世界でも最大規模を誇るSNSプラットフォームのFacebook(フェイスブック)は、潜在顧客発掘にも有効なツールです。一方で、Facebookを活用したSNSマーケティングを行っている企業は多く、有料広告においても競争は激化の一途をたどっています。Facebook広告を利用して、ターゲット層にリーチするには、どれくらいの費用をかけるべきでしょうか。
この記事では、企業がFacebook広告に費やす平均的な料金を紹介しています。また、費用対効果を高めるコツについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
Facebook広告の費用相場

Facebook広告の費用相場は、自社で運用する場合は一般に月額10~30万円程度です。広告費用は、プロモーションの目的や分野、競合の多さといった要素によって変化するため、あくまでも目安と考えてください。
また、運用代行企業に依頼する場合には、月額20~50万円程度を見積もっておくと良いでしょう。代理店に依頼する場合は、どのような作業を依頼するか、一部だけを依頼するのか、全体的な運用を任せるのかによっても金額が大きく変わります。広告費の20%程度を運用代行手数料として設けているケースも少なくありません。
Facebook広告の料金の仕組み

Facebook広告は、クリックや表示など、広告の実績に基づいて費用が発生します。広告主は自分の予算に合わせて金額を自由に設定できます。
広告を表示できるかどうかは、オークション形式で決まります。広告主が設定した入札価格、ユーザーがアクションを起こす可能性(推定アクション率)、そして広告の有益性(広告品質)という3つの要素に基づき判定される仕組みです。このため、季節や競合他社の動向によって、広告が表示される確率は変動します。
新聞や雑誌、テレビCMなど従来の広告は、掲載サイズや期間、場所、時間帯で料金が決まりますが、Facebook広告はそうではありません。代わりに競争原理で価格が決まるため、同一のターゲット層に向けた同じ広告でも、広告を出したタイミングの市場の状況によって広告表示に必要な料金が変わります。
実名で利用している人も多いFacebookでは、ユーザーの年齢や居住地、家族構成といったデータが収集されています。これらのデータを活用して詳細なターゲティングを行い、最適なターゲットへ広告を配信できることがFacebook広告の強みです。
Facebook広告の課金方式

Facebook広告の課金方式には、クリック課金(CPC)とインプレッション課金(CPM)という2種類の方式があります。
クリック課金方式
広告がユーザーにクリックされるごとに料金が発生する仕組みです。クリック課金方式において、クリック1回ごとの単価は「クリック単価(CPC)」と呼ばれますが、Bïrch(英語)の調査結果によると、Facebook広告における2025年4月現在の平均CPCは、0.80ドル(約115円)です。各広告におけるCPCは、時期や広告の種類、目的によって変動します。
インプレッション課金方式
広告がユーザーに1,000回表示されるごとに料金が発生する仕組みです。インプレッション課金方式において、表示1,000回ごとの単価は「インプレッション単価(CPM)と呼ばれますが、上述のBïrchの調査結果によると、Facebook広告における2025年4月現在の平均CPMは、15.02ドル(約2,160円)です。各広告におけるCPMもCPCと同様、時期や広告の種類、目的によって変動します。
Facebook広告の予算設定方法

Facebookでは、アカウントごと、キャンペーンごと、広告セットごとに予算を設定したり、掲載期間全体に対する予算を設定したりと、さまざまな方法で予算を設定できます。入札価格に対して予算を設定することも可能です。具体的には、以下の設定オプションがあります。
アカウントの上限予算
複数の広告キャンペーンをまとめて管理している場合に、アカウント全体で使用する最大金額を設定できます。個々の広告キャンペーンごとに予算を細かく設定する手間を省きたい場合に便利です。
キャンペーンの上限予算
各広告キャンペーンに対して、使用する最大金額を設定できます。複数のキャンペーンを運用している場合で、キャンペーンごとに別々の予算を設定したい場合にはこの方法が適しています。
広告セットの上限予算
表示時期や場所といった配信条件が同一の広告グループを広告セットと呼びますが、この広告セットごとに、使用する最大金額を設定できます。パフォーマンスの良い広告セットにより多くの予算を使いたい時や、新商品の広告に重点的にお金をかけたい時などに便利な方法です。
1日の予算
各キャンペーンおよび各広告セットに対して、1日あたりに使用する金額の平均額を設定できます。この金額は平均金額で、上限とは異なります。なお、1日あたりに使用する金額の上限はMetaにより自動的に設定されます。
入札価格
CPCの場合には1クリックあたりに支払う最大金額を、CPMであれば1,000インプレッションあたりに支払う最大金額を設定できます。ただし、金額を設定したからといって、必ず広告が表示されるわけではありません。Facebook広告はオークション形式なので、他の広告主との競争に勝てる価格にする必要があります。
なお、入札方法については、消化金額に基づく入札、目標に基づく入札、手動入札の3種類があります。
消化金額に基づく入札
設定した予算内で最大の効果を得ることを目指す入札方法です。たとえば「この予算で最大限のクリック数を集めたい」「与えられた予算で売り上げをできるだけ増やしたい」という場合に適しています。
目標に基づく入札
特定の目標を設定する入札方法です。たとえば「リード1件あたり1,000円以下で集めたい」「広告費の3倍の売り上げが欲しい」などの目標を設定します。ただし、設定した目標が必ず達成されるわけではありません。
手動入札
入札額を自分で直接設定する入札方法です。広告効果の予測や適切な入札額の計算ができる、広告運用に詳しい人向けの設定方法です。
Facebook広告の支払い方法

Facebook広告の料金支払い方法は、クレジットカード、デビットカード、PayPal(ペイパル)またはオンライン銀行振り込みです。なお、使用可能なクレジットカードはAmerican Express、JCB、Mastercard、Visaの4種類となっています。広告料金は、キャンペーン終了後に確定します。
Facebook広告の費用対効果を高める方法

1. キャンペーンの目的を適切に設定する
Facebook広告では、キャンペーンを立ち上げる際にその目的を設定しますが、実際の目的に沿ったものを選ぶことで、適切な相手に広告が表示されやすくなり、費用対効果が高まります。設定できる目的は以下の6つです。
- 認知度:自社商品やサービス、サイト、ブランドの存在を広く知ってもらいたい場合に選択します。
- トラフィック:ECサイトやウェブサイトに誘導したい場合に選択します。
- エンゲージメント:「いいね!」やコメント、シェアといったユーザーからの反応を狙いたい場合に選択します。
- リード:見込み客を獲得することを目指す場合に選択します。
- アプリの宣伝:アプリのインストールや継続利用を促すことを目指している場合に選択します。
- 売上:商品やサービスの販売促進を目的とする場合に選択します。
選択した目的に合わせて、最適なユーザーに広告が表示されます。たとえば「売上」を選択した場合、以前Facebookを通じてなんらかの商品を購入したことがあるFacebookユーザーに、広告が表示される可能性が高くなります。
目的が適切に設定されていない場合、広告費用が必要以上に高くなってしまう可能性があります。広告費を効率的に使うためにも、広告キャンペーンに最も適した目的を選択するようにしてください。
2. Meta広告マネージャでシミュレーションを行う
Facebook広告を作成・管理するツールである「Meta広告マネージャ」を使うと、広告の目的や予算、掲載期間などに基づいて効果をシミュレーションできます。具体的には、オーディエンスサイズ(条件に合致するFacebookユーザーの総数)、リーチ(実際に広告が表示されるユーザーの数)、設定した目的に対する効果の3つを結果としてシミュレーションできます。
Facebook広告のシミュレーションを行う手順は、実際に広告を配信する手続きに似ています。広告マネージャにアクセスし、キャンペーンを作成して、広告の目的や基本情報、予算、掲載期間、オーディエンスなどの項目を入力することでシミュレーション結果を見ることができます。
シミュレーションは何度でもできるため、設定を変更しながら試すことで、期待した効果を得られやすいキャンペーンを見つけられるでしょう。初めてFacebook広告を出稿する場合でも、見込める費用対効果の目安がわかります。シミュレーションは「公開する」を選択しなければ、何度でも無料で使えるため、広告を出す前にさまざまな設定で試してみることをおすすめします。
3. オーディエンスターゲティングを行う
広告配信の際、届ける相手の属性や行動、興味関心などを細かく指定する「オーディエンスターゲティング」を行うと、広告の費用対効果が高くなります。Meta広告マネージャで広告キャンペーンを作る際には、オーディエンス(広告を対象とする相手)の条件を設定できます。この条件を細かく指定することで、オーディエンスターゲティングが行えます。
Facebookのアルゴリズムでは、広告の表示先を決める際に、広告内容とユーザーの関連性が考慮されます。オーディエンスの数が少なく、さらに関連性が高いほど、広告オークションで勝てる可能性が高くなります。
ターゲットとするオーディエンスを絞り込む際には、自社商品の販売データや顧客調査を参考にしましょう。どんな人が広告に反応しそうかを考えることが大切です。たとえば、家庭用コーヒーメーカーを販売するオンラインビジネスを営んでいる場合を考えてみましょう。データから顧客の多くが東京在住で、通勤中にコーヒーを買う時間がないことが購入理由であると判明したとします。
この情報を考慮に入れると、ターゲットオーディエンスを次のように絞り込むことができるでしょう。
- 東京から20km圏内に住んでいる
- 「美味しいコーヒー」に興味を示している
- 年収が1,000万円以上
4. リターゲティング広告を配信する
一度Webサイトに訪問したことがあるなど、何らかの関わりを持ったユーザーのみに配信されるリターゲティング広告は、Web広告のなかでも費用対効果が高いものです。Facebook広告では、Webサイト内におけるユーザー行動を計測できるJavaScriptコード「Metaピクセル」を広告内に設置することで、こうしたユーザーを特定できるようになり、リターゲティング広告を配信できるようになります。
一例として、ブログの読者登録を促すキャンペーンを行う場合を考えてみましょう。この場合、出稿しているFacebook広告経由でブログへアクセスした人を対象としてリターゲティング広告を行うのがよいでしょう。興味を持つ可能性の高い層に集中的に広告を表示させるようにすることで、費用対効果の高い広告運営が可能となります。
リターゲティング広告は、以下のような目的で活用すると効果的です。
- カゴ落ち対策:カートに商品を追加したが購入しなかった人に向けて、商品の広告を表示する。
- Webサイト訪問者へのアプローチ:過去にWebサイトを訪問した人に向けて、その人の閲覧内容に沿ったランディングページの広告を配信する。
- 最近のWebサイト訪問者へのアプローチ:最近の訪問者に広告を表示し、ブランド認知を高める。
5. 同一人物に同じ広告が何度も表示されないよう調整する
Facebook広告が、同一人物に何度も表示されないように調整することでも費用対効果が高まります。たとえ、ブランドや商品に興味を持っているユーザーでも、同じ広告を繰り返し見せられると飽きてしまい、むしろ購入やWebサイト訪問などの行動を取らなくなってしまいます。
Facebook広告には、フリークエンシーと呼ばれる、ユーザー1人に対する広告の表示回数を表す指標があります。フリークエンシーが2または3を超えた場合、広告文や広告ビジュアル、動画を新しくしてキャンペーンを刷新しましょう。
6. 広告のA/Bテストをする
配信するFacebook広告の種類や内容、配置に関するA/Bテストを行い、オーディエンスをより惹きつけるビジュアルや配置を見つけることで、広告の費用対効果が高まります。A/Bテストとは、広告などを複数バージョン作成し、それぞれのバージョンに対するオーディエンスの反応を比較して、効果的なものを見つける手法です。
Facebook広告では、Meta広告マネージャやテストツールからA/Bテストを作成できます。A/Bテストを通じて以下の要素を試し、広告費用への影響を観察しましょう。
- 広告の種類や内容:画像、動画、カルーセルなどの広告フォーマットのうち、どれが最も効果的か、長文と短文のコンテンツはどちらが良いか、どのような画像やテキストが好まれるのかなどをテストします。
- 配置場所:一般に、通常の投稿が表示される画面である「ニュースフィード」に広告を掲載すると多くの人の目に触れる可能性が高まりますが、画面右側の広告枠やストーリーなどの他の場所でも効果があるか比較してみましょう。
7. クリック後の体験を高めるための施策を行う
広告クリック後のユーザー体験は商品の売り上げにも影響するため、遷移先のECサイトやWebサイトの環境を整えることで、Facebook広告の費用対効果が結果的に高まります。たとえば、遷移先のWebサイトを以下のようにすることが有効です。
- 広告専用のランディングページにする:広告をクリックした際、ホームページではなく、広告に関連する専用のランディングページに遷移するようにすることで、商品の訴求力を高めることができます。
- サイトスピードを改善する:ページの表示速度が2秒以上のサイトは、1秒未満のページに比べてコンバージョン率が25%低下するというデータがあります。画像最適化や不要なJavaScriptの削除を行ったり、サードパーティアプリをあまり使用しないようにしたりして、速度を向上させましょう。
- モバイルフレンドリーにする:Facebookユーザーの多くがスマホ経由でアクセスしているため、小さい画面で表示しても見やすくなるよう、デバイスに合わせて画面が最適化されるモバイルフレンドリーなWebサイトにしましょう。こうすることで、ユーザー体験が向上します。
- ワンクリック決済を導入する:決済時の手間が減ると、顧客が離脱する可能性が低くなります。クリック一つで決済が完了することで、ユーザーは簡単に商品購入を完了できるようになります。なお、ワンクリック決済の中でもShop Pay(ショップペイ)を導入すると、より効果的です。他の高速決済と比べてコンバージョン率が10%増加するというデータがあります。
まとめ
Facebook広告の費用相場は、自社で運用する場合には一般に月額10~30万円程度とされています。運用代行企業に依頼する場合は、依頼内容にもよりますが、月額20~50万円ほどが相場です。画像作成や文章作成のみの場合は安価で済む場合がありますが、全体的な運用を任せる場合には、広告費の20%程度を手数料として設けている場合もあります。
Facebook広告は、クリックや表示など、広告の実績に基づいて費用が発生します。広告主は自分で予算を設定でき、それに合わせた広告配信が行われます。広告を表示できるかどうかは、オークション形式で決まります。広告主が設定した入札価格、ユーザーがアクションを起こす可能性(推定アクション率)、そして広告の有益性(広告品質)という3つの要素に基づき判定されます。
Facebook広告の費用対効果を高めるには、適切なキャンペーンの目的の設定、Meta広告マネージャでのシミュレーション実施、ターゲットオーディエンスの絞り込みなどが効果的です。さらに、広告の配信頻度を確認したり、A/Bテストを行ったりして、オーディエンスを惹きつけるビジュアルや文章、配置を見つけると良いでしょう。どんなに広告が良かったとしても、クリック後のWebサイトが閲覧しにくいと、離脱を促してしまいます。サイトスピードの改善や、ワンクリック決済の導入など、ユーザーが快適に商品を購入できるような工夫も重要です。
Facebook広告の費用に関するよくある質問
Facebook広告に1日あたりどれくらいの費用が必要?
1日あたり約1,000円の費用を見積もることをおすすめします。ユーザーがクリックを1回行うごとに課金される方式を使ったFacebook広告の場合、最低必要となる金額は1日あたり約100円ですが、この予算では十分な費用対効果を得ることは難しいでしょう。1日あたり約1,000円を見積もるのがおすすめと言えます。
Facebookの広告オークションシステムとは?
Facebookの広告オークションシステムは、どの広告をユーザーに表示するかを決定する仕組みです。広告主が設定した入札価格、ユーザーがアクションを起こす可能性(推定アクション率)、そして広告の有益性(広告品質)という3つの要素に基づき判定されます。
Facebook広告の費用対効果を高める方法は?
- キャンペーンの目的を適切に設定する
- Meta広告マネージャでシミュレーションを行う
- オーディエンスターゲティングを行う
- リターゲティング広告を配信する
- 同一人物に同じ広告が何度も表示されないよう調整する
- 広告のA/Bテストをする
- クリック後の体験を高めるための施策を行う
文:Masumi Murakami