ビジネスにおいて会社名は、企業やブランドの第一印象を決めるものの一つです。企業の顔としての役割も果たすだけでなく、ビジネスが成功するかどうかの鍵となる場合もあるため、よく考えて決める必要があります。
この記事では、会社名の決め方の基本的なルールやそのポイントをご紹介します。ネーミングに役立つサイトや、面白い会社名の例も取り上げます。これから起業予定の方はぜひ参考にしてください。
会社名を決める時のルール

1. 商号で許可されている文字や記号のみを使用する
商号(会社の正式名称)は、使用できる文字と記号が限られており、その範囲内で表記する必要があります。文字では、ひらがな、カタカナ、漢字の他に、ローマ字の大文字および小文字、アラビア数字(0、1、2など)が使用できます。ローマ数字(Ⅰ、Ⅱなど)や、感嘆詞(!、?)は使用できません。また、使用できる記号は次のとおりです。
- &(アンパサンド)
- ’(アポストロフィー)
- ,(コンマ)
- -(ハイフン)
- .(ピリオド)
- ・(中点)
これらの記号は、文字を区切る場合にのみ使用することができます。英数字に限らずひらがなやカタカナ、漢字を区切る際にも使えます。商号の先頭や末尾では使用できません。ただし、ピリオドに関しては、省略を表す場合に商号の末尾で用いることが可能です。また、会社名を複数のローマ字の単語で表記する場合に限り、区切りとして空白(スペース)を入れることができます。
2. 会社形態を入れる
会社名には、会社の形態を明記する必要があります。現在、日本で新設できる会社形態は、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つがあり、会社名の最初または最後にこれらの名称をつけます。例えば株式会社の場合は、「株式会社○○」または「○○株式会社」となります。株式会社は、英語で「K.K.」や「Co.,Inc」、「Co.,Ltd」と表記されることがありますが、商号を登記する際には日本語名称である「株式会社」を使用しなければなりません。また、個別の名前の部分にたとえば「合同会社」や「合資会社」といった言葉を使う、つまり「株式会社合同会社」のような表記をしてしまうと、会社形態を指すのはどの部分なのかわからなくなるため、こうした表記方法は避けましょう。
また、英語表記においては会社名の最後に会社形態をつけるケースが多いため、外資系企業は「個別の名前 + 会社形態」の語順を選ぶ傾向にあります。そのため、海外進出を視野に入れている場合は、会社形態を最後に入れると良いでしょう。
3. 他社と似た会社名は避ける
他社と似た会社名にするのは、避けるのが無難です。意図的でなかったとしても、他の会社であると誤認される可能性のある商号をつけることで、不正に顧客を確保するための行為であると判断され、商号使用の差し止めや損害賠償請求をされるリスクが発生します。これらのトラブルを避けるためにも、会社名を絞り込んだら、登記情報提供サービスや国税庁法人番号公表サイト、登記・供託オンライン申請システム登記ねっと供託ねっとを活用して、既存の会社名を検索することをおすすめします。
また、既存の会社名だけでなく、他社のサービス名や製品名と似た名称も、会社名として選ばないようにするのが賢明です。このような名称を使用すると、商標権の侵害と見なされる可能性があります。これを避けるため、特許情報プラットフォームでも検索すると良いでしょう。
なお、商業登記法第27条により、同じ住所で同じ商号を登記することは禁止されています。特に、バーチャルオフィスやシェアオフィスの住所を利用して会社を設立する場合には、同一商号の有無を事前に必ず確認するようにしましょう。
4. 公序良俗に反するような会社名にしない
反社会勢力との関連を思わせる名称やわいせつな単語、差別用語、犯罪に関する名称など、公序良俗に反する会社名は登記できません。公序良俗に反するかどうかの判断は、登記官が個別に行います。会社のイメージにも関わるため、誰が見ても公序良俗に反しないような会社名をつけるようにしましょう。
5. 使用制限がある単語に注意する
会社名として使用できない単語があることにも注意しましょう。支店や支社、部門、事業部、営業所、代理店といった会社の一部を表す単語は使えません。また、銀行や保険、信託、証券、信用金庫、学校などの名称は、その事業を行っている企業しか使用することができません。
会社名の決め方のポイント6つ

1. 独自性のあるものにする
会社名は自社ならでは特徴を反映させたり、競合他社とは一線を画す印象的な表現を取り入れたりして、ユニークで独自性のあるものにしましょう。会社名を独自性のあるものにすることで、競合他社との差別化を図れるようになり、人々に覚えてもらいやすくなるため、マーケティングやブランディングに有利になります。
2. 意味のあるものにする
会社名に事業内容やビジョン、理念、由来などを入れて、意味を持たせましょう。意味が入っている会社名は、顧客や取引先に覚えてもらいやすいというメリットがあり、初めて会った相手との会話のきっかけとなることもあります。また、会社名の持つ意味が、会社そのもののブランドイメージにもつながります。
3. 覚えやすいものにする
会社名は覚えやすいシンプルで短いものにすることで、顧客や取引先の記憶に残りやすくなり、SNSでの認知度が上がりやすくなります。こうした会社名は、ロゴや印刷物に使いやすく、親しみを持ってもらいやすくなるというメリットがあります。さらに、会社名の書きやすさや発音のしやすさにも気を付けると、口コミや紹介での拡散も期待できるため、なお良いでしょう。
4. ドメイン名として取得できるものにする
会社のウェブサイトを立ち上げる際にはURLの一部となるドメイン名を取得する必要がありますが、会社名とドメイン名の表記は揃えることが望ましいため、ドメイン名として取得できる会社名を選択するようにしましょう。これは、会社ウェブサイトやインターネットから集客を行う予定がある場合は特に重要です。「companyname.com」や「companyname.jp」のような形で、会社名がドメイン名に含められるかを確認しておきましょう。会社名がドメイン名に入っていれば、安心してウェブサイトを訪問してもらいやすくなります。会社名と同じドメインが既に使用されている場合、会社名に業種やサービス、地名などを入れるなどの工夫をすると良いでしょう。希望のドメイン名が使えるかどうかは、ドメイン名検索を行うことで確認できます。
5. SNSのユーザー名として使用できるものにする
SNSのユーザー名(X(エックス)やInstargram(インスタグラム)であれば@マークの後に続く文字列)で使用できる名前であるかも重要なポイントです。SNSマーケティングを行う際に複数のプラットフォームを活用することを考えているのであれば、どのプラットフォームでもユーザー名として選択できる会社名をできる限り使用すると良いでしょう。
6. 海外でも使えるものにする
将来的に越境ECを行ったり、世界進出を目指したりする場合には、会社名を海外でも使用できるものにすることが大切です。候補の会社名が、海外では有名な企業と同じものだった場合や、外国語で表記するとネガティブな意味になる場合には、再検討する必要があるでしょう。
海外でも使えるかどうかを調べるには、下でご紹介する「ネーミング辞典」などを活用して調査したり、外国語が分かる人にアドバイスを受けたりすると良いでしょう。会社名が営業活動の足かせとならないよう、適切なリサーチを行った上で、外国語でも使いやすい名前を選びましょう。
会社名を決めるのに役立つサイト3選

1. AIビジネス名ジェネレーター
Shopify(ショッピファイ)のAIビジネス名ジェネレーターでは、最大120文字でビジネスの特徴や業界、ブランドについて入力し検索すると、すばやく会社名の候補を表示できます。シンプルで創造性のある会社名が生成されるため、覚えやすい会社名を付けたい方に適しています。業界名のリストが表示されている「クイック検索」を使ってすばやく会社名を生成することも可能です。
2. ネーミング辞典
ネーミング辞典は、日本語のさまざまな単語が、各言語でどのように表現されるかを調べられるサイトです。海外進出を目指している場合に特に役立ちます。任意の単語を入力したり、「人気のカテゴリー」から気になる単語を選択したりすることで、単語の英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語での表現を表示できます。ページ下部にある「スペイン語・ラテン語・ギリシャ語・ロシア語を見る」や、「中国語・韓国語・オランダ語・アラビア語を見る」ボタンをクリックすれば、これらの言語での表現も確認できます。
3. ChatGPT
生成AIのChatGPTを使えば、業界やサービスに合った会社名の候補を瞬時に生成できます。プロンプト(質問や指示)を入力することで会社名を生成できます。具体的には、以下のようなプロンプトを使うことで会社名の候補を生成できます。
- ペット用品専門のECサイトを運営する会社名を10個考えてください。
- 化粧品のサブスクサービスを展開する会社名を、ユニークかつ親しみやすいものにして5個提案してください。
- 越境ECサイトの会社名で、英語で発音しやすいものを10個考えてください。
- Tシャツ販売の会社名を、それぞれ8文字以内で20個考えてください。
- フランス語で響きが良く、発音しやすいシンプルな会社名を考えてください。
プロンプトには、会社名に反映させたい理念や印象、業界など、重要と思われる情報を盛り込みます。提案された会社名が気に入らない場合に新たな候補の提示をお願いしたり、追加の条件を後から足したりといったことも可能ですので、何度もやり取りしながら会社名を決めていきたい方に最適です。
面白い会社名やいい会社名の例

会社名を決めるにあたって、参考になる面白い会社名やいい会社名の例をご紹介します。
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Amazon(アマゾン):Amazonは、世界最大の川の名前を使うことで、将来的に世界的な大企業へ成長することへの可能性や野心を表現しました。会社名を使ったロゴではAからZへ伸びる矢印を使い、幅広い品目を扱っていることを顧客に効果的に伝えています。
Amazonでは当初、魔法の呪文のような響きの「Cadabra」(カダブラ)という名前を採用していましたが、Cadaver(「死体」の意)と聞き間違えられたことをきっかけに会社名が再考されました。 - Slack(スラック):ビジネスチャットツールを提供するSlackは、Searchable Log of All Conversation and Knowledge(すべての会話や知識を検索できる記録)の頭文字を使った会社名です。コミュニケーションの円滑化に役立つチャットツールであることを伝えるだけでなく、Slack(ゆるみ)という単語との言葉遊びも用いています。短くて発音しやすく、覚えやすい会社名です。
- アスクル:中小企業向けのオフィス用品通信販売を行うアスクルは、注文翌日に配達するサービスを特徴としており、「明日来る」という言葉を会社名に採用しています。独自性があるだけでなく、意味を持つ言葉を使用したことからインパクトも強く、覚えやすい名前となっています。
- ENEOS(エネオス):石油製品の精製や販売を行うENEOSは、ENERGY(エネルギー)とNEOS(ネオス、ギリシャ語で「新しい」の意)を組み合わせた造語を採用しています。さまざまなエネルギー資源を顧客に届けたいという思いが込められています。
- 高齢社:60歳以上の高齢者を対象とした人材派遣会社の高齢社は、一度聞いたら忘れられない会社名の好例です。「高齢者」という単語に会社を意味する「社」を付けた遊び心もあり、聞いた人の印象に強く残ります。
- キオクシア:フラッシュメモリやSSDなどの開発・製造・販売を行うキオクシアは、日本語の「記憶」という言葉とギリシャ語で「価値」という意味を持つAXIAを組み合わせた造語を会社名に採用しています。データを記憶という馴染みある単語に置き換え、全体をカタカナ表記にすることで親しみやすい響きを実現しています。「記憶で世界をおもしろくする」という会社のミッションとも調和した名前です。
まとめ
起業するために必要となる会社名ですが、決める時には遵守すべきルールが定められています。会社名を商号として登記する際には、許可されている文字や記号を使いましょう。また、他社と似た会社名を避ける、公序良俗に反する言葉は使わない、使用制限がある単語を使用しないといったことも重要です。
会社名は、独自性を持たせることで、マーケティングやブランディングにおいて有利になります。意味のあるものや、覚えやすいものにすることで、顧客や取引先の記憶に残りやすくなります。会社名を決める際には、ドメイン名として取得ができるか、SNSのユーザー名として使用できるかの確認も忘れずに行います。海外進出を検討している場合には、海外でも使えるかの確認もすると安心です。
会社名を決めるのに役立つサイトや面白い会社名、いい会社名の例を参考にしながら、自社ビジネスにぴったりの会社名を見つけましょう。
会社名の決め方に関するよくある質問
会社名を決める時のルールは?
- 商号で許可されている文字や記号のみを使用する
- 会社形態を入れる
- 他社と似た会社名は避ける
- 公序良俗に反するような会社名にしない
- 使用制限がある単語に注意する
会社名が決まらない時はどうする?
会社名が決まらない場合、社内公募を行う、プロに依頼する、クラウドソーシングサービスで募集をかける、友人・知人・家族などに相談して決めるといった方法があります。ただし、事業内容やビジョンとかけ離れた会社名にならないよう、事前に守るべきルールやビジョン、思いなどを共有しておくことが大切です。
会社名を決めるのに役立つサイトは?
- 無料AIビジネス名ジェネレーター
- ネーミング辞典
- ChatGPT