起業家というのは本来、独立精神の象徴であり、自分自身の道を切り開く存在であるべきだとされています。しかし実際には、有名な起業家や経営者たちと自分を比べることを求められる場面がいたる所にあります。自立と密接に結びついたこの職業において、なぜ人は他人の人生を模倣することに執着してしまうのでしょうか?
メディアがこうした軽薄な起業家向けの情報エンターテイメントを押しつけてきたせいで、比較を避けるという逆トレンドも生まれつつありますます。最近では、ツイートや引用画像などの形式で伝えられる肯定的なメッセージも、他人と自分を比較するべきではないと力強く主張するようになってきています。
これを読んで、「どちらも間違っているってこと?😱」と驚いたふりをしているあなた、そうです、実際のところどちらも正しくありません。比較には確かに感情的なリスクが伴いますが、ビジネスを構築する上で避けられない部分でもあります。実際のところ、比較は成長のための有用な手段にもなり得るのです。
喜びを奪う比較
セオドア・ルーズベルト(第26代米大統領)が「比較は喜びを奪う」と考えたことに異論はありません。ただひとつ付け加えたいのは、間違った種類の比較こそが問題の源であるということです。
不健全な比較は天秤のようなもので、野心家は自分の業績を同業者や自分のヒーローと比較します。そんなことをすると、いつまでたっても自分は2位にしかなれないように感じてしまいます。自分より優れた相手は数え切れないほど存在しますし、公の場で目にする他人の姿は良い部分だけを選りすぐったハイライトであることを忘れがちです。誰もが間違いやストレス、失敗に直面していますが、表舞台ではそんな姿を見せないのです。
常に自分には何かが足りないと感じていると、熱意やモチベーションは確実に失われてしまいます。そして、さらに悪いことに、比較は成功を奪うことにもなり得ます。あまりにも他人の成功や行動に感化されてしまうと、それが「前向きなアイデア」から他人の成功を真似する「反応的なやることリスト」に移行してしまいます。「これに取り組まなければ!業界の最大手はすでにやっているのだから!」と。そして、とても重要な会議を開いているつもりで、実はまったく時間を無駄にしていることになりかねません。
比較から遠ざかる理由は無数にありますが、私は比較を完全にやめようとは考えていません。現在の世界に存在するさまざまな特性を比較し対比することは、正しい心構えであれば学ぶための健全な方法となり得ます。
学びの源としての比較
多くの起業家は、新しい事業を始める際はすでに競争優位を考えていますし、すべての起業家にとって、自分の事業を他社と差別化するための「堀」を築くことは賢明な選択です。しかし、世の中に欠けている何かを活用しようとするなら、こう自問自答してみるべきです。「そのギャップに気づくためには、まず周囲の状況を理解し、積極的に改善していくことが必要なのでは?」
現状を把握することが、質の高いものを見極めるための最良の方法です。蓄積された経験から、何が古く、何が過剰で、何が新鮮で、何が欠けているのかを見極めることができるようになります。
最初の数件を販売したあとも、1,000件の販売を達成した後も、常に状況を把握しておくことの重要性は変わりません。技術、顧客の感情、業界のトレンドは、常に「役立つ」、「新しい」、「魅力的」という定義を変化させます。新しい製品からマーケティング戦略まで、あなたが生み出すものの大半は最終的にコピーされ、一般的なものになってしまいます。たとえ斬新なアイデアを打ち出したとしても、業界全体にコピーが蔓延したら目立つことはできません。
エネルギーの使い方にも問題があります。マーティ・ニューメイヤーが著書『The Brand Gap』で述べているように、クリエイティブな人々は「世界がどうあるべきかを描写する。彼らの考えは非常に新鮮で、時には本来の道を外れる」のです。これは自己満足的な褒め言葉ですが、このメッセージは極めて真実です。ビジネスにおいて、やるべき仕事を優先することは、本当に重要なところに創造的な厳しさを適用することでもあるのです。
時には「ベストプラクティス」こそが本当に最良の方法であり、他の起業家がすでに行っていることを学ぶことでしか知ることができない場合もあります。競争したくない分野で、無理にイノベーションを起こす必要はありません。すでに効果が実証されている方法を採り入れるだけで、優れた成果を上げることができるかもしれません。
創造する人々
ビジネスがある程度の注目を集めると、製品やマーケティングキャンペーン、さらには株価まで比較されることになります。ビジネスを始めるとき、安価で手に入るものはほとんどありませんが、比較は無料で手に入ります。
したがって、流れに逆らうのではなく、この現実を理にかなったところに当てはめてみてください。学ぶために比較し、稼ぐために比較しましょう。しかし、常に忘れてはならないのは、あなたのように創造する人々は、世の中か求めるものを提供するのに特に適しているということです。比較に惑わされてはいけません。
イラスト: コーネリア・リー