ECサイトの管理者にとって、コンバージョン率はサイトの成果を評価するうえで欠かせない指標です。コンバージョン率の概要を理解することは難しくないですが、コンバージョン率を実際に改善するのは容易ではありません。
この記事では、コンバージョン率の計算方法や平均値、改善方法などを解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
コンバージョン率とは?

コンバージョン率とは、「サイトを運営するうえで設定された成果(目的)」が達成された割合を示す指標です。コンバージョン(conversion)という単語は日本語で「変換」と訳すことができ、たとえばウェブサイトへの訪問者が顧客(購入者)になるといったケースを指しています。
経営戦略やマーケティング施策の効果を計るうえで非常に重要な指標と言われており、下記の計算式で算出できます。
コンバージョン率(%)= コンバージョン数(CV数) ÷ ウェブサイトへの訪問総数(セッション数)・クリック数
たとえばコンバージョンアクションがメルマガの登録で、サイト訪問数1,000件に対して登録したユーザーが80名だった場合、コンバージョン率は80 ÷ 1,000 = 8%になります。
ECサイトのコンバージョン率
ECサイトの場合のコンバージョンは、ユーザーの商品購入になります。そのため、ECサイトのコンバージョン率の計算式は下記のとおりです。
ECサイトのコンバージョン率 = 商品購入数(注文数) ÷ ウェブサイトへの訪問数
ECサイトで月間の商品購入数が50件、月間の訪問数が1,000件あった場合、コンバージョン率は50 ÷ 1,000 = 0.05、すなわち5%です。
コンバージョン率はマーケティングツールで確認することができます。ツールによっては購入率・成約率といった呼ばれ方をすることもありますが、基本的にはいずれも同義です。


Shopify(ショッピファイ)ストアには、分析とレポート機能が組み込まれており、最適な意思決定をサポートします。集客レポート・行動レポートをはじめ、60以上の構築済みのダッシュボードやレポートが搭載されているほか、独自にカスタマイズした分析結果を得ることもできます。
平均的なECサイトのコンバージョン率

平均的なECサイトのコンバージョン率は、1%〜3%の間と言われています。一方で、この数値が必ずしも理想的な数値とは限りません。コンバージョン率を最適化すべく継続的に戦略を講じることが重要です。
Shopifyの分析アプリLittleDataで、Shopifyストアのコンバージョン率に関する調査を行った結果、Shopifyストアの平均コンバージョン率は1.4%であることが分かりました。3.2%を超えている場合は全Shopifyストアの上位20%に入り、非常に良いコンバージョン率であることを示します。また、4.7%であれば、上位10%に入ります。
ECサイトのコンバージョン率のよくある誤解

ECサイトのコンバージョン率を定義するうえでよくある間違いがいくつかあるため、ここで解説します。
ユーザー数ではなくセッション(訪問)数
多くの分析ツールではウェブサイトを訪問した機会を「セッション」と呼び、訪問した個人(またはそのデバイス)を「ユーザー」と呼びます。そして、ECサイトのコンバージョン率はユーザー数ではなく、期間内の注文数とセッション数を使用して計算します。
例えば、あるユーザーが日曜日にウェブサイトを訪れ、月曜日に再訪した場合、ユーザー1名が2回のセッションを持ったことになります。その際にユーザー数をもとにECコンバージョン率を算出すると、セッション数をもとに掲載した場合と比べてコンバージョン率が上昇してしまいます。
一方で、価格帯の高い商品を扱うECサイトではほとんどのユーザーが商品の購入までに複数回のセッションをしている傾向があります。そのためマーケターの中には商材によってはコンバージョン率算定の際にユーザー数の使用を提案していますが、業界の標準はセッション数であることを覚えておきましょう。
「全体のコンバージョン率」を使用すること
ECサイトの最終的なコンバージョンは、「商品購入」です。一方で「ウェブサイト全体のコンバージョン率」では、商品購入だけでなく、ニュースレターの購読や先行販売の申し込み、商品をカートに追加するなどのアクションもコンバージョンに含まれます。
そのためマーケティングツールで「ウェブサイト全体のコンバージョン率」を参照すると、注文のみをコンバージョンとした場合の数値よりも高くなります。
コンバージョン率の計算方法

ECにおけるコンバージョンは「決済の完了」のため、それに準じたコンバージョン率の計算方法を順に紹介します。
1. 訪問の総数(セッション数)を追跡する
一定期間におけるウェブサイトへの訪問の総数を確認します。Googleアナリティクスをはじめとしたマーケティングツールを使用すると、セッション数を正確に把握することができます。
2. コンバージョンの総数をモニタリングする
想定する期間内に完了した注文の総数を追跡します。この数は、Shopify管理画面の売上レポートから確認できます。
3. コンバージョン率を計算する
次の計算式を使用してコンバージョン率を計算します。
コンバージョン率 = (総コンバージョン数 ÷ セッション数) x 100
たとえば、運営するECサイトの訪問1,000件のうち購入数が20件だった場合、コンバージョン率は(20 ÷ 1,000) x 100 = 2%です。
なお分析する際には、同一の期間で数値を測定する必要があります。たとえばある月のコンバージョン率を計算する場合には、訪問数とコンバージョン数の両方が同じ1か月間の数値であることを確認しましょう。
ECサイトのコンバージョン率を出すタイミング

ECサイトの管理者の多くは、定期的にコンバージョン率の変動を分析しています。コンバージョン率を出すタイミングによって、下記のような洞察を得ることができます。
週次モニタリング
1週間程度の期間で急激な数値の変動がある場合、サイトに何か問題が起きている可能性があります。たとえば、商品が「無料」と誤って表示されていることによって、コンバージョン率が急増しているかもしれません。
月次最適化
コンバージョン率の改善方法を検討するための期間設定です。たとえば、特定の商品カテゴリやランディングページで高いコンバージョン率が出ていないか、新しい機能(レビューアプリなど)でコンバージョン率を改善できるか、A/Bテストをどのように行うべきか、といった分析を行うことができます。
四半期または年次戦略
戦略的にコンバージョン率を改善していく施策について、検討するための期間設定です。ユニークバリュープロポジション(UVP)の見直しや、ブランドそのものをゼロから考え直すリブランディング、ユーザーエクスペリエンスの再設計、期間限定のセールや新商品のリリースなどを検討していきます。
キャンペーン後の振り返り
定期的な分析以外では、大規模なマーケティングキャンペーンを実施した後もコンバージョン率を確認すべきです。サマーセールやウィンターセール、新商品のリリース、大規模なインフルエンサーとのコラボレーションなどが当てはまります。過去のキャンペーンや、基幹外の数値と比較することで、効果を詳細に分析することができます。
ECコンバージョン率のベンチマーク

必ず目指すべきコンバージョン率の一定基準があるはず、という思い込みはまちがっています。コンバージョン率を左右するのはECサイト設計の出来だけではなく、コンバージョン率が平均を超えていれば良いというわけでもありません。ECコンバージョン率のベンチマーキングを行う際に、考慮しておくべき要素を紹介します。
ECサイトへの流入経路
広告やブログ投稿から多くのユーザーが流入しているサイトは、既存の顧客やSNSフォロワーからのトラフィックに依存するサイトよりもコンバージョン率が低くなる傾向があります。だからといって、広告やブログを訪問元とする戦略自体が劣っているわけではありません。単純に、自社ブランド・製品を初めて知るユーザーが多く流入しているというだけです。
価格帯
一般的に高価な商品を扱うサイトは、安価な商品を扱うサイトと比べてコンバージョン率が低くなります。ユーザーが購入を検討する際、高い商品ほど時間をかけて検討することが多いためです。
販売形態
サブスクリプションサービスを提供するECサイトは、単発購入を想定するサイトよりも、コンバージョン率が低くなる傾向があります。一般的にサブスクリプションサービス購入の方が消費者が購入を検討する時間が長く、またサブスクリプションのECサイトはリピーターの訪問が少なくなるためです。
ECサイトのコンバージョン率を改善する方法

コンバージョン率を高めていくCRO(コンバージョン最適化)は、複雑な戦略が必要で継続的に取り組んでいくべきテーマです。ここでは、コンバージョン率を改善するためにまず試してみるべきヒントをいくつかご紹介します。
バリュープロポジションの改善
バリュープロポジション、またはユニーク・セリング・プロポジション(USP)は、コンバージョン率を高めるうえで最も重要な要素です。顧客のニーズを満たすユニークな商品やメッセージがあれば、顧客体験に多少の不満があってもサイト訪問者は商品を購入するでしょう。差別化につながる商品の強みや、顧客がなぜ商品を必要としているかを明確にしてみてください。
摩擦を減らす
摩擦とは、煩雑な決済プロセスや不明確な送料など、サイト上での購入を妨げる不必要な要素を指します。ユーザーが必要な商品を簡単に見つけられて、スムーズに購入できるような動線を整えましょう。
購入者の不安を軽減する
これは特に、立ち上げたばかりのECサイトやブランドにとって重要な要素です。ECサイトで販売される商品は、購入するまで実際に見たり触れたりはできないため、ECサイト上で不安を軽減させる必要があります。たとえば、明確な返品・保証ポリシーの記載や、購入者のレビュー、ユーザー生成コンテンツ(UGC)の共有、臨場感のあるARショッピング体験などが、その答えになるかもしれません。
カゴ落ちを減らす
カゴ落ちとは、商品をカートに追加したままで購入に至らなかったケースを指します。カゴ落ちを未然に防ぐには、商品購入〜決済完了までの簡素化や、複数の決済手段の用意、注文代金の明確化、会員登録していないユーザー(ゲスト)でも購入できる仕組みといった施策が有効です。また、カゴ落ちメールやリターゲティング広告などの戦略により、カゴ落ちが起きた場合でも顧客への商品購入を促すことができます。
モバイルデバイス向けに最適化する
スマートフォンなどからECサイトを閲覧する場合でも、見やすく使いやすいサイトにすることも有効です。サイト内の移動がわかりやすく、読み込みが速いこと、明確な行動喚起(CTA)ボタンを設けるようにしましょう。また、デバイスのサイズや解像度に応じて表示を調節するレスポンシブ対応デザインや、モバイル決済の導入も、顧客体験の向上につながります。
適切なKPIを追跡する
目標に合ったKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。特にECサイトのKPIとしては、コンバージョン率のほかに平均注文額(AOV)やカゴ落ち率、顧客生涯価値(LTV)などが指標となります。
適切にKPIを追跡することは、ECサイトの成果を把握し、戦略的な意思決定を行ううえで大いに役立ちます。
顧客のレビューを使用する
顧客レビューの紹介は、客観的な信頼感を生み出してくれます。実際の購入者によるレビューや評価は、ユーザーとの信頼を築くだけでなく、ウェブサイト訪問者に商品の価値を強調します。
ヒートマップツールを活用する
ヒートマップツールを使用して、ウェブサイト上の顧客とのやりとりを可視化しましょう。訪問者がサイト内でクリックやスクロール、閲覧する場所を確認できるため、ユーザーエクスペリエンスを改善し、より多くのコンバージョンを促進するためのサイトデザイン設計に役立ちます。
まとめ
ECサイトのコンバージョン率の測定は、期間内のセッション数と注文数から算出できるため、計算自体は簡単です。しかし、評価と分析を行っていくための適切な期間や指標を見つけ、継続的な取り組みで改善していくことは、決して簡単ではありません。今回の記事を参考に、Shopifyの分析とレポート機能なども活用しながら、コンバージョン率の改善を目指してみてください。
ECコンバージョン率に関するよくある質問
成約率とコンバージョン率は同じですか?
同じです。コンバージョン率は下記で呼ばれることもあります。
- 購入率
- 購買率
- 顧客転換率
- コンバージョンレート
- CVR(Conversion rateの略)
ECサイトのコンバージョン率はどのように計算しますか?
ECコンバージョン率は、ウェブサイトにおける総注文数を総訪問数で割ることによって計算されます。たとえば、ウェブサイトの総訪問数が500件であり、10県の注文があった場合、ECコンバージョン率は2%(訪問数500 / 注文数10 = 0.02または2%)となります。
ECサイトのコンバージョン率の平均値は?
ECサイトを運営している場合の平均ECコンバージョン率は「1%〜3%」の間と言われています。
ECサイトのコンバージョン率の平均値が高い商材はありますか?
家電製品の平均コンバージョン率が「2.9〜3.5%」で推移しているため、比較的高いといえます。また時期による売り上げの差がないため、1年を通してコンバージョン率が安定する傾向があります。
ECサイトのコンバージョン率を改善する方法は?
代表的な改善策は下記のとおりです。
- バリュープロポジションの改善
- 摩擦を減らす
- 購入者の不安を軽減する
- カゴ落ちを減らす
- モバイルデバイス向けに最適化する
- 適切なKPIを追跡する
文:Ryutaro Yamauchi