞台裏
- 商品の使い方を紹介するチュートリアル動画
- インフルエンサーとのコラボ配信
日本国内では、化粧品の製造・販売を主な事業とするdejavu(デジャヴュ)の動画マーケティングが事例としてあげられます。
dejavuは、自社のマスカラやリキッドアイライナーなどの製品のチュートリアル動画をInstagramやYouTubeで公開しています。これらの動画では、商品の特徴を生かしたメイクのポイントや、より魅力的に見せるための技術が紹介されており、視聴者から好評を得ています。

また、食品メーカーのキューピーは、自社のマヨネーズやドレッシングを使ったレシピ動画を通して自社製品の使い方のヒントや新しい食べ方を提案することで、消費者に製品の魅力を伝え、実際の購買につなげています。
4. トレンドを反映してSNSで投稿する
TikTokで人気の出た曲がヒットチャートを賑わせたり、多くのユーザーが同じ曲を使用したダンス動画を投稿したりするなど、SNSをマーケティングに利用するのであればトレンドを無視することはできません。
しかし、トレンドにのった投稿は膨大な量になるため、自社コンテンツが埋もれてしまう恐れがあります。そうならないためにも、いち早くトレンドを取り入れ、以下のような点に気をつけて競合他社との差別化を図りましょう。
佐賀県の地域密着型のスーパーマーケット・ファインズたけだ伊万里店では、副店長がトレンドの音楽をもとにお薦め商品を店内放送する「替え歌」を披露した動画をSNSで投稿しました。
管理職の斬新なパフォーマンスが人気を博し、2020年時点でフォロワー400名だったInstagramのアカウントは2025年2月時点で約6万名に伸び、地域密着型のスーパーでありながら隣県や遠方からの客足も伸びています。

5.ターゲット市場が重複している他のビジネスと提携する
予算がゼロでも実施できる優れたマーケティングアイデアの一つとして、ターゲット市場が重複する他のスモールビジネスとコラボレーションすることがあげられます。
- ウェビナーを共同開催する
- メルマガでお互いの店舗で適用できる割引コードを配布する
- SNS上で自発的に呼びかけあう
- お互いのポッドキャストにゲスト出演する
- ポップアップストアの開催費用を折半する
共同マーケティングの利点は、同じ志を持つ企業やビジネスオーナーを支援できるだけでなく、それぞれの既存顧客にもアプローチできる点です。ただし、顧客の取り合いになってしまわないよう、販売する製品が競合しないことが条件です。
例えば、東京の下町、蔵前にある自家焙煎珈琲屋のSOL'S COFFEEは、同じ蔵前にある人気の文具店カキモリとコラボレーションしてポップアップイベントを開催しました。
海外からの来店者も多いカキモリでイベントを開催することで、より多くのターゲットにリーチすることに成功しています。

6. 顧客のフィードバックを集める
より多くの顧客から信頼を得る、また自身のビジネス戦略を改善するうえで、既存顧客からのフィードバックは非常に重要な役割を果たします。顧客満足度などが調査できるShopifyのアンケートアプリなどを使って、自身が運営するネットショップで商品を購入した顧客に下記内容を含むアンケートを送ってみましょう。
- 商品のどこが良かったか
- どのようにショップを知ったか
- 購入のきっかけはなんだったか
これらのインサイトを利用して、ランディングページや商品ページなどで顧客の声を紹介しましょう。
例えば、世界最大のマーケットプレイスであるAmazon(アマゾン)は、商品ページに5段階評価のカスタマーレビューとレポートを記載しています。
さらにレポートが多い商品に関してはキーワードでレビューを絞り込むこともでき、購入の参考になる情報を見つけやすくしています。その結果、購入を迷っている人の不安や疑問が解消され、コンバージョン率の向上につながっています。

7. 一般公募のコンクールやアワードに応募する
コンクールで受賞することは、自社が最高の商品を提供していることを知ってもらえるきっかけになり、顧客との信頼を構築するうえで有効な方法です。
例えば以下のようなコンクールがあります。他にも、特定の業界のものなど多様なコンクールやアワードを見つけることができるでしょう。
- 日本中小企業大賞:「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」によって主催されており、進化し挑戦し続ける中小企業の取り組みを表彰するものです。中小企業で働く人々のモチベーション向上や社会への情報発信を目的としています 。
- ジャパンSDGsアワード:外務省が主催し、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて優れた取り組みをしている企業・団体等を表彰するものです。
こういったコンクールで受賞できれば、信頼性や権威性を高めることができるので、わずかな投資で大きな変化をもたらすことができます。受賞できたら、その受賞歴をウェブサイトに表示することで、コンバージョンを促進することができます。
アパレル卸売サイトのスマセルは、日本中小企業大賞のMVPを受賞し、運営会社のホームページで情報発信することで企業やネットショップの信頼性向上に役立てています。

8. オフラインのイベントに参加する
EC事業がメインであっても、以下のようなオフラインのイベントに参加することで、潜在的な顧客に直接会うことができます。
- 地域自治体のバザー
- フリーマーケット
- 交流イベント
自治体で地域の中小企業を支援するイベントを企画している可能性もあるため、自治体ホームページや商工会議所などで確認してみましょう。MeetupやPeatixなどの交流サイトも、地元で開催されるビジネスイベントを紹介しています。
もしなにも見つからなければ、自分で主催するのも一案です。公共図書館など、無料でイベントを開催できるスペースを探してポップアップストアを開いてみましょう。その際、ショップカードや名刺の用意も忘れないようにしましょう。商品に興味はあるけれどその場で購入まで至らなかった人が、後から自社のウェブサイトを訪問するきっかけになります。
ガトーショコラ専門店のケンズカフェ東京は、宮城県多賀城市の市立図書館に併設された蔦屋書店のイベントスペースでポップアップストアを開き、さらなる認知度アップや顧客獲得に成功しています。

9. SEOに最適化されたコンテンツを作成する
SEO(検索エンジン最適化)もマーケティングに効果的です。的確な対策を講じることで、娯楽を求めている人や悩みを解決したい人がインターネットで情報を探している時にリーチできるようになります。
SEOをコンテンツマーケティング戦略と結びつけて、ビジネスを軌道に乗せましょう。商品に直接結びつく、検索ボリュームの少ないキーワードをターゲットにしたブログ記事を書くことで、サイト検索時の上位表示が狙いやすくなります。
簡単なコンテンツマーケティングのアイデアには以下のようなものがあります。
- ターゲット層が感じている不満を解決する
- ターゲット市場で人気のある出版物に寄稿する
- 顧客の体験談を紹介することで、潜在顧客の疑問を事前に解消する
革製品を製造販売する土屋鞄製造所は、SEO対策が簡単にできるShopifyで構築したオリジナルECサイト内で、自社コンテンツを使ってターゲットの疑問や悩みを解消し、ネットショップの集客力を高めています。

10. ギフトカードを販売する
ギフトカードの販売は、商品の製造や送料などの費用も少なく、前払いで代金を得ることができるため、キャッシュフローを改善します。次のようなシーズンに合わせてギフトカードを販売してみましょう。
- 母の日、父の日
- ブラックフライデー、サイバーマンデー
- ハロウィン、クリスマス
- バレンタインデー、ホワイトデー
ギフトカードを通年で販売するスターバックスでは、シーズンやトレンドのトピックに基づいてギフトカードのデザインをカスタマイズしている点が優れています。ご当地限定のデザインなども販売することで、ギフト以外に自分用にも購入したくなる仕掛けになっています。

ギフトカードを販売する際は、SNSやメルマガでの情報配信をしたり、ウェブサイトにポップアップやバナーを追加したりして、顧客にギフトカードの存在をアピールしましょう。また、既存顧客に感謝の意を表すためにギフトカードを提供し、ロイヤリティを高めることもできます。
11. 無料サンプルの提供
無料サンプルを提供するメリットは、実際に商品を体験してもらうことで、ユーザーの不安や疑問を解消して安心して商品を購入してもらえるようになる点です。
ただし、無料サンプルの提供に制限を設けないと、大勢の顧客から提供依頼が殺到するリスクがあります。そのため、「お一人様一回限り」や「毎月○名まで」と制限を設けたり、アンケート回答を必須にしたりするなどして、マーケティング費用の高騰や不平等感が生まれないように対策しましょう。
石けんやスキンケア用品を製造販売する松山油脂は、肌との相性や使い心地を確かめられるよう無料サンプルを提供しています。他にも、少量のトライアル品なども販売することで気軽に試してもらえるようにし、通常サイズ品の購入を後押ししています。

12. インフルエンサーへの商品提供
株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、2029年までに、世界のインフルエンサーマーケティング市場は800億ドルを超えるといわれています。
インフルエンサーへ報酬を払う代わりに無料で商品を提供することは、低コストで自社商品を紹介してもらうのに有効なマーケティングアイデアです。提供した商品を必ず共有してもらえるとは限りませんが、商品の製造費用と送料だけでインフルエンサーのファンにビジネスを広められるため、高い費用対効果が期待できます。
SNS運用に悩んでいたスキンケアブランドのAYURA(アユーラ)は、インフルエンサーをアユーラ公式アンバサダーとして任命し、自社製品を提供してPRしてもらう戦略で活路を見出しました。
この取り組みの結果、Instagramでのエンゲージメントが向上し、特に20代後半のユーザー層の拡大に成功しています。この成功は、フォロワー数の増加だけでなく、製品に興味を持ち、積極的に関与してくれる熱心なファンの獲得にもつながっています。

13. 紹介プログラムを作成する
マーケティング費用を最大限に活用するには、成功率が高く参入障壁が低い口コミマーケティングが効果的です。
例えば、ロイヤリティプログラムを導入し、既存顧客が家族や友人に商品やサービスを勧めるように促すことができます。この際、以下のような報酬を用意すると良いでしょう。
- 割引コード
- 新商品の優先的な購入
- 次回以降の注文時に利用できるポイント
既存顧客からの紹介で顧客を増やす手法はリファラルマーケティングとも呼ばれます。Shopifyストアの場合は、Lettersのようなアプリを使うことで簡単に行えます。
クラウドストレージサービスのDropboxは、友達を紹介したユーザーへ、利用できる容量が無料で増えるキャンペーンを行い、15カ月の間で約400万名ものユーザー獲得につなげています。

14. 割引コードでメルマガ登録を促進する
SMSとメールマーケティングは、どちらも顧客と直接関係を構築できるコミュニケーション手段です。顧客のメールアドレスや電話番号を入手し、メール配信への同意を得るために、割引コードを提供するなど購読するメリットを提示しましょう。
ECマーケットプレイスのAliExpress(アリエクスプレス)では、多数のクーポンを配布して顧客の購入数や取引額を大幅に増加させることに成功しています。

他にも、資生堂はウェブサイト訪問者がメルマガに登録するインセンティブとして、お得なキャンペーン、ウェブ限定商品の情報をいち早く提供しています。
15. 記憶に残る開封体験を演出する
開封体験も顧客をファンに変えるシンプルなマーケティング方法の一つです。
ニューヨークと東京を拠点に日本のスナック菓子のサブスクリプションサービスを提供するBokksuは、スナックだけでなく内容に合わせたお茶や読み物などを同梱して魅力的な開封体験を提供しています。
さらに、さまざまなSNSのインフルエンサーとコラボして開封体験の動画を作成し、より多くのターゲットにリーチしています。

マーケティングに高額をかける必要はありません
スモールビジネスにとって、有料広告に投資することだけがマーケティングではありません。成功の秘訣は、さまざまなアイデアを試して、想像力を働かせてみることです。
地元のイベントに参加してみたり、地域の他のスモールビジネスと提携してみたりしましょう。さまざまなSNSマーケティングを実施することも有効です。また、自社商品を購入してくれた既存顧客のフィードバックや行動もマーケティングアイデアの重要なヒントとなります。
この記事で紹介したマーケティング事例も参考に、ぜひ自社に合ったマーケティングを行ってください。
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よくある質問
マーケティングのアイデアを活用するメリットは?
- 顧客の関心を引きつける:斬新なマーケティングのアイデアは、顧客の関心を引きつけ、商品やサービスに対する好奇心を刺激します。
- ブランド認知度の向上:ブランドの存在をより広く知らしめ、顧客の心に印象を残します。
- 顧客エンゲージメントの強化:UGCは、顧客がブランドと積極的に関わる機会を提供し、エンゲージメントを高めます。
- 競合他社との差別化:競合他社との差別化を図り、市場での独自の地位を確立します。
- 販売促進:友達紹介プログラムやSNSキャンペーンなどによって新規顧客を獲得し、既存顧客のリピート購入を促すことで売り上げを伸ばします。
マーケティングアイデアが得られるメディアは?
- Shopifyブログ
- MarkeZine(マーケジン)
- AdverTimes(アドタイ)など
日本企業のマーケティング事例は?
日本企業のマーケティング事例には、プレゼントキャンペーンを定期的に行う伊藤園、UGCを積極的に活用するASBee、開封体験を工夫してシェアするBokksuなどがあります。
動画をマーケティングに活用している事例は?
動画をマーケティングに活用している事例には、ショート動画で商品の使い方を説明するdejavu、面白いダンス動画を投稿して認知度を高めているスーパーマーケット・ファインズたけだ伊万里店、自社商品を使ったレシピ動画を公開しているキューピーなどがあります。
文:Ryutaro Yamauchi