リテールは、日本語で「小売」と呼ばれるビジネスモデルを指す言葉ですが、業界によってその定義や使い方が少しずつ異なります。
この記事では、リテールの意味と、金融・不動産・アパレルなど各業界における言葉の定義を解説します。
リテールとは

リテールとは、英語の「Retail」が語源であり、生産者や卸売り業者から商品を仕入れて、一般の個人や小規模事業者など最終的な消費者に対して商品を販売するB2Cビジネスのことを指します。日本語で「小売」とも呼ばれています。業界によって使われ方が少しずつ異なりますが、一般的に個人や中小企業を対象とする小口取引という意味で幅広く使われています。
また、他の語と組み合わせて「リテール〇〇」という用語でもよく使用されます。たとえば、次のような用語があります。
- リテール営業(リテールセールス):個人の消費者や小規模事業者などに対する営業活動
- リテールサポート:小売店の売り上げを伸ばすための支援活動
- リテールストア:一般消費者に商品を提供する店舗。代表的なものとしては、デパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、家電量販店などが挙げられ、フランチャイズ方式で店舗展開している企業も多い
リテールの対義語は
リテールの対義語は、ホールセールです。英語の「Wholesale」に由来しており、大企業や小売業者、行政機関などを対象に、大量の商品を販売するB2Bビジネスのことを指します。日本語で「卸売」とも呼ばれています。
ホールセールは、流通過程の最終段階を担うリテールとは異なり、中間段階で商品の供給や流通を効率化する役割を担っているのが特徴です。
業界ごとのリテールの定義
リテールという言葉は、対個人や小規模事業者向けのビジネスを指しますが、使われる業界や文脈によって、定義に差があります。ここでは、代表的な業界における「リテール」の使われ方を紹介します。
金融業界におけるリテールとは
金融業界では、個人や個人事業主、中小企業向けのサービスをリテールと呼びます。たとえば各金融機関では、次のサービスがリテールに分類されます。
- 銀行:普通預金、定期預金、住宅ローン、教育ローン、マイカーローン、相続業務など
- 信託銀行:教育資金贈与信託、結婚や子育て支援信託など
- 保険会社:生命保険・医療保険・自動車保険などの個人向け保険商品の販売、ライフプランの提案など
- 証券会社:個人投資家向けの株式、債券、投資信託などの販売など
不動産業界におけるリテールとは
不動産業界のリテールには、個人向けの土地や住宅の販売・仲介、不動産コンサルティングなどが挙げられます。顧客の要望に応じた物件情報の提供や、契約手続きのサポートもリテールに含まれます。
他の業界と比べると扱う商材の金額が高額なため、取引の規模が大きくなる傾向にあります。
アパレル業界におけるリテールとは
アパレル業界では、店頭販売に関わる業務を総称してリテールと呼ぶのが一般的です。具体的には、接客、在庫管理、売上の分析、スタッフ教育、新商品の発売日の調整、イベントやフェアの企画、ディスプレイの検討など、店頭販売に関わるあらゆる業務がリテールに含まれます。
また、実店舗だけでなく、自社のECサイトやECモールなどの販売チャネルでの業務も、リテールに分類されます。
まとめ
リテールとは、個人や小規模事業者など最終消費者を対象とした小売業を意味する言葉ですが、業界によって使われ方が少しずつ異なります。リテール営業やリテールストア、リテールセールスといった関連用語も多く存在し、金融・不動産・アパレルなど、さまざまな分野において、幅広い意味で使用されています。
最近ではオンライン販売もリテールの一部とされており、オムニチャネル戦略やマルチチャネル戦略といった、ECサイトを含むリテール戦略がますます注目されています。リテールの意味や定義を正しく理解し、業界の動きや企業のビジネスモデルを正しく読み解けるようにしておきましょう。
よくある質問
リテールって何?
リテールとは、生産者や卸売り業者から商品を仕入れて、最終消費者に対して商品を販売するB2Cビジネスのことです。日本語の「小売」を意味する言葉として使用されています。
リテール営業とは?
リテール営業(リテールセールス)とは、個人の消費者や小規模事業者などに対する営業活動のことです。法人を対象とした営業と異なり、B2Cの関係構築が重要となるため、顧客対応力や商品提案力が求められます。
リテールストアとは?
リテールストアとは、一般消費者に商品を提供する店舗を指します。代表的なものとしては、デパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、家電量販店などが挙げられ、フランチャイズ方式で店舗展開している企業も多くあります。
Amazonのリテールとは?
Amazonのリテールとは、Amazonが自社在庫を持ち、販売・出荷を行うAmazon直販モデルのことを指します。Amazon自身が商品を仕入れ、リテール企業として機能します。
事業者がAmazonで商品を販売したい場合、Amazonと契約を結び商品の供給は出品者が担い、販売はAmazonが担うリテール形式での販売と、事業者自身が出品者(セラー)となって販売する方法があります。
リテールとホールセールの違いは?
リテールは消費者向けの小口販売(B2C)、ホールセールは企業向けの大量販売(B2B)を指します。リテールが流通の最終段階を担うのに対し、ホールセールは流通の中間段階を担います。
食品の流通を例に挙げると、生産者や製造業者から商品を仕入れて、スーパーマーケットなどに卸すのがホールセールであり、それを消費者に売るスーパーマーケットなどがリテールです。
文:Taeko Adachi