ドロップシッピングは、初心者に優しいビジネスモデルです。販売者の作業負担が少なく、低リスクで開始できるため、ドロップシッピングを利用したマルチチャネル販売で成功を収めている事業者も多くいます。
Etsy(エッツィー)とは、ハンドメイド販売サイトのひとつで、珍しい商品や一点もののオリジナル商品を多く取り扱っています。そのため、ドロップシッピングを始める際、Etsyを追加の販売チャネルの候補として検討している事業者も多いでしょう。
しかし、Etsyはハンドメイド作家やクリエーターにとって適した場所ですが、ドロップシッピングや転売に関しては多くの制約があり、ビジネスを行う際には注意が必要です。
そこでこの記事では、Etsyでドロップシッピングを行う方法や注意点を解説します。
ドロップシッピングとは

ドロップシッピングとは、販売事業者が在庫を持たないビジネスモデルで、オンラインストアで注文が入った商品は、サプライヤーやメーカーから顧客に直接発送されます。販売者は在庫を抱えるリスクがなく、在庫管理や配送の手間もないため、マーケティングや顧客サービスに集中できるようになります。
Etsyとは

Etsyは、ハンドメイド商品を中心に扱うオンラインマーケットプレイスで、ハンドメイド作品、ビンテージ、アート作品、クラフト用品など一点ものが多く販売されています。アメリカを中心に世界中に約800万人のクリエイターと9,000万人のアクティブバイヤーがいます。
Etsyを利用したドロップシッピングの仕組み

Etsyの規約では、いくつかの例外を除いてドロップシッピングや転売は規制されていますが、Etsyの利用規約に準拠しながらドロップシッピングや転売を行う方法が2つあります。どちらも厳密にはドロップシッピングではありませんが、Etsyを利用した物販においてはドロップシッピングに近い方法です。それぞれの仕組みを解説します。
1. 販売者がデザインし外注した商品を販売する方法
ひとつ目は、オンデマンド印刷などの委託生産を利用した方法です。販売者がデザインした商品の製造を外部のアパレルメーカーやプリントオンデマンド業者に依頼し、顧客から注文を受けたら生産し発送してもらうことで、在庫を抱えないドロップシッピングが可能です。
ただし、既製品の販売はEtsyのポリシー違反となるため、必ず販売者のオリジナルデザイン(もしくは顧客の要望を反映したカスタムデザイン)である必要があります。また、外部の委託生産パートナーに依頼する場合には、購入者に生産パートナーに関する情報を開示しなければなりません。また、パートナーはEtsyショップのメンバーや、販売者が商品を調達する既製品のサプライヤーであってはなりません。
2. Etsyから仕入れた商品を自社ECサイトで販売する方法
Etsyから購入した商品を、自社ECサイトで販売する方法もあります。自分のECサイトで販売することで、プラットフォームのルールに縛られず自分の裁量で販売でき、利益も得やすくなります。ただし、Etsyの顧客基盤がないため、マーケティングや集客を自分で行う必要があります。なお、Etsyで仕入れた商品を自分のEtsyショップで再販することはできません。
Etsyでのドロップシッピング時の注意点
Etsyはドロップシッピングや転売を推奨していませんが、創意工夫や商品アイデアによっては、ドロップシッピングに類似したビジネスは可能です。Etsyで出品する場合には、以下のような点に注意してください。
- 販売可能なアイテムは、ハンドメイド、ビンテージ、またはクラフト用品のみ
- ハンドメイド作品や委託生産品は、販売者が作成もしくはデザインした商品に限る
- 転売不可(クラフト素材・パーティ用品・ビンテージ・ギフトバスケットを除く)
- ビンテージアイテムは20年以上前のものに限る
- 大量生産商品の販売不可
- 掲載品はデジタル商品も含め直接販売するものに限る(紹介コードや広告は不可)
- AliExpressのドロップシッピング不可
- 販売が禁止されている商品がある
Etsyでのドロップシッピングの利点

競合の少なさ
Etsyのプラットフォームは制限が厳しいため、ドロップシッピングビジネスは少数です。しかし、制限は厳しいものの完全に禁止されているわけではないため、Etsyのルールに従ったビジネスが成功すれば、あまり競争相手がいない状態で、優位にビジネスを展開できる可能性があります。
ニッチな商品の推奨
Etsyの販売ポリシーに準拠したニッチな商品やビジネスアイデアがある場合には、利点が大きくなります。Etsyはニッチな商品を歓迎しており、ユーザーがユニークな商品を簡単に見つけられるようにしているため、売り上げにつながりやすくなります。
ビンテージやアイデア商品は転売可
Etsyは、ビンテージ商品やクラフト用品、ギフトセットなどの転売を許可しています。ギフトセットとは、販売者がテーマに沿ってセレクトしラッピングしたものです。これらの商品は顧客セグメントがはっきりしているため、マーケティングや販売戦略が立てやすいでしょう。
高価格での販売
Etsyを利用する人々は、大量生産商品ではなく限定物のアイテムを探していることが多いため、良い商品や珍しい商品であれば、高い価格を支払うことを厭わない傾向があります。ユニークなビンテージやハンドメイドアイテムであれば、高単価で販売できる可能性があります。
Etsyでのドロップシッピングの欠点

高い手数料
Etsyでのドロップシッピングは高額になる可能性があります。販売者は、アイテムごとに0.20ドルの出品料と、表示価格の6.5%の取引手数料、さらに送料やギフトラッピングの費用を支払う必要があります。
ドロップシッピングに消極的
Etsyは、ドロップシッピングをあまり歓迎していません。そのため、販売者がドロップシッピングを行うための特別な機能やツールはなく、今後もそのような機能が導入される可能性は低いでしょう。
卸売りオプションがない
Etsyは、販売者が製品開発や製造に直接関与することを奨励しており、ドロップシッピングに便利だった卸売りプログラムを廃止しています。そのため、卸売業者を一から探さなければならないなど、よりドロップシッピングが行いづらくなっています。
出品に手間がかかる
商品をEtsyに登録するのはあまり簡単ではありません。CSVなどによる一括アップロード機能がないため、商品を手動で登録する必要があります。また、出品してから検索結果に表示されるまでに時間がかかるという声もあります。
ビジネスの拡大の難しさ
Etsyの商品は、ハンドメイドという性質上、大量生産されることはほとんどありません。多くのアイテムは一点一点丁寧にデザイン、製作されているため、大量生産する製造業者と同じ速度で製品を製造するのは難しいでしょう。特にビンテージやアンティーク製品は在庫が有限で、ビジネスの成長や売り上げ拡大が難しいです。
Etsyを利用したドロップシッピングのやり方

前述の通り、Etsyを利用したドロップシッピングに近いビジネスモデルは以下の2つです。
- オリジナルデザイン商品の製造を外注し、Etsyで販売
- Etsyから商品を仕入れ、自社ECサイトで販売
このうち、日本でも比較的挑戦しやすい1の方法について、やり方を解説します。
オリジナルデザイン商品のドロップシッピングをEtsyで行う場合は、Printful(プリントフル)やGelato(ジェラート)のようなEtsyと連携できるオンデマンドプリントサービスのドロップシッピングを利用するのが便利です。一般的に以下のような方法でドロップシッピングが行えます。
- Etsyとドロップシッピングサービスを連携させる
- デザインした商品を登録する
- Etsyで販売を開始する
Etsyと連携させて商品を登録するだけでドロップシッピングが行えるだけでなく、顧客独自のカスタマイズができる機能がついていたり、プリント製品にChampion(チャンピオン)のようなブランド製品を選ぶことができたりするなど、プリントオンデマンドサービスによって多様な機能が提供されています。
Etsyとマーケットプレイスを使ったドロップシッピング
Etsyとマーケットプレイスを利用したドロップシッピングは可能なのか、可能な場合のやり方も解説します。
AliExpressからEtsyへのドロップシッピング
AliExpressの商品は通常、工場や製造施設で大量生産されているため、AliExpressの商品をドロップシッピングによりEtsyで販売することは禁止されています。
EtsyからeBayへのドロップシッピング
EtsyからeBayへのドロップシッピングは技術的には可能です。Etsyの販売者から商品を調達し、自分のeBayアカウントで販売することでドロップシッピングできます。
AmazonからEtsyへのドロップシッピング
AliExpressと同様に、Amazonの商品は通常大量生産されているため、AmazonからEtsyへのドロップシッピングを行うことはできません。
Etsyでのドロップシッピングの代替手段
ドロップシッピングを行う一番の方法は、Etsyの代りとなるサービスを探し、最終的には自分のオンラインストアを開設することです。自分のECサイトを持つメリットには以下のようなものがあります。
まとめ
Etsyはドロップシッピングビジネスにあまり肯定的ではなく、多くの制約があります。しかし、オリジナルデザイン商品をドロップシッピング業者に外注することで、Etsyでドロップシッピングを行うことは可能です。
また、Shopifyのようなプラットフォームで独自のオンラインストアを開設すれば、アイデアによってはEtsyを使ってドロップシッピングを行ったり、ドロップシッピングの選択肢を増やしたりできます。もしEtsyでのドロップシッピングが難しい場合には、Shopifyを利用して他の選択肢を追求しましょう。
よくある質問
Etsyはドロップシッピングを許可していますか?
Etsyは、一部の限定的な商品を除いてドロップシッピングを許可していません。ただし、カスタムデザインの外注やEtsyの商品を独自ECサイトで販売するなど、ドロップシッピングに類似したビジネスを行うことは可能です。
Etsyでのドロップシッピングで利益を得られますか?
Etsyのポリシーに準拠した形でのドロップシッピングであれば、高い収益が見込めます。Etsyには大規模な顧客基盤があり、ユーザーはユニークな商品を求めているため、売り上げにつながりやすくなっています。
Etsyでのドロップシッピングはどのように機能しますか?
Etsyでのドロップシッピングは、販売者のEtsyショップとサプライヤーを接続し、サプライヤーが直接消費者に商品を発送することで機能します。Etsyでは、自分でデザインしたオリジナル商品の生産をプリントオンデマンドサービスなどに外注することで、ドロップシッピングに近い形でのビジネスができます。
文:Shigemi Saki