Shopify Japanは2024年11月7日(木)、コマース業界の事業者さまやShopify パートナーさまを対象とした招待制のカンファレンスイベント「Commerce Day Japan 2024」を開催しました。2024年は、「Challenge the Status Quo ~不確実な未来への挑戦~」をテーマに、変化が激しく不確実な未来に立ち向かうため、具体的なアイデアや解決策をご招待した皆さまと共有しました。その中で、事業者さま向けのプログラムとして開催された、Shopify Japanによるキーノートと、テクノロジーアップデートの講演、そして業界をリードするさまざまな事業者さまを交えての特別対談についてレポートします。
キーノート講演
2025年に向けたShopifyのビジョンと日本市場の可能性
はじめに「Shopify Keynote」として、Shopify Japan 日本営業責任者の香山 克彦が、2025年に向けたビジョンおよび注力プロダクトおよびパートナーシップについて講演を行いました。
香山は現在のShopifyについて、一言で表すと全ての顧客接点で販売することができるGlobal Commerce Operating Systemと紹介しました。また、「ShopifyのMissionである 『すべての人に、より良いコマース体験を』(Make Commerce Better For Everyone)を実現するため、まずは我々が100年以上続く会社となることを目指しています」と述べ、過去20年間にわたり、消費者の行動の変化や事業者のニーズに応じて、多様な販売チャネルを開発・統合してきたこと強調しました。
さらに、今後も100年以上続く企業を築くための「3つの信念」を説明。成長基盤として「プロダクトチームが世界で一番良いCommerce OSを作り続ける」ことが中核にあり、会社全体としてProduct主導で日々行動していると説明しました。そして近年は、どの規模のビジネスでも利用できるプラットフォームとして成長を遂げ、Gartner、IDC、Forresterなど第三者機関からもリーダー格としてエンタープライズ領域で高く評価されているとお伝えしました。
特にShopifyは日本への本格的な投資準備を開始しました。香山は、「3年前からEU圏のローカライゼーションに投資をしてきたが、今年から日本が次の投資重点国となった」と共有しました。
日本市場では、人口減少や少子高齢化、円安の影響による原料・資材調達のコスト増、そしてDX推進の遅れが指摘されています。Shopify Japanは、「不確実な未来への挑戦をエンパワメントする」という活動コンセプトのもと、すでに多くの事業者様の越境ECの本格稼働や、D2Cから実店舗へのチャネル拡大、店舗運営の自動化など、変化を恐れず未来に挑戦する企業を支援しています。
Shopifyが実現するユニファイドコマース: 日本ローカライズ戦略とは?
続いて、シニア・ビジネスディベロップメント・マネジャーの泉 貴文が日本におけるローカルビジネス戦略として、「ユニファイドコマースを日本で実現するために、Shopifyが日本でどのようなローカライゼーションを進めているか」を説明しました。
冒頭、泉は「変化の速いコマースの世界において、 ユニファイドコマースの時代に突入しています。Shopifyのワンプラットフォームであれば全てのデータが最初から統合されているOne brainのシステムです。POS、eComだけではなく、越境やSNS、B2Bなども含めて全てのデータをShopify上で統合していくことによって真の ユニファイドコマースを実現できると考えています」と強調。Shopifyが豊富なAPIを提供し、さまざまなチャンネルと連携を進めることにより、市場環境が変化しても時代の流れにあわせて自社の環境をアップデートしていくことができることをお伝えしました。
また、 ユニファイドコマースを日本で実現するために、Shopifyが日本でどのようなローカライゼーションを進めているかについて説明し、「日本におけるローカライゼーションについても、グローバルスタンダードな機能拡充に加え、日本独自の商慣習にあわせてさまざまなパートナーとエコシステムを構築してきた」と話しています。
また日本におけるローカライゼーションの注力エリアを共有。物流や販売チャネル、マーケティングなど幅広い領域で日本の商慣習に合わせたローカライズが必要なため、さまざまなパートナーと協業しながらソリューション開発を進めてきました。
泉は、販売チャネルの一例として、YouTube Shoppingの拡大、そして、ロジスティクスにおいては、ヤマト運輸さまとの協業により店頭受け取り(BOPIS)ソリューションを提供スタートしたと説明。
AI領域においては、全世界で導入している業務効率化を実現する生成AI機能「Shopify Magic」はもちろんのこと、ShopifyはAIを活用したより良い顧客体験を提供するために、AI Commerceの領域で電通デジタルさまとの協業強化を発表しました。
これらの取り組みにより、「Shopifyは柔軟なプラットフォームによるUnified Commerceを実現していく」と泉は締めくくりました。
テクノロジーアップデート講演
2024年上半期に発表された領域の新機能を紹介
引き続き行われたプログラムでは、「Shopify 最新テクノロジー」をテーマに、Shopify Japan のエンジニア3名が登壇し、Shopifyが年に2回、大規模なアップデートと新機能のセットを発表するEditionsの2024年Summer Editionsの中から、次のような選りすぐりのものをご紹介しました。
- Summer Editionsハイライト
- マーケット
- AI
- オートメーション(自動化機能)
- カスタムデータ
- チェックアウト
- B2B
- 小売
- 開発者向け
2024年Summer Editionsのハイライトとマーケット機能の刷新
まず、シニアソリューションエンジニア 林ノブから、今年度のSummer Editionsからのハイライト、そして越境販売を総合的に管理する「マーケット」機能について紹介しました。
ハイライトとして、はじめに紹介したのは「組み合わせリスティング」です。これは、Shopifyの提供するCombine Listingアプリをインストールすることで、1つの商品ページで複数商品(最大2000)をバリエーション表示させられ、バリエーションで管理することが可能になるものです。
次に、Shopifyの「標準商品分類」について、1万を超える商品カテゴリーと属性をShopifyのAIソリューション「Shopify Magic」により自動提案することができることを説明。また、GoogleやMetaなどの標準的な商品分類が求められる販売チャネルに自動連携できるほか、商品リストの絞り込みやコレクション作成にも活用することができます。
新しいストア分析ページはグラフィカルなUIを採用、直感的な分析が可能となりました。
マーケットの刷新については、国や地域ごとに、D2Cに加えてB2Bや小売も一元管理できる新しいインターフェースを、ビデオを交えてお見せしました。日本では後日公開予定です。
Commerceをより効率的に運営するShopifyのAIと自動化
続いて、「AI、自動化」の新機能についてシニアローンチエンジニア 田山貴大が説明しました。
ShopifyエキスパートのAIアシスタント「Sidekick」は、生成AIを用い、ECの業務改善や効率化など、パーソナライズされたアドバイスを提供し、ビジネスを強化させる機能です。そのほかにも、「データクエリの作成や、おすすめカテゴリーの自動提案、画像補正など、AIを使った機能がますます充実してきている」と話しました。
自動化機能については、「Shopifyは、EC担当者のマニュアル運用を自動化することに注力している」と説明。実際に自動化されているアクション数は毎月10億以上にのぼっています。
自動化機能には、ノーコードでロジックを作成し、マニュアル運用を自動化する「Shopify Flow」機能があります。Flowの活用により、これまで開発会社に依頼のうえ開発の時間とコストを要し、また最悪の場合ベンダーロックインに陥るおそれがあったものが、ノーコードで誰でもすぐにロジックを作成し、マニュアル作業が自動化し、お客様自身でのシステム拡張が可能になっていた。今回のアップデートにより、これまでコードを書かなければならなかったものの一部がマウスのクリックによりコードを書かずに対応ができるようになり、よりFlowで活用できるロジック作成の幅が広がった」と話しました。
カスタムデータとチェックアウト機能の向上
その後、シニアソリューションエンジニア中嶋ステファニーが「カスタムデータ、チェックアウト」機能について説明しました。
商品、注文、顧客情報などに追加の情報を保存するための仕組みである「カスタムデータ」のアップデートとして、日本のEC事業者さまからもリクエストの多かった、商品メタフィールドのCSVインポートおよびエクスポートに対応した ことをご紹介しました。
また、Shopifyの強みの1つである、「チェックアウト」がアップデートされ、「Checkout Blocks」というShopify公式アプリを用い、「お客さまの購入意欲が最も高いチェックアウト画面でピンポイントに施策を入れることが可能になった」ことを説明。さらに、APIにより、チェックアウト画面の配送住所欄に表示される住所の候補を独自のロジックで上書きできるようになり、「例えば頻繁に配送する地域の優先表示をしたり、特定の記号などを利用しないように促したりすることができるようになった」と話しています。
最新のB2B・小売機能・開発者向け機能の紹介
最後にシニアソリューションエンジニア 林ノブが、特筆すべきB2B、小売と開発者向け機能について説明しました。
B2B機能としては、まずB2B向けに最適化された新しい“TRADE”というテーマを説明し、「効率的なレイアウトと、数量ルールやボリューム価格設定などの一括購入機能が組み込まれている」と話し、B2B取引で重要なケースが多々ある注文時のデポジット機能などを紹介。
小売機能では、「POSを使ってどのロケーションやデバイスからでも下書き注文を作成、管理できるようになった」と説明しました。また「店舗への在庫転送」も可能になり、お客さまはECで注文した商品を在庫の有無にかかわらず最も都合の良い店舗で受け取ることができるようになりました。さらに、小売店舗での注文1件に複数の割引を適用できる機能や、小売マーケットごとのカスタム価格設定と公開商品設定を紹介しています。
開発者向け機能では、Hydrogen(Shopifyのヘッドレスストアフロントフレームワーク)向けのビジュアルエディタなどを紹介しました。
事業者さま同士による特別対談を開催
イベントでは各講演のほか、Shopifyを活用いただいている事業者さまをお迎えし、Commerceにおける戦略や、すでに進めているShopify活用法、そして今後の展望などを共有してもらいました。
「シン・アパレルの挑戦」と題したパネルディスカッションには、TSI プラットフォーム本部デジタルプラットフォーム部長の岸 武洋 氏、同社 プラットフォーム本部IT推進部部長の松井 崇 氏、yutori プロデューサーの青嶋 剣士郎 氏、同社 マーケティングプロデューサーの濱田 栞 氏が登壇し、Stack 代表取締役社長の福田 涼介 氏がモデレーターを務めました。
パネルディスカッションでは、「経営戦略は?」、「Why Shopify?」といった内容をベースに、Shopifyを活用するに至った背景や、TSI社からはShopifyに 移行後の成果や、yutori社からはShopifyを活用したこれまでの挑戦、そして両社に今後の展望などについて語ってもらいました。
Commerce Day後半には、「不確実なAI x Commerce の挑戦」と題したパネルディスカッションが行われました。対談には、サンドラッグ 執行役員の田丸 知加 氏、サントリーホールディングス サステナビリティ経営推進本部 部長の下野 晋平 氏、電通デジタル 執行役員、データ&AI部門長の山本 覚 氏を迎え、「不確実な時代といわれる中で、実感されていること?」、「ShopifyのAIについて」、「お客さま体験としてのAI活用」、「顧客理解のためのデータ活用とは?」、「今後の不確実な未来への展望」などについて議論と情報共有をしていただきました。
熱気に包まれたMilestone Award授賞式とネットワーキングイベント
Merchant Awardは過去最高数を記録
各講演や特別対談の後は、Merchant Award(Milestone Award)授賞式を開催いたしました。10万オーダー達成を記念したSilverと、100万オーダーに達した店舗さまにお渡しするGoldの2つの賞、両賞ともに前年比で受賞店舗数が大幅に増加しました。Silver Milestone Awardは770%増、Gold Milestone Awardは140%増の店舗さまに授与することができました。
Gold受賞者の内、会場にお越しいただいた、ちいかわマーケット、KAUCHE、Kuradashi、NEW ERA、ZENBなどの受賞企業のご担当者様には、授賞式にてGold Milestone Awardが贈呈されました。
イベント後は、コラボレーションの可能性などを模索するNetworking Partyが行われ、事業者さま同士で交流をしていただくなど、「Commerce Day Japan 2024」は盛況のうちに終了しました。
不確実な未来への挑戦に向けて
昨年に引き続き、リアルな大型イベントを開催させていただきました。その中で、日頃から多大な貢献をいただいているパートナーさま、そして事業者の皆さまから、Shopifyの成長や新機能についての情報をアップデートできたこと、また利用してみたいという感想をいただきました。
一方で、事業者さま同士で交流ができるネットワーキングの時間がもっと欲しいとのご意見も多く寄せられました。いただいたご意見やご要望を真摯に受け止め、今後はより充実した内容でお届けできるよう、引き続き努力してまいります。